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第二十四話「紅しょうがの天ぷら」
文・鎌田浩宮
「すんません」
「おおきに、ありがとう」
の、人たち。
恋わずらいにかかった常連客の小道(宇野祥平)。その相手は店にときどき顔を見せるかすみ(谷村美月)だ。かすみは浪速娘であること以外、素性のわからない謎の女である。
ぞっこんな彼女に気に入られようと大阪名物を奢る小道だが、かすみはすげない対応。困った小道は、大阪から東京に進出してきたドラッグストアチェーンの社長、井出(荒谷清水)に助太刀を頼む。
二人と同席したかすみが天ぷらにしてほしいとマスター(小林薫)に頼んだのは、紅しょうがだった。紅しょうがの天ぷら、略して「紅天」。マスターも小道も知らなかったが、かすみと井出にとっては大阪で親しんだ庶民の味だった….
(公式サイトより抜粋)
恰好
つけない、
冷たく
ない。
僕は先日、自身の制作した映画「鎌田浩宮 福島・相馬に行く」の舞台挨拶で、2週間も大阪にいたんであった。
とにかく、食べ物が旨い。
お好み焼きもラーメンも旨いが、安くて旨くてしかも作り方が丁寧なのが、立ち食いうどんであった。
例えば、関東の立ち食いでカレーうどんを頼むと、いつもの汁に、店で出すカレーライス用のルウをかけて出してくる。
なんと、安直なんだろう。
これが不味くって不味くって、嗚呼、900円出してもええからまともなカレーうどんが食いたい、と嘆くんである。
これが関西の立ち食いだと、まず、小鍋に1人前のつゆを入れ温める。
そこに油揚げの刻みを入れ、茹でる。
店によっては、そこに玉ねぎの千切りや、ばら肉を入れてくれる。
そこに、カレー粉を入れる。
店によっては、カレー粉を溶いた液状のものを入れる。
そこにうどんを入れて完成、なんである。
これじゃあまるで、ちゃんとしたうどん屋と、作り方が一緒じゃないか。
僕は感激しまくりしまくら千代子で、何度も通っては違ううどんを頼んだ。
ハイカラうどん、昆布うどん、かすうどん。
で、たまには有名なうどん屋へ行こうと、とある人気店を訪れると、「とんがり君」という人気メニューがあり。
これが…初めて、口に合わなかったんである。
これは体がホカホカするようにと、しょうがの天ぷらに豚ばら肉、一味唐辛子が乗ったうどんなんだが、生まれて初めて食べたしょうがの天ぷらというのが、関東の僕にはどうにも駄目だったんである。
なんで、こんなもんを、天ぷらにしてしまうんだろう。
最初で最後、関西の人の味覚を疑った。
でも、深夜食堂の常連さんは、美味しいと言っておすそ分けを頬張っている。
僕はオカマの小寿々さん派。
もう2度と進んでは、口にしないぞ。
大阪も、
悩む。
東京も、
悩む。
こうして、関西に合う、合わない、がある訳だけれど、関西の人ってこの回に出てくる社長のような人ばかり、と思ってやしないだろうか?
20代の時アルバイトで一緒だった関西の青年は、暗かった。
必要以外喋らないし、手ピストルでバンと撃っても、絶対にボケてくれない様子だった。
関西だからって、悩む人もいれば、自殺する人だっているのだが、うっかりこういったステレオタイプの関西人しか浮かばない人、多くないかい?
どこのお店に行ったって、つまようじをくすねる客もいなけりゃ、同伴にご馳走をねだる人もいない。
大阪は難波のマルイと高島屋に、ヴィヴィアン・ウエストウッドの店舗が入っていたので、覗きに行った。
そこの販売のお兄さんとの話題は、「どこのお好み焼き屋がお勧めか?」だった。
ヴィヴィアンだからって、全然気取ってないんである。
そのお兄さんと一致したのは、東京の方が冷たい人、多いんじゃないか、ギスギスしてるんじゃないか、ってこと。
彼が東京へ行った時、道すがら傘がぶつかっても謝らずに通り過ぎて行くのは、びっくりしたと言う。
うんうん、東京じゃあ当たり前の風景だ。
大阪では、どんなお好み焼き屋でもうどん屋でもラーメン屋でも「すんません」と客が言いお勘定を済まし、店員が「おおきに!ありがとう」と言って見送るんである。
関西だって、関東だって、いろんな人が、いるんである。
自分が捨てた女の娘に惚れて口説く「阿呆」も「馬鹿」も、いるんである。
そんな悲劇が、カラッと揚がった天ぷらのようにさらりとしたドラマになるのは、大阪人の気取らない人情だからだろうか?
東京にはかつて「男はつらいよ」のような、江戸前の人情があったのに、どこへ行ったか、見失ってしまったね。
人情こそが、写メで紅しょうがの天ぷらを送り続させるのでしょう。
今回の主役を演じた谷村美月は、前シーズンまで対談をしていた倉田健次監督の「魔法使いのLesson」の主役でもあった。
関西弁が上手いのは、大阪出身なんだね。
演技が上手くなっていて、嬉しかったよ。
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