「魔法使いのLesson」監督、倉田ケンジに訊く。②

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はい、好評配信中の連続ドラマ動画
「魔法使いのLesson」の原案・脚本・監督を務めた、
我等がエプスタ参加者・倉田ケンジへのインタビュー、第2回です。

まだ観ていない人、こちらをどうぞ。
 
【あらすじ】
すべての女性が持っている「魔法のちから」。
まだまだ少女なOL「さやか」。 受け継いだ古本屋を嫌々営む「千歳」。
日常のアレやコレ、ムダに過ごしてきた月日、そして誰かのせいで、
いつの間にか「魔法」を失ってしまったと夢想する、ふたりの女性。
そんな接点もないふたりは、[INES SECRET]に出会い、
幸福と疑問と不思議に満ちた、新世界を歩み出す。
女性ならば誰しも必ず秘めている「魔法」(自分を輝かせる力)を
取り戻すまでの、 自分を、人生を、幸せにしてあげる、
イネスと共に歩み出すハートフルストーリー!
 
【キャスト】
さやか : 谷村美月   千歳 : 星野真里
加藤慶祐  山田ルイ53世  福田響志
平野勇樹  宮地真緒  イネス・リグロン  他
 
 
[ドコモ動画特設サイト](※スマートフォン配信も同時配信)
http://hills-m.jp/docomo/ine/drama/

[魔法使いのLesson 予告編]
http://www.youtube.com/watch?v=asf_87Ejzd4

[ヒルズコレクションチャンネル](※全話随時配信)
http://www.youtube.com/user/hillscollection

[魔法使いのLesson 特設サイト]
http://www.hillscollection.jp/ine/move-d.html 

それでは、観てから読むもよし、
読んでから観てもよし、お楽しみ下さいね。

  

本当に、バラエティに富んだ役者が集まりましたね。

では、具体的にそれぞれの俳優の印象や、また、何か撮影時のエピソードがあったら教えて下さい。

さやか役の谷村美月さんは本当に穏やかで聡明な方でした。
ですがスイッチが切り替わるように役柄に入る瞬間は、本当に見事でした。実際、さやかは大人しく、派手さの打ち出しにくい、難しい役柄でした。しかし気弱で、夢見がちで、自信を持ちにくい女性であるさやかであってもちゃんと芯のある女性として谷村さんには演じて頂けました。
向井クンへ送るさやかのラストの視線にはこちらがよろめきそうになりましたね(笑)。

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千歳役の星野真里さんには驚かされ、毎度笑わせて頂きました。
脚本の読み込みと、演出の捉え方、表現には監督として唸るものがありました。1伝えると10で返されて来ますから、毎度期待せずにはいられないものがありました。また向井クン、ひろし、ゲーテ尾崎、ユキちゃん、マナちゃんなど、千歳は多くの人物と会いますが、その都度表情や接し方が変わるのがものすごくリアルでしたし、人との真の対話ができる千歳として映ったと思いますし、それらが男女どちらからも愛される千歳になれたのだと私は思っております。
今後も私の作品に出演頂きたいものです。叶うならば。

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向井くん役の加藤慶祐さんは非常に男前な方ですが、彼曰くバリバリイケメンの役柄はあまり得意じゃないんですと言っていました。その通り加藤さんは非常に好青年であり、どこかファニーな空気も出せる素晴らしい俳優さんでした。スタッフの皆からも愛され、それが今回編集を担当してくれた方にも強く伝わり、愛すべき「向井クン像」が映像に出ていたと思います。特に十三話の記念撮影シーンなど(笑)。

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最後に、ひろし役の福田響志くん。
彼とは以前別の作品で出会ったのですが、彼の演技力と、マジメに取り組む姿に私が惚れこみ、今回かなりムリを言って出演頂きました。なのである意味当て書きをしていたかもしれません。福田くんは優等生の役柄が巧いのですが、今回は悪ガキ的ニュアンスの少年をやってもらいました。彼も苦心したようでしたが、ある意味千歳と向かい合える「ひろし」になれていたと思います。そして彼の笑顔には現場中、本当に救われました。 

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僕は特に、髭男爵の山田ルイ53世がいい演技だなと感心しました。

彼にはかなり演出を施したんですか?

ええっと、いいえ(笑)。
というか、ルイさんの佇まいが非常に美しかった事と、それが不思議なキャラクターである「カエルさん」にハマっていましたので、あまりゴテゴテと付属させないようにしました。その際他のキャストに演出を付け、ルイさんには「穏やかに笑顔でいてください」と伝えたら、
「監督、ぼくにもなにか さ ず け て く だ さ い !」
と言われ、困りました(笑)。ルイさんの演技と空気感は素晴らしいものと感じております。今後も私の作品に出て頂けたらと願います。 

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劇中に出てくる星野真里演ずる千歳の祖母の写真、実は倉田監督ご自身のおばあ様だそうですね。

相当に思いがあるのではないでしょうか?

この作品依頼の直前に、私には唯一だった祖母が亡くなりました。なので多分、強く脳裏に残っていたのでしょう。だから自然と脚本に祖母ネタが込められていったのだと思います。
千歳の祖母の話は実話や創作がかなり交じり合っているものですが、千歳のモノローグ(千歳の場合:十話)にあるおばあちゃん像は全て私の祖母のお話です。いつも着物を着て、長い髪を結っておりました。謙虚で、洗練され、誠実な方でした。だから何かの形で凛とした女性であった祖母を残したかったのだと思います。それで祖母の遺影を故郷から借りてきて登場させました。

このお話は千歳役の星野さん、祖母・近藤夏役の宮地真緒さんにも伝えました。それらは深く理解してもらえ、モノローグの語りや眼差しに籠めて頂けたと感じております。

また女性にとっての祖母という存在は、男性のそれとは何か根本で違うように以前から感じておりました。答えはまだ見つかりませんが。
その辺りからイネスさんとは異なる意味で「導師」の位置づけとして配置しました。

 

「例えば鬱で苦しんでいる人にぐいぐいと頑張れと励ましても、それはつらくなるだけ。今回の、希望に励む主人公2人にも同じことが言いたいんだ」というようなことを、以前おっしゃっていたように思うのですが、今回描いた主人公への思い入れはいかがなものだったのでしょうか?

イネス・リグロンさんもまたDVDの中では「頑張って」という言葉は使われておりましたが、もっと根底からの「支え」「信頼」のよな女性に対する慈愛のメッセージが「INES SECRET」には籠められておりました。
私もまた「頑張って」という言葉は好きですが、場合によっては強すぎる言葉や念のようにも思います。頑張っている人に「頑張れ」ほど酷く、苦しめる言葉もないともやはり思うのです。
また「頑張って」は遠い印象の言葉にも感じます。理解なく伝えるような、身勝手な言葉にも。だから今回は人生を「頑張っていなかった人」が「頑張る」話ではなく、頑張っていたが「頑張り方がちょっと合っていなかった人」が「自分に合った人生の歩き方を見つけよう」とする話でありたいと思いました。

また、より近くから、傍らで、瞬間的にでも他者を深く理解して、応援したいと思いました。それが今作で成功しているかは分かりません。
ただ、私なりの、人々への「支え」であれればと思って描きました。

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インタビュー、最終回へ続く…。


2011.05.23