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第三十話「年越しそば」
文・鎌田浩宮
今日は大晦日。マスター(小林薫)はいつもより早くに店を開ける。マスターの店で年を越したい常連客がいるからだ。忠さん(不破万作)、マリリン(安藤玉恵)、小道(宇野祥平)、金本(金子清文)、八郎(中山祐一朗)、そしてかすみ(谷村美月)やキミトシ(高橋周平)。常連客は次々と店にやってくる。年が変わるギリギリになって、ゲイバーで働く小寿々(綾田俊樹)とコウちゃん(吉見幸洋)も合流。みなで年越しそばをすする。
一方、食堂近くの交番では、野口(光石研)、いずみ(篠原ゆき子)、そして小暮(オダギリジョー)がマスターのうった年越しそばを食べながらともに過ごしていた。
皆で迎えた新年。お互いに挨拶しあう常連客たち。乾杯しようとしたそのとき、晴れ着姿のお茶漬けシスターズ(須藤理彩/小林麻子/吉本菜穂子)も飛び込んできた。
そして、ヤクザ者の竜(松重豊)、手下のゲン(山中崇)も現れる。竜は、餅つきの準備を済ませていた。盛り上がる一同。マスターの店で過ごす、かけがえのない時間は続く。
孤独
な
この
国
への
新しい
物語。
21世紀になっても大晦日、お正月は、家族と過ごすという人が、まだ大変多いらしい。
その大晦日に、家庭で過ごすことなく、なじみの呑み屋にしか居場所がないというのは、よく考えると、とても寒々とした話だ。
毎晩のように通っている酒場に、何も大晦日まで行くこたぁねえじゃねえか。
でも、でもさ、家に帰っても、きっと独りなんだよ。
自分でストーブをつけない限りは底冷えのする部屋じゃあ、自分で湯を沸かして、そばを茹でる気にもなりゃあしねえ。
…と、ここまで書くと、正にこの国が抱える孤独を絵にしたようだ。
赤ん坊から年寄りまで、ひとりぽっちの孤独に満ちている。
幼い子は今夜も保育園、若者は非正規雇用で大晦日もアルバイト、核家族では虐待があり、独居老人のゆうめしはコンビニ弁当ってな具合だ。
でも、だ。
深夜食堂に大晦日集う人々は、何だか嬉々とさえしている。
ここがまるで、自分のふるさとの実家のように。
都会でも田舎でも、家族が、コミュニティーが、崩壊していると言う。
おまけに経済まで崩壊だって。
でもってヘイトスピーチに溢れ街中がギスギスしてるんだって。
あのさあ、深夜食堂に集う人々の中に、アベノミクスの恩恵とやらを受けて、儲けている人はいるかい?
そうだよ、カネなんか一握りさえあれば、幸せになれる人たちばかりなんだよ。
ヘイトだって、ありゃあしない。
ヤクザもいれば、オカマも、ストリッパーも、売れ残りのOLも、雑多な人々が共存しているんだ、見事なもんさ。
こうして30話までを観返してみると、これは、古くも新しいコミュニティーの形を描いた物語だったんだね。
孤独なこの国に、新たなコミュニティーを築くには、どうしたらいいのか。
カネにもヘイトにも寄りかからない、そんな新しい生き方はないのか。
このドラマを思い出す時、そんなことも思い浮かべてほしい。
古くって、新しい物語。
それでは、映画で再会しましょうね。
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