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続・東北の人と「あまちゃん」を語る
構成・鎌田浩宮
じぇ。
好評だった
緊急特集、
の続編
でがす。
東北の人が、飾らずに率直に話してくれて、メディアが報じない、いろんな話ができました。
それが、以下の4回です。
「東北の人と『あまちゃん』を語る」
「東北の人と『楽天優勝』を語る」
「東北の人と「東京五輪』を語る」
「東北の人と『消費税』を語る」
北三陸で、2013年10月の今もなお、勉さんが琥珀を磨き続けているに違いない。
だから、今日も「あまちゃん」を、語ろうよ。
そこで、先日4回の連載でインタビューに答えてくれた、福島県相馬市在住の杉本紀男さんの息子さん・敏之君が、「あまちゃん」の感想を送ってくれました。
40代半ばの彼は、エプスタで何度も紹介した通り、震災で失職してしまい、その後臨時の仕事を転々とし、今は飯舘村に通い、放射性物質の除染の効果を測定するアルバイトをしています。
飯舘村は南相馬市の西に隣接し、原発からは約30㎞の距離。
そこに、相馬市かの自宅から毎日、車で40分かけて通っています。
それでは、感想、敢えて誤字もそのまんま記載します。
どうぞ、お読み下さいね。
あまちゃんで一番良かったのは、女の子どうしの友情でした。
お座敷列車内のコンサートを直前になって、出たくないと拒否した、ユイちゃんにアキちゃんは携帯で「わたしはユイちゃんと思い出を作りたいよ。」と言って、コンサートに引っ張り出したところに、感動しました。これを「萌えー」ではなく、素直に感動したと言いたいです。
天野春子の青春時代も良かったです。本当に小泉今日子そっくりでした。聖子ちゃんカットが日が経つにつれて緩やかになったり、髪が伸びて中森明菜のようになったりするのもよかったです。ちなみに小泉今日子はショートカットのイメージですけど、ごく最初の頃は私の記憶に間違いがなければ聖子ちゃんカットですよね。まあその頃のアイドルはみんな聖子ちゃんカットでしたが。
しかし、最近になってあれはかつらだったと有村架純本人が言ってるのをYOUチューブで見ました。
天野春子の青春時代が出ると、自分も若いころを思い出して胸が切なくなります。
薬師丸ひろ子があまカフェで歌ったところも、本当に良かったです。セーラー服と機関銃をうったってた頃の薬師丸裕子を思い出してジーンと来ました。
それと、最後に良かったと思ったのは、周りの大人たち皆ががあまちゃんの夢をサポートしてくれたこと。天野春子の若いころは周りの大人たちは、壁だったり、利用しようとするばかりだったようです。
しかし、アキちゃんの周りの大人たちは、温かく見守ってくれていましたし、いろいろとわがままや、アイディアを受け入れてました。
現実もそうであってくれれば、と本当に思います。若いやつがちょっと夢みたいなこと言ったりすると、「甘い」と一言で片づけたりしますが、若いんだから甘いのはあたりまえだろう。と思います。そんな事しか言えない大人にはなりたくないですね。
批判すべき点としてはですね、とくになかったんですがね。震災で登場人物の誰も犠牲にならずに済んだというのは安心したんだけど、それがちょっと現実を無視していると思ったぐらいだろうか。
父とは
違う
感想。
もっともっと彼に話を訊きたくなり、いつもの!電話インタビューを敢行したど。
以下、お読みあれ。
杉ちゃんは、NHKの朝ドラはよく観る方なの?
「面白いのだと続けて観るよ。『あまちゃん』は今まで観た朝ドラの中で、1位にしてもいいくらいよかったよ。うちの父は、単なる習慣で朝ドラを観てるだけだから、あんな感想だったんじゃないかな」
そんなにのめり込めたのは、どうして?
「アキが東京に行ってからは毎日欠かさず観てたよ。GMTの友情とかもよかったんだけど、なんと言っても春子の若い時の話がよかったんだ」
これまでの朝ドラは主人公の女の子が成長していく話だったけれど、「あまちゃん」は春子が自己を取り戻す、さらに言えば、生き直す話でもあるからね。若い時なんて、自分の理想と挫折の繰り返し。これまでの朝ドラのように、順調に自己実現していく方が現実世界では珍しいんだよ。ところで、原発事故の話がドラマに出てこなかったことはどう思った?
「岩手は福島から離れているから、被害はなかったんじゃないかなあ。風評被害はあっただろうけど」
風評被害は、ちゃんと描いてたよね。
「原発の話を朝ドラで取り上げてほしいとは思わなかったよ。あと、地震や津波の被害のひどい光景も見たくはなかったなあ。それよりは、久慈でも津浪はあったのに、亡くなった人や行方不明の人が登場しなかったのは、リアリティーがなかったと思う」
でも、前回も書いたけれど、久慈はそういう方が少なかった地域なんだよ。
「少なかったにしても、例えばアキとユイのクラスメートの安否を連絡し合ったりの描写とかがないのは、違和感がある」
相馬ではそういう確認がなかなかできなくて大変だったんだもんね。東京にいる僕だって、相馬にいる杉ちゃんが生きているのが分かったのに時間がかかったんだから。
「それから復興に向かって行くのも、本当は地域の中で、意見の対立とかがあるんだよね」
どこから先に手を付けるか、とかね。
「海女カフェの再建は後回し、という描写があったね」
森の
土と
木を
全て
はがせる?
飯舘村の現在の放射線量はどのくらいなの?
「道路で0.1~0.3マイクロシーベルト/毎時。村は山ばかりなんだけど、肝心の山は、地表から10㎝で2μSv/h。地表から1mでも1μSv/h」
高すぎるよ。未だに人が住めないんだもんね。
「10㎝くらい地表を削って、2μSv/hだったのが0.3μSv/hに下がる程度。森の土や木を全部剥がせるかというと、そんなの無理だからね」
国の基準値が0.23μSv/h以下だから、かなり厳しいね。飯舘村の除染って、どんな作業なの?
「山の木の枝を切ったり、落ち葉を拾ったり、土壌を1~3㎝ほど剥いだり、その剥いだ箇所に木材チップを撒くこともあるよ」
除染、効果は出てる?
「正直、効果は期待できないね」
作業をしている杉ちゃん自身も、被曝しないように気をつけないと。
「作業服は、自宅で洗濯するんだよ」
えっ?!放射性物質に対する認識がひどくないかなあ。洗濯水も下水に流れるわけだし。
「それはともかくとして、人手は足りないんだよ。仕事がなくて困っている人が減ったのかも知れないし、人には自分が就きたい定職があるしね」
そうだね。除染の仕事は臨時でいつまで続くか分からないし。そもそも、農家をやっていた人はやっぱり農業をやりたい、魚を獲っていた人は漁業がやりたいわけだし。
「でもね、除染の仕事で正社員になろうと頑張ってる人もいるんだよ」
放射能にまみれなきゃならない、危険な仕事だと思うけどなあ。杉ちゃんも、被曝しないように気をつけてね。
お父さんがインタビューで、孫を相馬で育てることを話していたけれど。
「僕も、相馬で育てるのは大丈夫だと思うよ。もちろん、不安に思う人は引越もやむを得ないけれど」
僕も、どこで育てようと、よそ者がとやかく言うのは嫌。ただ、杉ちゃんは福島県内の子供達に甲状腺ガンや嚢胞が増えていることは知ってる?
「そんなのテレビでやってる?知らないなあ」
テレビしか信用できないの?東京では朝日新聞などでも取り上げてるよ。そちらでも、福島民報が取り上げてない?
「そういう情報は、自分でシャットアウトしちゃってるのかも知れないなあ…」
最後に何か言い残したことはないかと訊いた時、彼は電話の向こうで言いました。
「南相馬市のある所で、数百俵もある新米の中から、たった2俵だけ、100ベクレルの基準値を超えた米が出てきたんだ。なのに、その数百俵全部が出荷停止。ひどいと思わない?」
杉ちゃんも、お父さんも、僕も、この国のかなり多くの人が、情報を無意識に取捨してるのだ。
姪っ子がいるのに、甲状腺ガンのことも、知らない。
でも、それじゃあ、僕が何を知っているのか。
だからこそ、「あまちゃん」を、語ろう。
そこから、始まること、あるよね。
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