平和は、この曲であろう。31日目 蒼い星くず
構成・写真/鎌田浩宮
мир / peace / سوله / 和平 / ျမ်း / تىنچلىق
ні війні / no war / جګړه نشته / 沒有戰爭 / စစ်မရှိပါ။ /ئۇرۇش يوق
戦争は、嫌だ。痛い。

31日目
蒼い星くず
加山雄三
選曲・名無シー
こんばんは。
貴女の、鎌田浩宮です。
お久しぶりなのよね。
2022年のゴールデンウィーク直前に
この連載をやめちまって
そこからまさかの復活なのよお。
貴女は、いかがお過ごしだったの?
今回は、エプスタインズ準レギュラー
名無シーの選曲でぶっちぎります。
石垣で護岸した川が合流する藩政時代には城下町だった地方都市の下町に、職業の名前の付いた職人街が幾つもあって、そんな通りに面した家々は皆間口が狭く奥行きが深かった。母方の祖母の家もそうした職人街の一つにあって、家の一番奥には、親戚である隣家と続きになった中庭があった。中庭にはナナカマドが植わっていて、小鳥好きな祖母が屋根に撒く御飯と相俟って、いつも何等か小鳥が来ていた。
しかし、そんなことより何より、その中庭で思い出すのは山葡萄の匂いが立ち籠めていた事だ。私が生まれる前に物故した祖父はマタギと付き合いがあり、自身マタギのように山に入り浸っていた人だったが、戦前からその中庭で、山で獲ってきた山葡萄を発酵させ、葡萄酒を密造していた。祖父亡き後も、祖父の教えを守って週末や退勤後、山谷に分け入り山の幸を蒐集した母の下の叔父達が季節毎に山菜やキノコのみならず山葡萄の果実も集め、葡萄酒の密造を、祖母か、上の伯父か、隣の本家の人々か、或いはその全員が受け継いでいるらしかった。密造酒自体は祖母方と本家の間の秘密の縁の下に隠されていたが、あの香わしい芳香は、秘密どころか全く隠しようもなく周囲に充満していた。
幼時、私は近くの下町の教会附属のミッション系幼稚園に通わされていたが、それは我が家が伴天連なのではなく(父母共に代々曹洞宗)、父方の伯父が二人戦死し、家督を嗣ぐために遠地の帝大の助手のポストを諦めざるを得ず、当地でやけくそで私費で「研究」を続ける父に代わり、朝から晩まで働きづめの母が、私を、自宅からは遠いが祖母方に預ける便宜だけは良いその幼稚園に無理矢理捻じ込んだ為だった。
そんな訳で幼稚園が退けると、私はそのマルゴーも斯くやと言う香わしい町人街の裏庭の縁側で午後を過ごした。小鳥がナナカマドに止まる光溢れる中庭を眺め、密造酒の香気を胸いっぱい吸い込んで昼寝する静かな一時。何故か赤ん坊のようなごろごろした声の祖母が話す鼻母音とリエゾンだらけの田舎言葉の響き。祖母が「ないぇ、ないぇ」と言って、私は「うんうん」肯いていた。今は憶えていない我々一族の教えの核心、若しくは入門篇を、密造酒の香気の如く自然に吸い込まされていたはずなのだが…… 今はその内容を憶えていない。憶えているのは祖母が架けてくれた加山雄三の「蒼い星くず」位と心許ないが、あの裏庭は思い出すにつけ、極楽というものがあるならあの中庭の一時がそうだったろうと思う安らぎがあった。
私の傍で和服で正座して語る祖母と、私の他に同じ部屋でもう一人ごろごろしているのは上の伯父。ニッカウヰスキーの角瓶をタンブラーに注いで、ちびちびやっている。私と伯父は五十歳ちょっと歳が離れていて、伯父は丁度国鉄の車両工場を定年退職し、隠居生活を満喫し始めたところだった。ウヰスキー以外の嗜みと言えば、時々、自作の尺八を小鳥たちに聴かせたりもした。
中学卒業後、国鉄の車両工場で働いた伯父は、太平洋戦争が始まると他の東北出身者同様、航行する棺桶たる輸送船団に投入された。明治維新以来続く国家の東北への冷遇は、「輸送船団は軍隊に非ず」という陸海軍全体の意味不明な精神論に結実し、輸送船団は護衛艦無しで、米軍の制海権の中に突き進んで行かされた。一方的に攻撃を受けるばかりで特攻ですらない、物資と命の放棄を強制させられたのだ。輸送船はそのまま水葬の棺桶となり、乗組員は物資諸共深海の冥府に飲まれ、それ故、物資を待つ最前線も飢餓に覆い尽くされ、ジャングルはジャングルで大きな冥府、餓鬼道になった。父方の伯父達二人は他の例に漏れずその様にして戦死したが、母方の伯父は、グラマンの空襲を受けながら申し訳程度の高射砲でまぐれ当たりながらも同機を撃墜、海に落ちた青い目のパイロットを捕虜にした。その空襲時、機銃掃射の弾の破片が伯父の腕と太股を貫通するも、運良く、破片は生命線たる動脈を外れ、九死に一生を得た。
敗戦後二年程して復員すると、国鉄の車両工場は空襲を受けて、諸々修繕しながら再出発の様相であった。建物を修繕し、必要な工具あらば治具も作り直し機械も修繕し、進駐軍が幅を利かせる町で、唯々日々の積み重ねだった。老父母に代わり、小中学生の弟妹達を養い、週に六日、二十年勤める内には、街路は徐々にマカダムからアスファルトの舗装が増えて行き、城の濠を埋め立てて道路にもし、町の外で止まっていた諸街道も、旧い町屋を潰して町の中で繫いだ。目抜き通りは拡幅せられ、両側にはモダンなビルも建って、角が丸い丹頂電話ボックスが並んだ。敗戦後二十年で、様々のことが変わったが、他の町も同様で、総天然色となった映画が、この国のそんな町々を映した。縁側で寝ているあの子の父方の伯父さん達は、自分と同じ南方の輸送船団に配属され、帰ること能わず、自分が生きて復員したことで、縁あって妹と先生が結婚、今あの子は当方の縁側で寝ている。
嘗て、手前共は古式を長きに渡って護って来た。藩政時代にもその前にも、山菜と木の実、キノコと山葡萄、川魚と獣ばかりの山間部で千年の間父祖を弔い、変わらぬ暮らしの中で唯只管好機を待った。一方で、変わらなければならないものもあった。
今、町ではどこの映画館にも人が溢れ、若大将シリーズなどは新作が架かればいつでも人気を博している。「アルプスの若大将」の「蒼い星くず」は、五木ひろしばかり聴いている母も気に入り、ドーナツ盤を縁側で寝ているあの甥に聴かせてやっていた。目まぐるしい時代の変わり目の歌と言うのか、あの子はその後の時代の子だ。今はドラゴンに夢中で、プラスチックのヌンチャックを振り回して手が焼ける。まさに世の中の流れのように突然湧いて大騒ぎになる。南方の地図や腕脚の機銃掃射の貫通痕を見せた折、目を丸くして見ていたが、「サンパギタの花咲く南国の島へ」と言う地図の謳い文句と裏腹に我々が見た地獄、そういうものではないものを見る世代の子だ。いつの日か、手前共は見ないがあの子達だけが見るものがあって、ただ、今は、この同じ縁側で、同じ手前共の山の幸の空気を吸って静かに眠っている。あのヌンチャックは寝ている今の内に取り上げておかねばならぬ。何処から出て来るかわからない元気であれを振り回し、起きてからが本当に大変なのだ。いつ仏壇を壊すか分かったものではない。
皆さんからの「平和な曲」をお待ちしています。
hironomiya.kamada★gmail.comまでお待ちしています。
(★を@に変換して下さいね)
これまで[contact]から送って下さった方、大変申し訳ございません。システム不調のため、上記メールアドレスへ再送いただければ幸いです。恐れ入りますが、何卒よろしくお願い申し上げます。

平和は、この曲であろう。
1日目 愛の戦場
2日目 Come Together
3日目 イマジン
4日目 Hallelujah
5日目 空
6日目 Peace Love & Understanding
7日目 LUPIN WALKIN
8日目 Power to the People
9日目 Je T’aime…Moi Non Plus
10日目 ごはんができたよ
11日目 花はどこへ行った
12日目 Radioactivity
13日目 Samadhi
14日目 あなたのいない世界で
15日目 死んだ男の残したものは
16日目 Nuclear War
17日目 Over The Moon
18日目 Happy Xmas (War is Over)
19日目 I girasoli(ひまわり)
20日目 A Natural Woman
21日目 Amazing Grace
22日目 Vynnaya Ya
23日目 The Mother of God
24日目 あなたのものではない戦争 Не твоя війна
25日目 天使のらくがき
26日目 花はどこへ行った
27日目 Parolibre
28日目 世界中が I love you
29日目 スマイル
30日目 World Citizen
31日目 蒼い星くず
Потягни свої брудні удари, Путін.
Pull your dirty punches,Putin.
خپل ناپاک ټکان وخورئ، پوتین
拿出你骯髒的拳頭、普京。
ပူတင်ရဲ့ ညစ်ပတ်တဲ့ လက်သီးတွေကို ဆွဲထုတ်လိုက်ပါ။
مەينەت مۇشتلىرىڭىزنى تارتىڭ ، پۇتىن.


