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三番館へ歩いて考えた “エプスタ編集長による番外編『一枚のハガキ』”への感想
多忙で赤貧でエプスタに寄稿できない日々が続く戦ゴジさんに代わり、
鎌田浩宮が、先日いたく感動した
『一枚のハガキ』(新藤兼人監督作品。豊川悦司、大竹しのぶ主演)
に関する小説とも随筆とも取れない文を、以前この欄に掲載しましたが、
それに呼応して、以前エプスタに
『Cao no Cafeトリビュート小説「天と地の彼方へ」』
http://epstein-s.net/archives/2998
を短期集中連載した著者、ジョオジ・akechi氏が
鎌田の文に対する感想を寄せてくれました。
2人は、NHK-BS『山田洋次が選ぶ日本映画100選』を
かたや東京、かたや奄美大島の空の下で視聴しては
ネットを介して感想を語り合う仲。
それでは、日本映画の構造の根幹にまで語らんとする
ジョオジの文をお楽しみ下さい。
やあ、しろゆき君こんにちは。
(編集部注:ジョオジ氏は鎌田浩昭の事をこの愛称で呼ぶ)
ジョオジ・akechi です。
人生に朝ごはんと映画を。
新しい朝がきた♪
希望のあさだ。
明るい人生はごはんと映画で出来ている。
まだ見ぬ映画についての感想を書け・・というので書きませう。
三番館へ歩いた“エプスタ編集長による番外編『一枚のハガキ』”への感想。
『男はつらいよ』にはキリスト教的な面があるという話は前回したのでここではしない(笑)。
(編集部注:その話題はここ
http://kaihu.blog.ocn.ne.jp/amami/2011/08/post_f13e.html
にて、ジョオジ氏のブログに鎌田が書き込み、さらにまたジョオジ氏が書き込み返答するといった形で語られている)
一枚のハガキは一粒の麦からきているように思える。
フランスの小説家、アンドレ・ジッドが『ヨハネ伝』の第12章24節のキリストの言葉からとった「一粒の麦もし地に落ちて死なずば、ただ一つにてあらん、死なば多くの実を結ぶべし」
『父と暮せば』(黒木和雄監督作品。原田芳雄、宮沢りえ主演。鎌田も大好きな作品)の父が孫の誕生を期待したように、一枚のハガキは焼けて実りをもたらす。
“六平直政演じる中年男がまるで泰ちゃんのようなのだ。”
この中年男と泰ちゃん演じる裸の島の夫の妻があんなに美人なのは、寅さんとマドンナの関係の延長腺上にあるのだ。
この映画全体が”なんだかのどかで滑稽”であることにも関係なしとはしないと言えなくもないのダロウ。
ムズカシイことはこの映画をまだ観ていないのでここでは述べない(笑)。
『裸の島』(新藤兼人監督作品。殿山泰司、乙羽信子主演)同様にこだわった天秤棒を担ぐ夫婦。
裸の島でナゼ、井戸を掘ってポンプを作るなどの工夫をしなかったのか?
という疑問に新藤監督は、実の母から学んだ「一歩一歩の思想」について語っている。
それはひとつひとつに水をやる心だというのだが、実はよくわからない。
便利さを追い求める現在の合理思想に対する暗黙の批判なのだろう。
NHKで放送された『100年インタビュー 新藤兼人』という番組の最後に新藤監督は、百年後の日本に対し、日本人に対し妻(夫でもいいのだろう)を愛せよと言っていたと思う。
キリスト教の隣人愛に通じることだろう。
新藤監督は、こどもの頃、働き詰めの母がくれる干し柿のおやつが気にいらないと言っては母をいじめる。
殴られるまま、蹴られるままに、我が愛する子の気が晴れるまで笑顔で耐える母。
風呂にも入らず寝てしまった自分を風呂に入れ、洗ってくれた母の気持ちを死ぬまで気づけなかった自分を振り返る。
そして母は嫁に来て楽しいことがひとつでもあったのだろうか?と母の死後、自問自答している。
この映画を観る上で大事なポイントだろう。
『母べえ』(山田洋次監督作品。吉永小百合主演)は、臨終の床で「天国で父べぇに合えるね」と励ます次女にきっぱりと「この世」でなきゃ意味がないと言う。
『モナーク三軒茶屋410』(西山亮監督作品。鎌田浩宮主演)のインテリ青年は、妻よしこのおかげで生きている。
井の中でグローバルな思考の青年は、妻が買ってきたおやつをこんなものが食えるかっ!と言って付き返す。
妻は文句も言わず笑顔で「だって一個59円だよ」と、きのうは食べていた夫を合理的、論理的にさとす。
よしこさんは青年がおやつを食べるまで見て見ぬふりをする知的なやさしさをもっているのだった。
一方三ヶ月後に知り合ったりんだにも食べさせてもならいながら、青年は暴力こそふるわないもののモナークな屁理屈でいじめる。
りんだは最後は箸を折って暴力的に青年の屁理屈をさとす。
いずれの場合にも青年は、妻に甘えながら妻の心を理解できないまま次々と女を替えていく。
そして、屁理屈ばかりで、相手を理解できず、ともに「一歩」を踏み出せないでいた青年にある日、電気料金値上げの知らせる一枚のハガキが配達される。
やがてそれが青年を奮い立たせ、ハガキを燃やすことを決意させるのだった。
日本映画これまで果たそうとして果たせないでいるこの問題への深い洞察をコミカルに試みる。果たして…。
日本社会は、とうの昔にこの軽さがわかる時代になっていたのだが。
新しい朝は毎日やってくる。