「魔法使いのLesson」監督、倉田ケンジに訊く。③

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遂に倉田ケンジ監督へのインタビューも、最終回。
皆さんも、倉田監督に聞きたいことがあったら、
どうぞエプスタまでお便り下さいね。
トップページ右上の[contact」からアクセスしてみてはいかがでしょ。

【あらすじ】
すべての女性が持っている「魔法のちから」。
まだまだ少女なOL「さやか」。 受け継いだ古本屋を嫌々営む「千歳」。
日常のアレやコレ、ムダに過ごしてきた月日、そして誰かのせいで、
いつの間にか「魔法」を失ってしまったと夢想する、ふたりの女性。
そんな接点もないふたりは、[INES SECRET]に出会い、
幸福と疑問と不思議に満ちた、新世界を歩み出す。
女性ならば誰しも必ず秘めている「魔法」(自分を輝かせる力)を
取り戻すまでの、 自分を、人生を、幸せにしてあげる、
イネスと共に歩み出すハートフルストーリー!
 
【キャスト】
さやか : 谷村美月   千歳 : 星野真里
加藤慶祐  山田ルイ53世  福田響志
平野勇樹  宮地真緒  イネス・リグロン  他
 
原案 / 脚本 / 監督:倉田ケンジ

ということでして、以下のサイトにて
6月30日まで無料で観る事ができます。 
 
[ドコモ動画特設サイト](※スマートフォン配信も同時配信)
http://hills-m.jp/docomo/ine/drama/

[魔法使いのLesson 予告編]
http://www.youtube.com/watch?v=asf_87Ejzd4

[ヒルズコレクションチャンネル](※全話随時配信)
http://www.youtube.com/user/hillscollection

[魔法使いのLesson 特設サイト]
http://www.hillscollection.jp/ine/move-d.html

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本作も含め、監督の作品には、いわゆる悪人が出てこない。善なる人々が生活をし、日々を暮らす、そんな作品です。
そこに僕は小津でも成瀬でもなく、「二十四の瞳」などで有名な木下恵介のような世界を素地に感じました。
特に本作は善なる人々のつつましさが、愛おしく伝わってきました。送り手としてはどのように考えていますか?

木下恵介監督とご比較頂くなど、恐ろしい限りです。
今回特に善なる人々を、つつましさを、という感は正直ありませんでした。今作では、というか最近の自身の作品では、周囲の人間から、色々自身で執筆してきたもの達から、偉人から、過去の自分から、教わっている事そのままを出しているだけだと思います。

今回はたまたま悪人が出てきませんでしたが、それは今作テーマの一つでもある「成長」に対し、悪人という人物の存在が適当ではなかったからです。「成長」に対し、仮に「悪」を置くならば、それは成長の足を引っ張ってきた「これまでの自己」となるのだろうと思います。しかしそれは「悪」ではないかもしれません。

もともと悪人の捉え方を、一つの「キャラクター性」として考えたことがないからだと思います。私には、悪人には悪人になる、なった理由、ならざるを得ない事柄が必ずあると考えております。それは別に悪人に対し、常に優しさをもって見つめているという訳ではありません。押し並べて、人間がどのようなものに形成されていくとしても、置かれた環境や何らかの理由があると信じ、キャラクターを創ろうと常に考えてはいます。

そして今回はささやかに一歩ずつ歩みだす女性を、他意なく見つめられるようにと書きました。もっと言うと特異な人間の、特異なお話であってはいけないと私の中では固まっていたのだと思います。それがああいう形になったのだと思います。

またイネスさんの「救済の魂」に共感できたからだともいえます。

 

で、できれば木下作品のように、子役にも今風の生意気な口調はやめさせて、子供らしい口調の台詞にすると、僕にはしっくりと来るのですが、そこは現代の子供を描くためのリアリティを重視でしょうかねえ?

私には口調すら、その人間の人生の理由が関係していると思っております。今回のひろしに関しては、より千歳には腹を割れている、居心地の良さを感じているからこその現代の劇ではあまり見られないような生意気さを与えました。しかしそれは裏返しで、ひろしはだれかれ構わず生意気な口調の少年ではないでしょう。登校拒否をしながらも本屋に居座るという繊細さを持っていた彼ならば。そう僕は捉えておりました。

現代の少年は、より場面場面、対する人によって、その人の年齢によって、口調や話し方、話す内容を切り替えられるようになっていると私は思います。それくらい賢いし、過敏だし、怖いのだと思います。
またひろしの口調は千歳を「暖かく、優しい」存在として表現する側面もありました。

女性スタッフには実はひろしが一番人気のキャラクターでした。それは彼の行動や想いと、口調のギャップにもあったと思っています。 

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今回、音楽の依頼が僕に来なかったのはすんごく残念でしたが(笑)、どんな音楽にしてほしいという要望はあったのですか?

「魔法」「魔法使い」というモチーフが浮かんでからは、それらが違和感ないような楽曲イメージを持っておりました。「アメリ」などの作曲家ヤン・ティルセンのような、トイピアノやアコーディオン、ヴァイオリンなどの楽器音やテンポなどでしょうか。そして落ち着いてはいるけど、大人のおとぎ話のテイストを無くさない可愛らしさをお願いしました。本当に短い期間での作曲依頼となりましたが、加藤久貴さんにはしっとりした女性の為の音楽を頂いたと思います。またクラシック音楽の基盤を持つ加藤さんの音楽は品があり、女性を美しく見せる要素も備えていたように思えました。それは驚きでした。 

 

配信後、様々な感想が寄せられたと思います。印象に残った感想や意見はありましたか? 

本当に多くの方々に有難い感想を頂きました。
本当にありがとうございました。
今回は初めてと言っていいほど、見て欲しい方々を限定して描いたつもりでした。それは女性に対してでした。ですので女性からの多くの感想は非常に嬉しかったです。特に普段から映画などをよく観ているわけではないという方などからも「良かった!」「心がほっこりできました」「泣けました」と言って頂けた事は本当に有難かったです。「千歳になりたい!いや星野さんになりたい!」という感想もありました(笑)。
まったく派手さのない、ストーリーも謎めいていたり、事件性もない、短い物語でしたから、正直全話を追ってみて頂けるかは不安でした。しかしそれらの心配とは異なる感想を頂けました。また女性に対してのメッセージとして描いたつもりでしたが、男性の方からも「男にだって魔法はあるんだよ」など、温かいメッセージを多く頂きました。

一重に、素晴らしいキャストとスタッフの方々の「魔法」のお陰でした。
頂いた感想は関わった人間全てへのご褒美となりました。
このような連続ドラマ形式のモノを今後創る機会が私に訪れるかは分かりませんが、長い時間を観て頂く方と共有できる映像作品はいいなあとつくづく思いました。 

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最近のエプスタは「魔法使いのLesson」へのアクセスが急増しています。
最後に、読者の皆さんにメッセージをどうぞ。

本当に感謝するばかりです。
私なりの、ささやかなものではありますが、真摯に生きる人々への「応援歌」でありたいと想って創りました。登場する「さやか」「千歳」のように、諦めず、一握りの砂粒程度でも一日一日自身を更新していく、そんな前向きな気持ちを持って頂けましたら本当に幸いです。
「魔法」は何処にでもあるし、いつも内にあるものなんだと思います。
どうかご自身を大事に日々をお暮らし頂けましたらと思います。
私は今後とも映画に人生に精進して参ります。
ありがとうございました。
 

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2011.05.30