解釈改憲を若者に訊いてみる

取材/文・鎌田浩宮

今回の戦後最低最悪の悪事、
集団的自衛権への解釈改憲について
エプスタインズではフリーズしたかのように
記事を掲載しなかった。

情けないと言われてもいい、
首相官邸前を取材し
記事にする気力もなかった。

僕の持病が悪化していて
鬱気味だったのもあるけれども、
いつもの怒りが出てこない。

怒りを通り越してしまって
この悪事を打開するアイデアを
誰も持ち合わせていない
焦燥と恐怖で
神経衰弱のようになっていた。

そうして7月1日が終わった。

エプスタ誌上で
僕の考えを掲載するのは容易だ。
SNSを見ても
様々な人達が
優れた文章で
反対の意思表明をしている。

だけれど僕は、
いずれ容易に徴兵制が敷かれ
実際に戦場へ駆り出されるはずの
若者が何を考えているか
そんなSNSにも埋もれている生の声を
取材すべきだと思った。
実際に戦場に行かない年齢の
僕の意見なんぞよりも。

えっへん。
僕、いるんだもんね。
選挙権を得たばかりの
若者の友達が。

彼に、
メールでのインタビューを
敢行しました。

以下、
黒文字が僕からの質問、
青緑文字が彼からの回答です。

エプスタインズでは
通常実名を出すことが大前提だけれど
彼の将来を危惧し
今回は匿名で掲載します。

それでは以下、
お読み下され。

鎌田さん
遅くはなってしまいましたが、インタビューの回答です。僕自身もこのインタビューのおかげで自分の周りの環境などについて色々と考えるきっかけになりました。このような機会を頂いてありがとうございました!
なかなか考えがまとまらず文章におかしな点などもあるかもしれないので、もしそういうものがあったら修正しますので連絡お願いします。

 

 

① 今回の解釈改憲について、
大学の仲間や教授と話したりしますか?
もし話す場合は、
どんな話になるのか具体的に教えて下さい。
話さない場合は、
どうして話さないのか教えて下さい。

自分としても恥ずかしいことですが、大学の友達同士の会話で今回の解釈改憲について話題がでたことはあまりありません。みんなの関心にのぼらないわけではないし、友人の多くがそれぞれ肯定的であれ否定的であれ何らかの感情は抱いていると思いますが、自分の周りでは社会的な話題について友人同士と語り合うということは、もちろんありはしますがあまり頻繁にはないです。

 

② 日頃のゼミ・サークルの催しや
学園祭などで、
解釈改憲などについての
シンポジウムや討論会はありますか?
授業中に、そういう話になったりはしますか?

私が語学分野の授業に偏って講義を履修しているということもあるかもしれませんが、今のところ解釈改憲について授業や学校で討論が行われたことはありません。

 

③ 今回の解釈改憲を、
楽観的にとらえていますか?
悲観的にとらえていますか?
理由も添えてお答えください。

私は悲観的にとらえています。そもそもこれまで歴代内閣が憲法上許されないと解釈してきたものを、憲法改正がかなわなかったからといって勝手に解釈を変えて強引に集団的自衛権を認めたという点についても非常に残念ですし、これまで専守防衛につとめてきた世界で唯一の平和憲法であった日本の素晴らしい憲法がねじ曲げられて解釈されてしまうのも非常に遺憾に思っています。

 

④ 近い将来、
自衛隊員が戦地に行きたくないという理由で
大量の退職者が出て、
徴兵制が敷かれる可能性があります。
自分が徴兵されるかも知れない
という危機感はありますか?
理由も添えてお答えください。

徴兵制については、私は正直なところあまり真剣に危機感を感じたことはありません。これまで徴兵制をひいていたドイツやスイス、ロシアにおいても徴兵制の廃止予定がでているなど、短い期間で兵士を集める徴兵制の非効率性が認識されるなかで、新たに徴兵制をひくことはあまり考えにくいのではないのはないかと楽観的に考えてしまっています。ただ、実際に徴兵そのものについてもそういった理由だけでなく、国民の安全のためにももちろん徴兵制には反対です。

 

⑤ かつての戦争を経験した世代や、
その下の世代に比べ、
今の若者は選挙にも行かず、
デモにも参加しないと言われています。
これはどうしてかと思いますか?

単純に安全保障への無関心という問題について考えるなら、やはり直接的に大きいのは時間の経過と、直接戦争を体験している世代との間に世代的な差があるということはあると思います。核家族化の影響などもあると思いますが、直接戦争を体験した人からそういった話を聞いたりする機会の減少が原因の一つなのではないでしょうか。

 

⑥ 政治や社会に対する不満を、
選挙やデモ以外に意思表示できる場所を、
今の若者は持っていますか?

私が考えているなかでは、手軽な手段としてはTwitterやFacebookなどのSNSに自分の意見を挙げて拡散してもらうという方法ももちろんあげられますが、学校のゼミや学生団体などを通してwebや出版物に自分たちの意思を表示することも可能だと思っています。

 

⑦ 今の若者は、自民党が優先する「経済成長」を、
戦争や原発によって失われる「命」よりも
尊重しているように思えますか?

結論から言えば、私は原発の再稼働を目指す自民党が「命」を重んじているようには感じられません。自民党の政策の中でも、私が最も残念に思っているのが原発の再稼働の問題です。10万年もの間保管しなければいけない使用済み燃料を一つの企業が管理できるはずがないし、持続可能性がないことはわかりきっています。原発を止めることで大きなコストが発生することも理解はできますが、最悪の事態が発生したときのことを視野にいれた場合にコスト云々という議論をしているべきなのかという疑問が浮かびます。3.11の教訓を活かさず原発を再稼働し、もし何らかの事態が発生した場合には、未来の「命」だけでなく、過去に失われた人々の「命」も踏みにじることになります。そういった点からも、現在の自民党政権の政策は「命」を重んじたものとは言えないのではないでしょうか。

 

⑧ 最後に、この国はこの先、
住みよい社会になっていくと思いますか?

現在のアベノミクスの成果や解釈改憲などから考える限り、私は日本の経済状態や国民生活が今後短期間の内に大きく改善されるということには正直なところあまり期待できません。しかし当然自分たちの世代やその下の世代、さらにその下の世代達が今後生活していく日本の社会には住みやすくあってほしいと思っています。
私は去年成人し、参政権を手に入れました。もちろんよりよい日本社会のために投票による意思表示も行います。加えて今後の学生生活や社会にでてからの生活では、より住みやすい日本を築いていくための一助となるために、勉学を含めたあらゆる活動に励んでいけたらいいと思っています。

〇〇君へ

この度は、こんなにも丁寧に、真剣に
アンケートに答えて下さり
心から嬉しく思っています。

嬉しい理由は2つです。

1つは、僕の親友の息子さんが
ご両親の離婚という困難を乗り越えて
こんなにも素晴らしい意見を答えられる
大人に成長してくれたということです。

もう1つは、あなたのお父さんや僕と
意見が一緒だという事です。
あなたのお父さんは
心穏やかな中にも
真実や真理は何かという事を
常に淀みのない心で
捕まえようとする人です。
それは、今のあなたの年齢の頃から
変わっていません。

今回のインタビューで
あなたの意見と共に
今の若者全体が
どう考え動いているかも
代弁してもらいました。

僕が学生だった頃も
それほど社会について
仲間とお喋りする気風は
ありませんでした。

ただ、僕とお父さんは
出会った頃から
よくそういう話をしました。
お父さんに誘われて、
デモに行ったこともあります。

要は、今も昔も、個人個人では
皆さん意見を持っているのですが
それを表に出すことがないのでしょうか。

あなたや、
若かった頃の僕やお父さんは
少数派なのかも知れませんね。
何の意見も持たない若者も
多いのでしょう。

でも、
少数派のあなた達が
声を上げる事による影響力は
小さなものではありません。

僕のチョー大好きなドラマ
「あまちゃん」では
震災前に時間を逆再生する事が
裏テーマでした。

311以降のこの国は、
震災と原発事故からの反省をもって
これまでの誤った歩みを止め
命を最も大事にする世の中に変える
チャンスでした。

しかし現実は
命よりもカネ、経済を最優先し
所得の増えない国民の不満を
中国や韓国にぶつけるように仕向ける
政治を支持しました。

まだ、逆再生は、できます。
いや、しないといけません。

あなたが戦争に駆り出されないよう
共に歩いていきましょうね。


2014.07.03