震度6強だったので相馬へ行きました 5日目

写真・文/鎌田浩宮

2022年3月24日(木)

3月16日水曜深夜の地震から、8日目。
余震は1週間ほど続くと言われていたが、まだ余震がある。
震度1から2程度のものが、1日に2~3回。
窓ガラスの揺れる音に気づき、強風かなと思いきや、短く地面の揺れを感じる。

ただ、この日から暖かくなった。
昼の最高気温が、12℃。
東京よりはまだ寒いが、だいぶ過ごしやすい。

お父さんから、あさめしひるめしはいらないと言うので、この日から作らなくなった。引き続き、洗濯は2人分する。
2019年に訪れた時も僕がめしを作ったのだが、3年経ってさらに少食になっている。前歯がなくなり、入れ歯で食べると痛いと言うので、柔らかい物しか食べない。
僕も野菜を薄く細かく刻むなど工夫しているのだが、見た目で判断し、1口も箸をつけないことが多々ある。ばんめしは小鉢など4~5品作るのだが、どれか1皿箸をつけてくれればいいといった感じだ。
今後もしボランティアを経験するのであれば、高齢者や歯の少ない人向けのごはんも、作れるようにならないといけない。

工夫して作っても食べてもらえないなど色々あるが、朝起きてから夜眠るまでの全てを、人のために目の前にある課題へ没頭して過ごすというのは、とても充実感がある。洋子さんに「ありがとう」と度々言ってもらえると、来た事は間違っていなかったのだと嬉しくなる。

平均年齢80歳の中で過ごせば、僕のような者でも1番の力持ちだし、最も俊敏に動ける者となる。手作りでしかも洋食は口にしないだろうから、それも喜ばれる。日々の洗濯や風呂掃除だけでも面倒な事だろう。

真夜中でも早朝でも救急車のサイレンが鳴り、酔客の声がする三軒茶屋と違い、夜は静かで、空気はうまい。体を動かし、食い物も新鮮で、地の酒もうまい。スマホンにもPCにも、ほとんど触る時間を作れないのがいい。この生活が嫌いではない。

昨日、洋子さんがお父さんに話した。
雪どけの水が玄関側に流れてしまう。裏庭の方に流れるようにした方がいいんじゃないか。

マジすか!
暗に指示出しっすか!
5日目にして、本格的な力仕事だ。
水路を作る。

これも地震とは直接関係のない作業だが、2019年の台風15号・19号では相馬も福島全体も、かなり大きな被害を受けた。というか、気になることがあったら何でもやって差し上げようじゃないか。
約4時間かけて、おおまかに地面を掘る。
硬い土や、砂利や大きな石も埋まっていて、時間がかかる。
昨日と違い気候がいいので、汗が噴き出る。東京から発送した水を、度々飲む。

便所掃除の仕事もしたが、若い頃は土方のアルバイトもやった。当時、金のいい仕事はやはり土方だった。昔の経験が、今頃になって役に立つものだ。

右奥が玄関側。トタン屋根の駐車場沿いに水路を作る。


水路は中央奥にある畑の水路とつなげる。


午後2時。
一旦作業を止め、冷蔵庫にあったおはぎをひるめし代わりに2個食う。
早速筋肉痛が始まっておるのは、まだ若い証拠か。

スコップを買ってこようか、とお父さん。
畑で使っているスコップと尖り先鍬(くわ)で充分と伝える。それでも買い物に行くと言うので、コーヒーをおねだりする。ドリップバッグ付きで、お湯を注ぐと飲めるタイプ。お父さんもすぐ理解してくれた。
東京では、コーヒーを欠かさず飲んでいた。そんなもんは我慢して5日間過ごしていたが、飲めるものなら非常に嬉しい!煙草はやめて、もうほしいと思わなくなった。でも、コーヒーは欲してしまう。

車での買い物から帰ってきたお父さん。黄砂や花粉で車が汚れていると言う。力仕事の後は、車の清掃をした。しかしすぐに
「おい。まだ汚れが残っているぞ」
と言われた。よく見ると、汚れの落ちていない所がある。
実は、車の清掃はやった事がない。父も車を持っていなかったし、僕は免許すら持っていない。仕事でもやった事がない。
お父さんにとっては、いい加減にやられて不満だったかも知れない。すぐにやり直す。

夕方。
洋子さんの親戚と友達のお宅へ、水を1箱ずつ運ぶことに。
洋子さんの車に水を積んで、出発。


常磐線相馬駅近くの踏切。
本数が少ないので、信号待ちは珍しいねと話していたら、特急スーパーひたちに使われる車両がのろのろ運転してるじゃないか。車の中で歓声。

JR常磐線8日ぶり全線再開 3週間程度臨時ダイヤで運行 地震被害から復旧

この記事を、4月になった今見つけた。
この日、24日から再開していたのだ。
ちなみに僕が帰宅時に利用した3月28日時点では、相馬~原ノ町は徐行運転となり、特急料金は発生せず。原ノ町から東京に向かっては徐行運転がなくなり、特急料金が発生。乗っている車両は変わらないのだが、途中から特急料金を支払わなければならない。

親戚の方も、お友達も、水はいくらあってもいいと喜んでくれた。
杉ちゃんとお父さんの知古ということがあるのか「東京からコロナウイルスを持ち運んだかも知れない人物」と警戒されず、会話も弾んだ。

お友達と洋子さん、2ショットの写真を撮る。
「美人に撮って!」
「はい、バター!」
「チーズじゃないの?ダハハ」
「写真、美人に修正してね」

杉ちゃん家に戻り、風呂掃除、料理。
洋子さんも来て、3人でばんめし。
洋子さんと3人でのめしは3日目だが、皆が飽きることなく、ますます楽しい。
水を届けに行った洋子さんのお友達も、明日のばんめしへ招くことになった。何を作ってもてなそうか。

水路作りで服も汚れ、花粉症もきついので、風呂がありがたい。断水からの復旧がありがたい。


2022.04.11