夏は、この曲であろう。25日目

構成・鎌田浩宮

エプスタインズ。
2021年7月21日で、創刊11周年。
それを記念し、連載企画を開始です。

運動会やってるテレビを消せば、鳥の声が聴こえる。
セミたちが、歌声を自慢している。
夜中でも、カエルくんたちは田んぼで合唱だ。

夏だ。
ああ、たまんない。
夏だ。
間違いなく、夏だ。

夏と言えば、あの曲。
夏に欠かせない、あの曲。

市井の人から
著名人から
北の人から
南の人から
海外の人から
「夏は、この曲であろう。」
という曲を伝えてもらう、

チョー大型連載企画ですよ。

本当の夏を、すごそう。
本当に、夏をすごそう。

25日目

文部省唱歌

文・柄澤國博

鎌田さん。こんにちは。
「夏の歌」をリクエストします。
曲は童謡の「海」です。 

右を向いても左を向いても山しかない信州で生まれ育った私が何故?と思うのかも知れませんが、やはり海へのあこがれとないものねだりは先祖は海が見える暮らしをしていたのではと思うくらいで、何より歌詞が平和を象徴しているところに魅力を感じます。

ある時、静岡県出身のN大学生が「見渡す限り山しかない」と言われ分かってはいるけどショックでした。でも、何よりも平和が一番です。平和に勝るものなし。 スミマセン良かったら採用お願いします。これからは寒さがやって来ます。ご自愛ください。

こんばんは。
信州では、冬の気配さえ。
貴女の鎌田浩宮です。

驚愕だ。
またしても、リクエストが。
しかも文末には「 これからは寒さがやって来ます。ご自愛ください。」とある。本人も、全くもって今が夏ではないことを自覚している。

これは、新手の嫌がらせなのか?
いや、柄澤さんとは何度もお会いしており、そのような方ではないことを、重々承知している。

しかし、事態は深くなっている。
選曲は掘りくり尽くされたのか、今や子供でも知っている文部省唱歌にまで至る始末。確かに、いい曲ではある。それは、理解している。一方、オリパラ開催反対を裏のテーマとして始めたこの連載であるが、今や予測できない展開に侵入している。

海は広いな 大きいな
月がのぼるし 日が沈む

海は大波 青い波
ゆれてどこまで続くやら

海にお舟を浮かばして
行ってみたいな よその国

平和と言えば、平和なのかも知れない。
いや、そうなのか?
そのようなことを、歌っておるのか?

しくじった!
止めておけばよいのに、この作詞者・林柳波(りゅうは)の事を調べ始めてしまった。1892年、群馬県沼田市生まれ。海なんてありゃしない。しかも戦時中、長野県小布施町に疎開している。しまった!柄澤さんと長野つながりだ!もちろん、海はどこにもない。

文学少年なのに、薬剤師になり、一時は 「正しい心の持ち方で身体の病気を消滅させる方法」とする「健全哲学(哲理治療法)」 にはまっている。初婚の相手が翌年亡くなり、大正三美人の1人・日向きむ子と再婚。前の旦那が狂死した翌年に林と再婚したことで、スキャンダルに。この件は、森まゆみ著「大正美人伝 林きむ子の生涯 」が詳しいらしい。

きむ子って!

その名前!

どうでもよいのに、まだ調べてしまう。
きむ子は林の9歳年上。女性解放運動に参加し、舞踊家として童謡に曲に振りをつけ、夫婦で童謡運動を開始する。もう止めてくれ。腹一杯だ。俺(鎌田)だって忙しい、本業の仕事の締切に追われている。もっとどうでもいいが、この2人の交じり合いを、ジム・オルークさん選曲によるラジオを聴きながら追っている。現代音楽やフリージャズからは、基本的に不協和音とマイナーコードしか流れてこない。林ときむ子と俺を煽る。

ああ、やはり。
ご多分に漏れず、林は軍歌「ああ我が戦友」も作詞。1937年。満州事変がテーマだ。春日の八っつあんや、ボニー・ジャックスも歌っておる。
戦時中は、黒澤明でさえ国威発揚映画を作っている。その事をとやかく言う気はない。

君の血潮は満州の 赤い夕陽に色添へて
大和心の花桜 ぱっと散ったと書こかしら

弾に当ったあの時に 天皇陛下万歳と
三度叫んだあの聲を そのまま書いて送ろうか

涙で書いたこの手紙 涙で讀んで笑うだろ 
君の母君妹御も やっぱり大和の女郎花


戦時中に疎開した小布施から、帰ってきたのは1949年。すぐに帰京しない。やや遅いのだ。その辺りから林はきむ子と疎遠になり、他の女性との間に子供を授かる。別居。離婚はせず。

いかん。
今日はやる事が一杯あったのに。
名無シーさん、この後を追っていただけませんでしょうか。
いや、他の人に追わせてはいけない。
この連載企画は、深いのか浅いのか分からん沼に侵入しておる。
その先は、ブラック・ロッジか。ホワイト・ロッジか。

全く秋なのだが、冬支度の季節なのだが、あなたの「夏は、この曲であろう。」を募集します。こちらから送信して下さい。本名の掲載はちょっと…であれば、ペンネームでもOKですぞ。

夏は、この曲であろう。



開会宣言 名無シー
1日目 Hot Fan in the Summertime 鎌田浩宮
2日目 Hello,my friend 重藤優子
3日目 白いカイト 野嶋俊男
4日目 虹 セイシロウ
5日目 Late for the Sky 長山和夫
6日目 夏が来た! 柄澤國博
7日目 いつか風になる日 大嶋悟
8日目 コズミック・サーフィン Mr.サマータイム てっちゃん
9日目 BIG UP 喜楽屋笑太
10日目 California Girls hoitoo
11日目 サマージャム’95 波よせて 梨乃
12日目 トランジスタ・ラジオ 青と夏 表参道が好き
13日目  Saudade Louca 名無シー
14日目 熱帯夜 りえだたき
15日目 NA Do Do 洪愛舜
16日目 Summer Goddess ひのみか
17日目 夏をあきらめて つつしみ深美
18日目 Mambo Sinuendo 出口信一
19日目 相馬盆唄 杉本紀男
20日目  Moe ‘Uhane (Dream Slack Key)  松麿健夫
21日目 ひき潮 柄澤國博
22日目 Where The Boys Go 小原浩靖
23日目 Till I Die 鎌田浩宮
24日目 君は天然色  エム
25日目 海 柄澤國博
26日目  Sugar Baby Love アガタシネマ

2021.09.28