私の2017年の十大ニュース 大友麻子編

文・大友麻子
一部写真/映像・鎌田浩宮

 

 

おい、あれ見ろよ。
2017年だぜ。
手が届かないな。

 

 


あゝ、2017年。
エプスタの、新春恒例企画。
社会の出来事と、自分の出来事を、ごっちゃに混ぜてランク付け。
若松孝二監督や塚本晋也監督の作品にてラインプロデューサーなどを務める、大友麻子が選んだ、この年の世界の十大事件です。

 

 

at Gakushi-kaikan,Jinbocho TOKYO 2017-4-22

 

10)トランプ大統領就任
全体的に、「俺たちの社会、よそものが邪魔してるんだよな!俺たちファーストだよな!」な世界の潮流を体現している、ドナルド・トランプ米国大統領の誕生であった。金正恩総書記が「俺のテーブルには核のボタンがあるんだぜ!」と発表すれば、「俺のはもっとビッグで強力だぜ!」とツイートするという、こやつらの手の下に世界を破壊するボタンがあると思うと、暗澹たる気持ちになるのであります。

 

 

9)モリカケの本質、未だ見えず
渦中の森友学園の籠池夫妻は未だに長期勾留中のまま。値引きの理由となった地中のゴミ撤去費用についても、官僚主導で過大に見積もろうとした、「値引きありき」の会話データが公開されてもなお、問題が明らかになりません。値引きは妥当だったのか否かという単純明快な問題が、なぜここまで複雑怪奇に引っ張られるのか、理解できない。
加計学園の獣医学部新設や補助金についても、安倍首相の友人・加計理事長がなぜ一度も表に出てこないのか、謎すぎるのです……。

 

 

8)金正男殺害
空港のカウンターという、とってもオープンなスペースでの、毒物を塗りつけるというとっても大胆な暗殺者たちにびっくりした!!金正日の子どもに生まれてしまったという正男の悲劇を思わずにはいられない……。金正恩は、反対勢力がいつか正男を担ぎ上げるのでは、という疑念からついに抜け出すことができなかったのだな……とか、かの国の総書記の孤独と闇を想像するのでした。

 

 

7)実録・連合赤軍まさかの舞台化
私の若松組初参加作品である『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』。若松監督が私財をなげうって一人で挑戦しようとするその心意気に、思わず「手伝います」と言ってしまった作品だけに思い入れもひとしお。監督とともに悩みながら、当事者の話を聞きながら、俳優さんやスタッフのみなさんと泥だらけになって作ったあの作品を、若松プロが舞台化するという。最初は期待半分、いやいやいや〜という気持ち半分だったのが正直なところだった。乗りかかった船、と制作のお手伝いをしながらも気持ちは不安でいっぱい。しかし表現というのは、時にすごい奇蹟を見せてくれる。
最初に舞台化を相談したのは、映画「レンセキ」で大槻さんを演じた唐組の看板女優である藤井さん。彼女の口から出てきたのが気鋭の演出家シライケイタさん。不思議なご縁で繋がったシライさんが、スペース雑遊の小さな空間に連合赤軍の若者たちの魂を再び蘇らせてくれた。拝見したゲネプロで映画とは違った衝撃に胸をつかまれた。会場整理のお手伝いをしながら何度も見せていただいた。この瞬間だけしか存在しない彼らの姿をまぶたに焼き付けようと思った。千葉刑務所の吉野さんに手紙を書いた。もう一度、こんな形で彼らに再会できるとは、夢にも思っていなかった。

 

 

 

6)都議選躍進の都ファ、衆院選惨敗の希望、そして民進崩壊
都議選では、小池百合子氏率いる「都民ファースト」が驚愕の躍進。その勢いのまま「希望の党」として突っ込んだ国政選挙では、「希望」の勢いにあやかろうとした民進が情けなくもヘロヘロと崩壊していく。そして「踏み絵発言」から一気に潮目が変化。沈黙を続ける地元の長妻さん(民進)に「希望に合流するなら、もう応援できない」メールを送っていた私はハラハラ見守った。そんな声が多かったことと思う。立憲民主としての再出発に、とりま胸なでおろす。

 

 

5)共謀罪成立
何度も廃案になっていた「共謀罪」が「テロ等準備罪」と名前を変えて成立してしまった。「悪いこと考えないんだったら恐ることないじゃん。よからぬことを考えてるから反対するんでしょう」という人が少なくなくてゲンナリする。それは、道を歩いていて、「やましいことないんだから、カバンの中身を全てここに見せなさい」というゆきすぎた職務質問と同じ。準備段階で罰するという規定ができるということは、準備の情報を得るための情報収集の横行を許すということに他ならない。悪いことを考えないからプライバシーは守られなくても構わない、という人はいないだろう。人にはプライバシーを守られる権利があるのだ。

 

 

 

2015年7月25日、渋谷ユーロスペース「野火」初日舞台挨拶にて。1番右が石川忠さん

4)石川忠さん突然の訃報
年末に突然飛び込んできた訃報の衝撃。その少し前に「生死の境をさまよってましたが生還しました」のご本人のfacebookの投稿を拝見して、ご病気だったんだ!でもお元気になったんだ!と思ってたばかりのところだった。2017年は「野火」で素晴らしい現場をご一緒させてもらった塚本晋也監督が時代劇の新作を撮られたとかで、塚本作品の音楽といったら石川忠さんなくして考えられないのではと思っていたから、いろいろな意味で、本当に、世界は喪失であふれていると再認識した。周囲にも、婦人科系のガンや白血病や、とにかくいろんな病を発症する人たちが増えてきて、ますます生きることの切なさを思う。

 

 

3)母の猫、アントンが瀕死の状態から奇跡の生還
多くの方が病に倒れていく中、年老いた我が母の最愛の同居人である猫のアントンが、今年の夏にいきなりご臨終のような状況に陥った。すでに18歳、老猫だし、お別れはそう遠くはないかもしれないと思っていたけれど、あまりの急展開に母も取り乱すし、電話を受けた私も母の心中と今後を思って動揺。しかし、猫をこよなく愛する友・カマチョが夜中に自転車をかっ飛ばして母のところに駆けつけてくれて、まずは母が落ち着きを取り戻す。すると、あら不思議、アントンがもちこたえてくれた。数日は寝てばかりだったが、十日も経つ頃には自分でご飯を食べてトイレに行き、一ヶ月後には、じゃれ回って階段を駆け上り駆け下りるまでに。生命の力は神秘だなあ。

(編集部注:愛猫が生死を彷徨っているのに自転車を20分漕いで駆け付けるのはどうかと思い、鎌田は急いでタクシーで向かいました…)

at Non’s house,TOKYO 2015-9-1

 

 

2)ラスベガス銃乱射、ロシア地下鉄、イギリスコンサート会場、
エジプトモスク、トルコナイトクラブ、世界各地で続くテロ

世界各地でテロが相次ぐ状況は変わらない。どんな厳しい法律もテロの抑止力にはならないのだと痛感する。やっぱり中立こそが一番の安全……とヘタレの私は思うのでした。

 

 

2013年3月9日、テアトル新宿「千年の愉楽」初日。館内の写真展

1)若松プロ始動
やや宣伝くさくなりますが、若松プロが若松孝二監督亡き後、久々の新作に取り組みます!「凶悪」「日本で一番悪い奴ら」「虎狼の血」と骨太極太作品を次々に生み出している、若松プロ出身の白石和彌監督がメガホンとりました!去年の夏に撮影、2018年に公開します! 春には主要キャストなどが情報解禁に!
ラッシュを見た時、冒頭「2018若松プロダクション」が出てきた瞬間に、ぐぐっといろんなものがこみ上げてきたのでした!乞うご期待!

 

 


2018.01.14