第三十四話「オムライス」

文・鎌田浩宮

 

 

物理学者の雨宮(岡田義徳)は、ある雨の夜、めしやで出会った韓国人女性のレイことユナ(コ・アソン)と親しくなる。雨宮のために、マスターからオムライスの作り方を教わるユナ。やがて二人は結婚を考えるほど真剣になっていく。だが、雨宮の親は結婚に反対。実は親の借金返済のために日本で働いていたユナは、返済を終えると、雨宮に置手紙をしてソウルに帰国してしまう…。 (公式HPより)

 

 

研究者の、恋

 

この回もよかった!深夜食堂の中で1番好きな「タマゴサンド」を思い出す。大好きな「男はつらいよ」でも、中村雅俊や沢田研二演ずる朴訥な青年が、高嶺の花に恋をし、それが成就する。観客は、心からそれを祝福する。

父や母であれば、甥っ子を祝うような、子供の頃の僕だったら、あんな恋がしたいなあとうっとりするような。家族皆がにこにこして、笑顔が収まらないまま映画館を出て、おいしいものを食べて家に帰る。何物にも代わりがない、映画ならではの幸福。

この回「オムライス」には、それがある。この若い女性は、コリアンという事で差別など受けていないだろうか。キャバクラで客や同僚から馬鹿にされたり、からかわれたりしていないだろうか。心配になる。

 

 

一方朴訥な研究者には、人を色眼鏡で見る心がない。彼は自然現象の中にある、真理を探究する仕事をしている。そのためには、色眼鏡なんぞ邪魔なものでしかない。そんなものをかけていると、真理は見つからない。

真理を追い求めるために、お店へ通い続ける。

韓国へ行ってしまう事もすごいのだが、両親から断られても、両親が営みその女性が働く飲食店へ通い続ける。僕だったら、韓国まで行く勇気があっても、両親に断られたら、そこでもうあきらめるだろう。しかし、若き研究者は違う。あきらめることは、彼の信念と反する。あきらめては、真理は見えてこない。

「タマゴサンド」で2人は悲恋に終わるが、「オムライス」は表裏一体の表を行く。大好きな「木更津キャッツアイ」のうっちーが、主役を張ってブラウン管を揺るがす。(我が家は未だにブラウン管)そしてこれからも、揺るがせてほしい。




2021.01.02