選挙近いんで、反してみる4

構成・写真/鎌田浩宮
文/名無シー・鎌田浩宮

2019年7月21日、参議院選挙がありんすね。
今回も、投票率、低いんでしょか。

鎌田浩宮と名無シーでお喋りする
連載第4回は
選挙へ行った方がいいのか?
行かなくていいんじゃねえの?
について、お喋りします。

 

 

レールの上から、
踏み外す。

鎌田浩宮
「太陽を盗んだ男」が来たら、「ときめきに死す」(1984年)しかねえぜ。森田サイコー。現在キネマ旬報で連載されている、三沢和子さん(森田芳光の妻)と宇多丸による、森田芳光全作品対談。すんごく面白い。必読。

名無シー
規格化された生活に押し込まれるか不便の真綿で絞められるか。サバイバル術とかドロップアウト的なライフハック、ブリコラージュ的なものがこれからの世の中自由の鍵として注目されるかも知れませんね。

「シード ~生命の糧~」に出て来るシードキーパー(たねをストックして、必要なときに栽培者に配る活動家)の人々もそう言うものと言えると思います。大企業と大国の政府が敷いたレールの外、ダートコースを歩む人々です。勿論、政治・行政を搾取を受ける側が取り戻す努力も必要ではありますが。

 

 

与党変わっても
この息苦しさ
変わんねえのか。

鎌田浩宮
若者が、そして中高年が、この息苦しさを共有しているとします。しかし、選挙で自民が負けても、この息苦しさは変わらないと思っているんでしょうね。

名無シー
例えば、今回「新聞記者」で大書され た工作機関(内調)ですが、あれ は公安を母体としているそうで、当然左派政党への監視をしている訳です。仮に与党が代わっても、直下に反動的な工作機関がくっつくことになります。

霞が関の他の組織も産業界も、反動的でしょう。選挙はスタートラインでしかなく、そう言う反動勢力の懐柔策などを含む事全体について、現野党が指針やプランを持っているかというと、そうではないはずです。「小沢一郎対検察」といった構図等に、その辺りのプランの内実を想像することは出来ます。

 

政党よりも
NGOとかNPOの方が
信じられる。

名無シー
野党の心証の問題もあります。冷戦が終結した後、彼等は一度でも、彼等の行動規範の根底にある政治体制についての、思想の洗い直しをした事があるかというと、そんな話は聞いたことがありません。

左の政治体制でも、実質経済的である利権のピラミッドを構築させない社会工学は生まれませんでした。むしろ現政権が目指しているものと同様のものを、ロシアも中国でも行ってきている訳です。

火器に関する思想は右派と同じで、その流通を阻止する社会工学も生まれませんでした。その事は、潜在的であれ、組織、団体の根本的存立構造の心証を引き揚げられない要因になっていると見ることは出来るはずです。

左右とも政治の中枢の部分は、大航海時代的な侵略と軌を一にしているのです。どんな団体の掲げる政治もバルバロイを蚊帳の外に出して絞り上げる懸念を払拭出来ていないところがあります。

(編集部注:バルバロイ…ギリシャ人が、他民族を指した呼び名)

新聞が読める知識のある有権者は、潜在的であれその事を意識はしている可能性はあります。その意味では、政治だけではない選択、「善意の」NPOによる国境を越えた知識・資源・活動の共有がやっぱりより重要になって来るのでしょう。

かまちゃんのご親友が、NPOのほうに軸足を定めたという話を聞いたとき、少し、市民のサバイバルのライフハック、ブリコラージュ的なイメージが頭に浮かびました。社会、世界のレイヤーを多元化して、同じ世界でありながら、システムに縛られない通り道、身振りを模索するのは非常に重要なことだと思えます。窮屈な世界に出入口を作るのです。

 

 

じゃあ、
選挙には
行かねえの?

名無シー
でも、「新聞記者」はそんな日本でもちゃんと作られた。制作は老境にある人でも、映画の骨になった部分は若い記者が訴えてきたものだし、松坂桃李さんはじめ、仕事を引き受けた役者の皆さんは、映画「空母いぶき」(編集部注:2019年。佐藤浩市の発言の一部だけを、百田尚樹ら馬鹿が恣意的に取り上げ、話題になった)等にでていた役者とは、一線を画す仕事をしたことは事実だといえるでしょう。我々はこの映画に対する反動も見据えなければなりません。

鎌田浩宮
NGOにしか活路を見いだせないとなると、選挙には行かない…となるのでしょうか?

名無シー
勿論そんな事はないです。現政権の議席は減らさなければならないのは、仮に野党が頼りなかったとしても変わらないことです。それと、社会に複数のレイヤーを作るためには、最低限守られねばならないものも、政治的レイヤーの中にに存在しています。

大きいところでは基本的人権の保障、これが、侵しがたい理念として堅持されなければなりません。与党案のように、人権は政府が国民に与えるもの等という憲法案を通したら亡命が我々の選択肢に入ってくる訳です。

その他既に侵害されてますが、基本的人権に関わる法規、NGO活動をバックアップする法令はしっかり補強堅持、運用面の現実的規範となる判例もいいものを積み上げて行かなければなりません。そう言う意味では、政治家や人権派の弁護士の方々は社会の多層レイヤーの番人でもある訳です。

鎌田浩宮
この連載の第2回でも話したけれど、今回の選挙では、野党が過半数を取る事は難しいかも知れない。だども、ある程度自民・公明の議席数を減らす事ができれば、安倍一強じゃまずいんじゃねえの?という空気が与党内にも形成できる。

野党を無視してとんでもない法案を強行採決…といった事もしづらくなるし、政治家の暴言も減るんじゃないか。国民の所得や年金や消費税に関するデータも、嘘をつきにくくなる。マスコミへの圧力が減る。正しい報道がなされるようになる。

森友・加計問題や、強姦した安倍のオトモダチが無罪になるなど、そういったムチャクチャな事も、減っていく。憲法を変えられ、戦争のできる国にならないで済む。こんな世の中じゃ、子供達の未来が可哀想。少しでもマトモな世の中にしていくためには、大事な選挙なんだぜ。ちぃとちょっくら、「反」してみよう。

 

第1回、映画「新聞記者」についてのお喋りは、こちら
第2回、れいわ新選組についてのお喋りは、こちら
第3回、息苦しさについてのお喋りは、こちら


2019.07.08