第二十三話「里いもとイカの煮もの」

文・鎌田浩宮

マスター(小林薫)のつくる里いもとイカの煮ものの匂いに誘われるようにやってきた二人、興信所に勤める「男前」の探偵、里見けい(石橋けい)とまだ頼りない研修生の佐々木守(淵上泰史)。二人は、店を出たあとで一夜をともにする。佐々木は大人の割り切りを知らず、けいに結婚を前提につきあってくれと言うが、けいはそれを軽くいなす。
社員になるための卒業試験として、けいの指示した浮気調査に取り組むこととなった佐々木。その調査対象である吉野純一郎(古舘寛治)を尾行する中で、思いもよらぬ事実を知ることとなる。里いもとイカのように相性がよく、どうしようもなく惹かれあってしまう男女….調査を進めながら、佐々木は「男」になっていく。
(公式サイトより抜粋)

「強くならなきゃ、生きてこれなかったんだろ?」

そうか、だから東京には、ギスギスした人が多いのかな。
強くないと、生きていけなかった人達。

大人だけじゃない。
子供の頃から、僕はそういうところがあった。
悪いことでも、良いことでも、クラスで1番目立ってやろうと思っていた。
反論する者を、容赦なく論破した。
大人になっても、弱い奴は馬鹿だと思っていた。
あらゆる集団や組織の中で、抜きん出たリーダーシップと自我を、発露すべきだと思っていた。

でも、46歳になった今、僕も、周囲の人も、そういう人はとても少なくなった。
そういうアイデンティティーの防御と発露は、愚かなプライドが成せるものだと気づいているからだ。

年齢でいうと、30歳の成人式を越えたぐらいから、そういった肩で風を切る生き方をする人は減っていくんだけど、僕の場合は、311の影響が、強い。

311をきっかけに、息子同然だった愛猫が亡くなり、その時、そしてその後、寄り添ってくれた、僅かな親友。
僕の苦しみを理解してくれる人は、意外に少なかった。

彼らに感謝の気持ちを表す時に、強さなんか、いらない。
頭を下げられるだけ下げて、ありがとうと伝えても、まだ、足りない。

今は、どうやったらお返しができるのかを、考える。
そして、僕もそんな無我の人になれればいいなと、人に寄り添える人になれるようにと、願っております。

強くならなくっても、生きていける世界。
それって、素敵な世界じゃないかい?




2014.11.11