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選挙近いんで、話してみる
構成・写真/鎌田浩宮
文/名無シー・鎌田浩宮
2019年7月、参議院選挙がありんすね。
同時期に、2019年最高の傑作「新聞記者」が、封切。
お客さん、とっても入ってましたよ。
鎌田浩宮と、映画評論家の名無シーが
この作品と絡めて、
政治についてお喋りします。
どこの誰に、投票すっか。
そもそも、投票なんか行かないで、いっか。
今回は、映画のお話では、なくってよ。
誰に投票すっか、
参考にする情報ソース、
ある?
鎌田浩宮
「野党に投票したい党がない」「野党には任せられない」という声をよく聞きます。テレビをつけても誰かが言っていますし、受け売りなのか僕の家族でも、そのように言う者がいます。しかし、本当にそうなのでしょうか?
名無シー
みんな、政治について自分の意思を固めるだけの情報は持っていなかったり、その人にとっての、その他の重要事項程には、政治に関心が無いと言う事実もあると思います。
そして、その浮動票を誰かの意志でどこかに引っ張る組織票の仕組み。それは何時の時代も同じで、大正デモクラシーの時代から、翼賛体制の時代へ一気に転落した過去も同じ様な経緯があったと思います。
鎌田浩宮
よしもと新喜劇への出演。女性向けファッション誌「ViVi」とのタイアップ。ブレーンは電通なのか博報堂なのか知らんが、奇行も数打ちゃ浸透する。
名無シー
そう言う意味では、どうやって投票への参考情報を流布させるかという事が重要なのだと思いますが、選挙の前にぶつけてきた感のある今公開中のフィクション「新聞記者」等は面白い試みだと思います。
選挙行く前に
この映画
観るべきですよ。
名無シー
勿論、わざわざあの映画を見に行く人は、既に政治に関して一定の関心を持っていて、どんな映画に仕立てて来たのだろうと思っている層だと思いますが、今まで無かったラインに行政の暗部の実情を投げ掛けたのは、大きいと思います。
恐らくは選挙まで、与党と行政側の強い反動があるかとも思いますが、そこにどう反応して行くかは、我々映画マニアの歩く道も、一つの難所に差し掛かっているような感じがします。映画の方は、絵的にはMVっぽい残念さもありましたが、狙いに沿っていたし、何より狙いが良かったですね。
鎌田浩宮
僕は、大絶賛です。登場人物一人ひとりをしっかり描いている。ここのキャラクターに魅力がある。人物を描かずに事象だけを追ってしまうと、スパイク・リーの「マルコムX」のように、映画としての魅力がなくなります。
加えて、望月衣塑子さんと前川喜平さんらの対談を挿入させる。作品が、重層的になっていましたよ。あの対談だけで相当な時間撮影をしたそうですが、ちょこっとだけスパイス程度に使うところに、監督の力量を感じました。
アベノミクス
信じてる人って
いないっちゃー
いないのか?
鎌田浩宮
さて、どこの国でも、庶民が政治に期待するのは、景気が上向きになる事だと思います。まるで民主党政権が景気を悪くしたかのようなイメージがありますけれど、2008年のリーマンショック時は麻生政権だったんですよ。
それでも財政を立て直す事ができなかった。長期に渡る自民党政権に国民の不満が募り、2009年に麻生政権が倒れ、民主党政権が誕生するんです。しかし東日本大震災が起き、2012年に安倍が政権を奪取。アベノミクスを唱えるんだけど、実際には景気に関する数値を、不正に扱っていた事が明らかになる。
確かにこの数年で就職率は上がったが、これは単に上の世代の多くが定年を迎え、離職したから。オリンピックが終われば、今までのような就職率アップも、見込めるかどうか。
名無シー
普通に新聞を読む程度の人であれば、真顔でアベノミクスを信じている人の割合は多くはないのではないでしょうか。本当に経済を分析して一票を投じる人はいないはずで、経済的読みは社会全体についてのものより、自分の利益に繋がる政党や個人への投票という形で現れるのかも知れないですよね。
そう言うキーパーソンが今度は票を取りまとめるとか。雇用の自由化以降、それに対する対抗勢力の組織力が解体されたと言うこともあるかも知れませんね。
大事な問題って
与党も野党もどっちも
変えられないっしょ。
鎌田浩宮
貴殿のピックアップした「浮動票」「組織票」について。 東京新聞7/1朝刊特報面「若者の自民支持率なぜ高い?」 を読むと、民主党政権が辺野古問題を解決できなかった事を含め
「政権交代して政治は変わるんでしょうか。大事な問題って、自民も野党も変えられないのではないか」
「高校でも大学でも『批判する人はダメな人』という風潮は強い。国会で野党が自民を追求しても、それだけでは支持は広がらないと思う」
という声が掲載されていました。
それらについて成蹊大・野口雅弘教授は、若者のコミュニケーション能力に言及、政治や社会に不満があっても「個人での解決を目指し、仲間と共同で変えようとする行動に結びつかない」とのこと。
このような浮動票形成には、「新聞記者」でも描かれていたような、内調…すなわち政権によるSNS操作が影響している。「 社会は、個々の力では変えられない。為政者だけが変えられる、だからあなたたちは、私達政権に身を委ねなさい」というメッセージを、情報操作の端々に送りこんでいます。
この記事、次回につづく…
編集中記
だまされたと思って「新聞記者」、観て下さい。取り敢えず、座席に座ってみて、つまらなかったら途中退席。お代はこの僕がお返しします。第一に娯楽映画としてしっかり成立しているんで、スリリングで観ていて飽きないんです。
これ、物凄いことを描いているけれど、現実を大げさに描きすぎていない?ウラは取れているのかしら?証拠はあるのかしら?
…こうした映画は、訴訟を避けるため充分に取材をおこない、しっかりとウラを取ってから映画化しているはずです。この映画で描かれている事の多くは、ここ数年日本で起きた事の本質です。
映画館に入る前と出た後では、この世界が違って見えるでしょう。でもって、今回の2019年7月21日・参議院選挙に対しても、誰に投票したいか、まるで考え方がが変わってしまうでしょう。素晴らしい芸術は、僕らの考え方や価値観に明るい影響を与えるものです。
選挙なんて、ひんぱんにあるもんじゃあ、ござんせん。うちら庶民に与えられてる権利なんざ、ほんのちょびっと。選挙とあとわずかのことでしか、社会に働きかける事ができません。この数少ない機会を使って、ちったぁいい世の中にしていきましょうよ。鎌田浩宮
2019.07.02