緊急連載「有志連合と協力して」⑳

文・鎌田浩宮

後藤さんの
著書を
読んで
分かった
こと。

だいぶ遅くなりましたが、後藤健二さんの著書「もしも学校に行けたら ‐アフガニスタンの少女・マリアムの物語」を読み終えました。
2009年に出版されたこの本は、2001年秋、つまり911の同時多発テロがあり、アメリカによるアフガニスタン内アルカイダ及びタリバン政権への攻撃が始まってから、カルザイ大統領の誕生までの1年余りを取材したものです。

ちなみに後藤さんの著書は、全て最寄りの区立図書館で借りられました。
後藤さんの本って、この記事を読んでいる皆さんの近くの図書館にも、きっとあるはずです。

この本は130ページ強あるのですが、文字が大きく、難しい漢字にはカナが振ってあります。
小学校高学年くらいから読めるように、易しい文体で書かれています。
アフガニスタンの現状を、子供でも解るように書くためには、相当に取材を重ね、出来事を自分の血肉にしなければできないと思います。
また、大人が読んでも全く物足りなくないのも、そこに起因しているのでしょう。
これだけでも後藤さんの、自身の書く著書への考え方が、よく分かると思うんです。
誰に、どのように、伝えるか。
どのように表現すれば、より多くの人に、伝わるのか。

 

取材よりも
大切に
していたこと。

 

後藤さんは、911直後の危険極まりないアフガニスタンに入国し、アメリカ軍の「誤爆」で長男を失った家族と出会います。
後藤さんは、彼らの心の傷口を広げないよう丁寧に話しかけ、まずは食べる物さえ困っている彼らに食料の手土産を持って行き、信頼を得てからカメラを回し始めます。
タリバンが撤退し、ユニセフのおかげで女の子も無償で自由に学校へ行ける状況になりました。
すると彼は、学校へ通った事のない母親にまず教育の重要性を説明し、10歳になる娘のマリアムを学校へ行かせるよう説得します。
その後、学校側の誤解や、マリアムの家族の誤解や無知が絡み合い、マリアムは教育を受ける事を断念しかけます。
後藤さんは取材などさておいて懸命に動き、遂にマリアムの入学を成し遂げます。

後藤さんは、なぜ世界中への取材を続けたのでしょう?
何がジャーナリストとして彼を駆り立てたのか?
それは、「あとがきにかえて」に書かれていました。
後藤さんが、アフガニスタンの避難民のキャンプを訪れた時の文です。

「わたしは、なぜ、この戦争と避難民の存在が日本であまり知られていないのか、大きなショックを受けました。わたしたちは、単なる事件事故のニュース、アメリカ軍の動きばかりに気を取られすぎているのではないか?『対テロ戦争』『テロとの戦い』とわたしたちがまるで記号のように使う言葉の裏側で、こんなにたくさんの人たちの生活がズタズタに破壊されていることを、知らないでいたのです。あるいは知らせずにいたのです。(中略)その中で、唯一の希望は子どもたちです。マリアムの様な子どもたちが、アフガニスタンにはたくさんいます。わたしたちにできることは、さまざまな方法で、彼らに手をさしのべ続けることなのではないか、そう思います。」

 

国家による
暴力を
子供にも
分かりやすく。

 

アフガニスタンで、そして後藤さんが命を絶たれたシリアでも、罪のない市民が、誤爆によって亡くなっている事くらいは、新聞を読めば分かります。
しかし、残された家族がどのように苦しみ、どのように生きているか。
その中でも、子供たちはどのように亡くなり、どのように苦しみ、どのように生きているか。
それはなかなか伝わってこないし、評論家の難しい文ではなく、子供でも簡単に理解できるように日本へ伝えてくれる人は、そうはいないのです。

加えて後藤さんは、国際社会が本当の意味で彼らへの援助ができているかを、確かめたいのです。
マリアムのように、援助の手のひらからこぼれ落ちてしまっているシステムに、なってしまっていないかどうかを。

後藤さんの行動を蛮勇だと批判している人も、本を読むとまるで彼への印象が変わるでしょう。
もちろん、100人中100人が後藤さん批判を翻すなんて、呑気な事は言いません。
しかし、彼の著述をまるで読まずに批判するのは、絶対に片手落ちだと分かりました。
あのファッキン安倍は、今後一生後藤さんの本を、手に取る事さえしないでしょうが。

報復は、報復しか、生まない。
これからも、後藤さんの志を、継いでいきましょう。

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エプスタインズでは、様々な人から原稿を取り寄せ、2月2日から集中連載をしています。
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後藤さんの殺害が安倍政権により、憲法9条改悪に利用されてしまう、大変な時です。


2015.03.30