311から1年、の特集はしませんが、二次被災者の話を。

僕の最も身近に被災者がいました
文・鎌田浩宮

絆なんてないんだぜ、イェーイ!

エプスタでは、敢えて311の特集は組まないつもりだぜ。
僕自身、テレビで311の特番をやっていても、ほぼ観ないんだぜ。
その手の映像を観ても、役立つ情報は、元気になれる情報はあるのかい?
311で散々疲弊した心が、PTSDが悪化するだけでしょ?
いや、きちんと観れば何か得るものはあるんだろうけど、体が観ることを拒絶するんだぜ。

バラエティー番組ばかり観てます。
今までキヨシローが歌って勇気づけてくれていた
「悲しい気分なんてぶっ飛ばしちまいなよ」
は、音楽にも報道にも映画やドラマにも見当たらないから。
唯一お笑いだけが懸命になって、悲しい気分をその時だけでも忘れさせてくれるから。

東京のサラリーマンの友人が311の後、メールをくれました。
「地震から約2ヶ月、心身ともにボロボロになるまで会社の震災対応で頑張っていた一人だということを知っておいてください。」
その通りなんです。
地震・津波・原発の被害を直接受けない地域の人も、正に被災者でした。

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2012年3月7日の東京新聞夕刊に、こんな記事がありました。

「被災地役所 激務に疲弊」
税金で食っているくせに、と苦情の絶えない被災地の役所。
しかしそこで働く職員も、家族を亡くしたりした被災者。
しかも例えば岩手県大槌町は、136人の職員のうち40人が津波で犠牲に。
道路や公共施設の再建、住民の高台移転など何十年分もの業務が1度に押し寄せた。
日付が変わるまで明かりがついている部署も。
最近ようやく週末に休める日があるが、周りに悪いと外出を控える。
全国の自治体から職員は派遣されているが、要請の希望人数が来ることはほとんどない。
心身共に体調を崩し、長期休養する職員。
復興のために働くという使命感が薄れていく。

 

この記事を読んで、同じ境遇の者が、僕の親友にいる事を思い出しました。
ワオ君(仮名)は某財団法人で働いています。
以前から終電前後で帰宅するほど多忙だったんですが、民主党政権による数年前の事業仕分けで、全職員の1/3だったか2/3だったか、とにかく愕然となるような人数が退職となりました。

そこに東日本大震災が起こったのです。
ぎりぎりの人数で動いている職場は、非常事態に対応する体力を奪われていました。
そこに今までの通常業務に加え、東北を復興支援する業務が急増しました。
終電では帰れなくなり、週に1日は徹夜(1時間だけ眠れるとのこと)です。
晩飯は深夜にやっているすき家か松屋のみ。

土日も出勤し、休む時間がなくなってきました。
多い時は2日おきに東北へ出張するようになり、なおかつこれまでの東京の仕事もこなせばなりません。

そして遂に彼は、東京の仕事を抱えたまま、仙台への転勤が決まりました。
引越先を探す時間もないので、僕が自分の仙台の親戚に不動産屋を紹介してもらったり、フリーペーパーを送ってもらいそれで探したりしました。

転勤後は、これまで以上に忙しくなるそうです。
家族や友人のフォローが届かない場所で、彼が耐えられるか…。

最初は東北のためにと意気に燃えていました。
しかし今は、もう限界かも知れないと言っています。
僕は、過労死しないか、鬱病にならないか、それが心配です。
死ぬ前に辞めてしまえ、と思うんですが、彼には養うべき子供がいます。

 

大不況で仕事のない人が日本中に溢れているのに、被災地の役所もワオ君の職場も人手が足りなくて悲鳴を上げている。
そして役所の人々やワオ君のような二次被災者とでも言うべき人は、報道されていないだけで、沢山いるはず。
それも東北以外の場所で、僕らも気付いていないようなごく身近で。

しかし政治家は震災がもう終わったかのように、消費税だのTPPだの原発再稼働だの。
先にやらなきゃならねえことがあるだろう?

震災直後に亡くなってしまった人の命は、どんな政治家でも戻せやしない。
でも、二次被災による死者は防がなければならない。
いや、防げるはずだ。
な、蓮舫?
国会議事堂でファッションショーなんぞしてりゃ過労死もしねえだろうが、今や立派な人殺しなんだぜ。


2012.03.09