震度6強だったので相馬へ行きました 3日目

撮影・文/鎌田浩宮

2022年3月22日(火)

あさめし作る。
洗濯。

雪が降ってきた。

2つあるトイレのうち、お父さんの部屋のそばにある2階のトイレを、2時間くらいかけて掃除。お風呂同様、80歳のお父さんにしてはきれいにしているのだが、あちこちに汚れが目立った。
職にあぶれた20代後半、掃除のアルバイトにいそしんでいた。飲食店や金持ちの家を掃除する。店の閉まっている夜中、ポリッシャーで床を磨き、ワックスをかける。もちろん、トイレも洗浄した。その経験が今、生かされるとは。
便所の水しぶきが、時折目に入る。

ひるめし。
お父さんの娘さんが以前実家に寄った際、作り置きしておいたハンバーグでハンバーグサンドを作る。ハンバーグの味付けが分からないので、パンにバターと辛子とマヨネーズで軽く味付け。コンソメスープも作った。
お父さん、喜んで食べてくれた。ハンバーガー類を食べるのは、久しぶりだっただろう。

お父さんの友達・洋子さん宅2階にあったガラスのテーブルが、地震で粉々に割れた。割れた食器も多数ある。既にポリ袋の中に収めているという。ただし非常に重く危険なので、僕が屋外へ運び、車の中へ入れ、洋子さん運転でゴミ収集場まで行き、捨てた。
こうした何気ないことも、女性高齢者の独り暮らしでは大変なこと。

洋子さん宅の台所、頭上に設置された吊り戸棚が傾き、今にも落ちそう。元の位置に再度ネジ留めしようとしたが、ネジがバカになってしまっている。なので吊り戸棚を剥がして外そうとするが、棚の下部が外れない仕組みになっている。

結局、大工道具を揃えている寺島さん…第2回エプスタ随筆大賞でも紹介した、米農家の寺島さんにお願いする。すぐに駆けつけてくれ、電動ドライバーでネジ留めし直す。元の位置に設置完了。

被災地でのボランティアに必要な道具は多々考えられるが、こうした大工道具があると便利な場合もあるのだ。僕は高速バスで来たので、持参できる物にも限りがあったが…。

「あれ?鎌田さん、痩せたね」と、寺島さん。
あれれ…随筆大賞でお米を買わせていただいた際は、電話だけのやり取りだった。なぜ僕の容姿をご存じなのだろう?
「映画の上映の時に会ったでしょ」
…おお!
東日本大震災後の杉本家と僕を撮影した「鎌田浩宮 福島・相馬に行く」の初お披露目・相馬での上映会にお越し下さっていたのだ。上映の2014年から7年経っているが、覚えて下さっていて嬉しい。映画を作った甲斐があった。
どうでもいいが、映画の中の僕は体重90㎏。今は70㎏。変わりすぎだ。ゴム人間かっつーの。

その後、洋子さんと買い物。昨日と同じスーパー・フレスコキクチ。僕のためにビールを買ってくれた。お父さんの呑む糖質0のものにする。
「あの店、まだ開店してないね」
「そうですね」
車の中で話す。飲用水を使う飲食店(個人店もチェーン店もファミレスもファストフードも)の多くが休業している。ヤマダ電機なども同様。

そして杉本家へ。
風呂掃除。湯を張る。
僕が料理。洋子さん・お父さんと3人で楽しくばんめし。シチューと麻婆豆腐など作る。市販のルウや〇〇の素といったものは使わず。洋子さんが、調味料は何使ってるの?と訊いてくれた。お父さんが「わかめが食べたい」というので酢の物を作る。
今日も震度1~2程度の余震が多かった。一人ひとりが不安な時は、皆で集まってめしを食うといいと思う。

メールとラインの確認以外、スマホンを見ることもしない。SNSも見ない。

2022.04.07