震度6強だったので相馬へ行きました 7日目

撮影・文/鎌田浩宮

2022年3月26日(土)

1週間経った。
数日前から顔がヒリヒリするので鏡を見ると、日焼けしている事に気づく。外で作業しているし、気候も春めいてきたし。

昨日から、プロ野球が開幕。
相馬に来るまでは、我が広島東洋カープの今季はどうなるんか、開幕が待ち遠しくってたまらなくって、指折り開幕日を待っていたんであるが、まさか地震が発生し、相馬を訪れ、作業に没頭し、野球を観る時間が無くなるとは思わなんだ。

と言っても、テレビを観られなくてわじわじしている訳ではない。目の前の課題に没頭し、どうすれば人の役に立つかを、起きてから寝るまで考えて動く。これ、強い充実感がある。そう言えば、高校野球も相撲も全く観ていない。何やら、福島市出身の力士が優勝しそうで、お父さんもわくわくしているようだ。

お父さんは、1日中テレビを観ている。
テレ朝系のワイドショウを観て、BSの2時間サスペンスの再放送を観て、NHK-BSで1時から映画を観て、その後は相撲。合間に高校野球。

一緒に散歩へ行こうと誘ったが、膝が悪いし寒いので嫌だとの事。まあ、健康のためとはいえ、嫌な事をやる必要はない。

毎週土曜は、放射性廃棄物中間処理施設で働く杉ちゃんが、相馬へ帰ってくる日だ。この日も朝8時前に到着。
僕は、昨日できなかった雨水の水路作りに取り掛かろうとしていたところ。杉ちゃんと2人で続きをやる事にする。


このトタンの建物の奥が畑

天気予報では、昼から雨になると言うので、急いで作業。数時間経ち、そろそろ完了ってな頃に、お父さんが見に来る。そして、水路を庭の畑まで延長しろとの事。おお、作業延長だ。

写真奥はトタンの建物。畑まで水路を延長。

3時間かけて、ようやく完成。

以前ここに書いた、相馬市が受付けている、この度の地震のり災証明。紙とインターネットのどちらでも申請できる。しかし洋子さんの場合、デジカメで撮影した写真をプリントアウトしたくっても、イオン相馬店が休業になってしまい、出力できる店がないと言う。

であれば、僕がいる間にインターネット申請すればいい。ただ、杉ちゃんがWi-Fiのルーターを浪江の自宅に持って行ってしまい、相馬の杉本家からは送信できない。そこで、浪江の自宅へ行き、ルーターを相馬へ持ってくる事にする。杉ちゃんの車に乗り、2人で浪江へ。

初めての浪江。
わくわく。

相馬から車で1時間。
予報通り、雨が降ってきた。
12時に道の駅なみえ到着。ひるめしを食う。杉ちゃんは唐揚げカレーライス、僕はここぞとばかりに名物の浪江焼きそば。ラーメンもすごくおいしそうで、そっちも頼んじゃおうかかなり悩んだが、やめる。

子連れの若い家族も多く、嬉しくなる。除染により放射線量が下がったおかげで、これだけ多くの人が浪江に戻ってきているのだ。

道の駅なので、お土産品も豊富。杉ちゃんに待ってもらい、東京の友達のために土産を爆買い。こんなに持って帰れるのかなというほどに。買って復興支援するのだ。

他に買ったのはね。
県立相馬農業高校の生徒が開発した「油菜ドレッシング
県立ふたば未来学園高校の生徒が企画した「青春ドレッシング
小高のお母さん方が育てた唐辛子で作る「大蛇びっくりビーフカレー」「坦坦焼焼」。

東京だと、日本橋にある福島県アンテナショップ「MIDETTE」で買えるものもあるよ。

浪江駅に寄ってもらう。そろそろ東京に帰るので、臨時ダイヤを調べようと思ったのだ。しかし無人駅なので、詳細判らず。相馬駅で調べる事にする。

駅の中はちょっとした博物館

皆、来てよ

杉ちゃんのアパートに立ち寄り、ルーターを取り外し、車の中へ。行きは海側の道を通ったが、帰りは山側の道を使う事に。

相馬と違い、屋根が破損しブルーシートを覆っている家はない。震度6強の地域が局地的だった事が分かる。

福島県内には、その場所の放射線量が一目で分かる「モニタリングポスト」が約3000台設置されている。道中、浪江にもいくつかのモニタリングポストを見かけた。

相馬市内の放射線量はこちらを見ても分かる通り、0.05~0.14μSv/h。
東京都の放射線量はこちらを見ても分かる通り、0.02~0.03 μSv/h。
国際放射線防護委員会では、0.23μSv/h以下であるべきと定めている。
相馬市内の放射線量は問題ない数値だ。
浪江町の放射線量はこちらを見ても分かる通り、人の住むエリアは相馬市と同じ程度だ。ただ、道中で森のそばにあるモニタリングポストを見かけると、数値は高かった。

なお、原発から相馬までは約50㎞。
原発から浪江までは約10㎞。

この辺りは水が不足がちなので、ため池が多いそうだ。原発事故の前は牛の牧場も多かったと教えてくれる。そこで、テレビや映画で観る機会の多い、希望の牧場に寄ってくれる。

糞の臭いがかなりきついものの、写真では分かりにくいが、とっても広く、高低差の起伏に富んでいて、気持ちのいい牧場だ。牛は草を食べ続けている。

相馬駅へ。臨時ダイヤの時刻表が掲示されていたので、メモに取る。

2時半頃、帰宅。
お父さんにお願いし、洋子さんに電話してもらう。家屋のひび割れなどを撮影したデジカメを持って、杉本家へ来るようにと。

洋子さん、すぐに来てくれる。
しかし古いデジカメなので、USBケーブルのメス口がない。データの出力は、SDカードを取り出すしか方法がない。
しかし僕のPCは昔のPCとは違い、SDカードを挿入できない。
そこで荒技だが、デジカメのモニターに映し出されたひび割れの静止画像に、僕のカメラを近づけて、レンズ撮影する。やや画質は荒くなるが、仕方がない。
そして僕のカメラとPCをUSBケーブルで繋ぎ、データを取り込む。

無事、申請できた。洋子さんも喜んでくれた。
洋子さんは帰宅。

風呂掃除。午前中の力仕事で汚れているので、先に風呂へ浸からせてもらう。

今夜は、野郎だけでめし。
杉ちゃん、お父さん、僕。
これはこれで、とっても楽しい。
もう、30年来の仲なのだから。
杉ちゃんには、昨晩のお好み焼きもふるまう。
しこたま呑む。


2022.04.18