"戦闘的ゴジラ主義者による"、現在ロードショウ館、二番館でかかっている映画の連載レヴュー。

渥美清こもろ寅さん会館にて「男はつらいよ・寅次郎わが道をゆく」35㎜フィルム上映

文・鎌田浩宮
動画撮影・清水mimo見守
写真・大島Tomo智子/鎌田浩宮
パンフレットデザイン・名小路naco雄

信州の人も敬遠する
小諸の冬の寒さ。
さあ、
お客さん、
来るのかなあ…。

 

 

小諸市
の、
CM。

 

のっけからなんなんですが、小諸市が移住者募集キャンペーンをやっていて、そのCMがなかなかいいんです。
ココトラ代表・一井正樹も人力車夫として出演してます。
ご覧下され。

いつものように、上映の前、小諸へ向かう。
あの悲しいバス事故があったルートに近づいたので、心の中でそっとお悔やみを唱え、黙祷する。
暖冬のせいか、この辺の山々は白銀の雪景色、とまではいかず、うっすらと白くなっている山々が、美しすぎる。

 

小諸では
珍しい
ビラ配り。

 

事故の影響か、いつもより若干少ない客を乗せたバスは、夜6時半小諸に到着。
僕の呼びかけで、ココトラのメンバーが数人駅前に集まり、明日の上映のチラシ配りを始める。
その中にはココトラを退会した人まで来てくれ、暖冬とはいえ決して暖かくはない中、白い息を吐きながら行きかう人へチラシを配る。
勝手なイメージからすると、田舎の人はむげに断らずチラシを受け取ってくれそうなものなのだけれど、実際は半数くらい、受け取りを拒まれる。
「すいません」
と言って断られるのはこちらも清々しいのだけれど、無言で通り過ぎられると、僕らも心が折れそうになる。
チラシ配り自体が小諸ではが珍しいから、受け取りにくいのかな?
信州の人は、シャイなのかな?
都会の人のように、心に余裕がないのかな?

それでも、ほんの数人ではあるけれども、
「上映会、知ってるよ。頑張ってるね。明日行くからね」
と応えてくれるおじさんもいたりして、つい嬉しくて長話に弾んでしまう。
さあ、明日はどのくらい来てくれるかな?
とにかく、冬の小諸は寒いからなあ。
最低動員数を更新しちゃうかもなあ。
手が、かじかんできた。

 

渥美さん

くれた、
真冬
の、
映画
日和。

 

上映会当日は、天気予報で何度も叫ばれたように、全国的に南風が吹き荒れ、荒天になるらしかった。
だけれど、小諸は風も穏やかで、冬にしては暖かく、正に映画日和。
渥美さんが空の上から、守ってくれたのかな?
ありがたい…。

昼11時45分に集まったココトラのメンバー約13名、実は僕も含めてけが人や闘病中の者がいて、体調が万全でなかったりする。
それでも皆で助け合って、かえっていつもより早いペースで、がしんがしんと会場設営が進んだ。

椅子を場内に運び、飾りつけをし、受付や売店を作り、音響や照明を整え、プロの映写技師さんをお呼びし試写がなされ、たったの約1時間で、映画館を立ち上げるのだ。

こんな飾りつけも、スクリーン脇に施されるんですよ。

特に今月は、会場内を温めるため、メンバー各々がストーブを7台ほど持ち寄った。
先日まで場内の空調が故障していたのもあって、観客の体を冷やさぬよう、ひざ掛けやホッカイロなども用意し、念には念をの入念な準備をする。

数十台も停められる広い駐車場も、雪かきが必要。

1時15分。
小休憩の時間。
メンバーが作って来てくれたおにぎりを頬張り、談笑する、この1日の中で最も楽しい時間の1つ。
明日がバレンタインデーなので、女性のメンバーがチョコを配ってくれる。
その中には何と、手作りのものも。
こんなにチョコをもらったの、何十年ぶりだろう!

開場は2時半と告知してあるのだけれど、2時には既にお客さんが来始め、開場時間を30分早める。
その中には、普段は滅多に来場しない高校生くらいの娘もいたりして、なんだかとってもいい兆し!
僕のことをSNSなどでご存じの方もいて、骨折の治り具合を訊いて下さる。
こうしてお客さんとお喋りが深まり、嬉しいったらありゃあしない。

3時の開映まで1時間も待って下さるお客さんを飽きさせないように、こんなCMも上映。
この上映会「寅さん全作フィルムで観よう会」の前売券(100円お得な900円)を、小諸市内7カ所で販売していますよ、という内容です。

また、場内で無料配布されるパンフレットは、こんな内容なんですよ。
ココトラ代表・一井正樹による解説あり。

また、場内では3月12日封切の山田監督最新作「家族はつらいよ」の前売券が990円で販売された。
これを読んでほしいなと思った方、ご一報下さいね。

こうして、高校生や小学生を含め42人の観客が集まり、上映が開始された。
先月より、若干だけれど、お客さんが増えた。
この寒い中お越し下さった42人の方々を、僕らは忘れてはならない。

木の実ナナをマドンナに迎えた第21作「男はつらいよ 寅次郎わが道をゆく」(1978年)。
冒頭の夢のシーンが「未知との遭遇」のパロディーで、時代背景を知っているとげらげら笑える。
ピンク・レディーの「UFO」「スター・ウォーズ」第1弾の大ヒット。
空前のSFブームだった、あの頃。

 

夢も。
愛も。

 

本編のテーマはずばり「夢の実現か、結婚か」
このテーマ、実は吉永小百合演ずる歌子2度目の登場「寅次郎恋やつれ」でも描かれている。
この時歌子は女性の自立を尊び、生きがいのある職業を求め、障がい児施設の職員になるというもので、山田監督らしい結末が素晴らしかった。
だが今回は、その逆を行く。
ぎりぎりまで迷い、結局結婚を選択しSKDを退団する奈々子の生き方は、山田監督らしくない女性像で、正直、肩透かしで、物足りない。

木の実ナナ自身、デビューしてから売れない時期があり、アメリカへ修行に行ったというこの頃では珍しい「猛者」であり、そうしてスターになっていった。
夢もつかむ、愛もつかむ、両方欲張ったって、いいじゃないか。
と書きつつも、木の実さん自身、実生活では独身ではいらっしゃるのだが…。

 

見返りを
求めない、
兄妹愛。

 

その一方、九州でまたもや宿代が払えない寅さんのために、飛行機ではなく電車で駆けつける、妹さくら。
兄のためなら、無心になれる。
無償の愛情を、注ぎ込むことができる。
見返りを求めない、美しき兄妹愛。

僕には2つ下の弟がいて、去年誤認逮捕、不当拘留をされたことがあった。
芽の中に入れても痛くない弟。
ろくでなしの父のせいで貧しかった子供の頃、頼れるのはお前だけ、と支え合ってきた兄弟。
弟のためならなんだってする、と駆けずり回ったことを思い出した。
僕は上映後、お客さんに伝えた。
無理に仲良くする必要もないですが、もし皆さんに愛する兄弟姉妹がいたら、どうぞその人をさくらさんのように思いやってみて下さい、と。

さあ、来月は3月。
小諸も、暖かくなる。
お客さん、たくさん来てくれるといいな…。


2016.02.14

渥美清こもろ寅さん会館にて「男はつらいよ・寅次郎頑張れ!」35㎜フィルム上映

文・鎌田浩宮
動画撮影・清水mimo見守
写真・大島Tomo智子/鎌田浩宮
ポスターデザイン・名小路naco雄

上映後の
打ち上げは

この映画の話で
持ちきりさ。

 

母と暮せば」は、少し残念な作品だった。
先日、大阪にいる山田洋次ファンと話をしたのだが、同意見だった。
浩二を想い続けている町子が、なぜ新しい人生を歩もうとなったのか、その心理描写が乏しいのだ。
あれほど浩二とその母を想っていた娘なら、相当の葛藤があったはずなのだが、その描写がないため、僕ら観客が感情移入できないのだ。
それは、町子を想い続けていた浩二の心理の変化にしても、同様だ。
あれほど愛していた町子を、「原爆で亡くなった皆の願いだから」と、容易に心境の変化が訪れるとは思えない。
町子同様、相当な葛藤があったはずなのだが、その描写がない。

僕は、震災が遠因で、息子同然だった愛猫を失った。
それから4年以上が経ち、頭では、新しい捨て猫を飼って面倒を見てあげることが供養になると分かっていても、心がそれを許さない。
あの子以上に愛せる子などいないし、あの子以上に愛せてしまったら、あの子に申し訳ない。
そんな僕と浩二の気持ちがだぶり、映画が始まってすぐに涙が止まらなくなったのだが、段々涙は乾いてしまった。
浩二と町子の心理変化に、ついて行けなかったからだ。

小諸の仲間は、どう観ただろう?
我らがココトラ代表・轟屋いっちーこと一井正樹は、山田作品を全部観たわけではないけれども、監督作品の中で生涯心に残る最高の作品だと答えた。
浩二や町子の心の移り具合も、共感できたそうだ。
他にも、終始泣きっぱなしだったというメンバーもいれば、微妙な感想を漏らすメンバーもいた。

それにしても、1つの映画について、熱く語るのは楽しいね。

 

小諸じゃ
カマキリが
教えてくれるだに。

 

それにしても、小諸は寒い。
夜などは、手袋をしていないと手がかじかんで痛くなっちまうし、そもそも東京では、息が白くならない。
しかし、懐古園では梅が咲いてしまったそうだ。
浅間山にも、雪が積もっていないじゃないか。
スキー場は、困り果てているだろう。
暖冬。
異常気象。

でも、大好きな小諸の居酒屋・寅さんで美味しい地酒と肴を楽しんでいると、不思議な話になった。
数年前の記録的な大雪の時、普段は地面近くに巣を作るカマキリが、1m以上もある木の上に巣を作ったそうなのだ。
雪が積もることを予知していたそうなのだが、この暖冬の今年も、高い場所に巣を作っているというのだ。

暖冬だからこそ、ある時、ドカ雪が降る。
小諸の人々は、本気で憂いていた。

さあ、そんな正月の中、お客さんは一体、どのくらい来てくれるのだろう…。

ちなみに、これが2016年上半期の「寅さん全作フィルムで観よう会」のポスター。
キャッチコピーは、5案作り、リサーチをして1番評判の良かったものにした。
街中に、貼られます。
柴又など、都内にも貼ってもらう予定です。

 

新春、2016年1月9日。
晴れた。
寒いけれども。

 

11時45分に集合、朝礼。
円陣を組んで、かけ声をかけて、それから会場設営を開始する。

今回は、僕を含め2人が骨折などの体調不良のため、机やいすを運んだりの力仕事ができない。
限られたスタッフで、どれだけスピーディーに設営できるか。
何しろ、数時間前までは合気道の練習場として貸し出されたホールを、映画館に仕立て上げるのだ。

車椅子で来られる方のための駐車スペースも、手作り。

 ホールの空調だけでは全く暖かくならない。ストーブも灯油も持ち込み。

新春限定、おしるこも100円で売り出す。
お餅の代わりに柴又風の草団子を入れる。

地元のたい焼き屋と提携し、これも売り出す。
いくつ仕入れるか、赤字にならないように。難しいところだ。

小諸という街は、大きくて小さい。協力し合って、宣伝していく。

少しでも赤字を解消するために、街の各所で前売券を販売してもらっている。

かと思えば、「母と暮せば」の前売券も販売する。

正面スクリーンの両脇にも、花が生けられる。

力仕事は任せて、音響とPCプロジェクターのセッティングに専念できたので、僕個人はすこぶる順調に設営できた。
全体の設営も、見事に時間内に完了。
メンバーの1人が、早朝に1升のお米を炊いて作って来てくれたおにぎりを、皆でいただき、舌鼓を打つ、つかの間の昼食休憩。
1升炊くためには、5合の炊飯器で2回炊くそうだ。
僕のように東京から来る者は、昼食をとる時間もないまま会場入りするので、本当に助かるんです。
ありがとうございます…。

 

2時30分、開場!
最初の10分を
見ただけで、
今日の客足が
いいか悪いか、
分かるようになった。

 

渥美さん、倍賞さん、吉永小百合さん連名の色紙を持って来たお客さん。
有難い事にこの色紙は、我々に寄贈された。
渥美清こもろ寅さん会館再開の際には、きちんと展示させてもらいます。

我らがココトラ代表・一井正樹
本当は紋付き袴をレンタルしたかったが4万もするため、
お客さんに笑ってもらえるような扮装にしたのだ。

そんないっちーによる、新年のご挨拶。
拍手、嬉しいねえ。
今年も世の中では、いろんなことが起こるだろう。
そんな中でも、皆で暗闇で、笑って泣いて、を続けていきたい。
そんな挨拶だ。

 

ワット君の、
内なる炎が、
とらやも燃やす。

 

1977年公開の第20作「男はつらいよ 寅次郎頑張れ!」。
当時人気絶頂の青春スター・2枚目の中村雅俊が、真逆の内気で冴えない若者・ワット君を演ずる。
それを懸命に受け止めるのは、撮影当時19歳の大竹しのぶ

ドジだ。
間抜けだ。
タイミングも悪い。
真面目だけが取り柄。
穴があったら、入りたい。
顔から、火が出そうだ。

誰もが、そんな青春時代の恋を体験していないだろうか?
僕は、した。
何度も、した。
そんな、不器用で、苦くて、懐かしくて、抱きしめてやりたいような思い出を、甦らせてくれる映画。

今日のお客さんは、かなり少なめの34人。
でも、せっかくの正月の3連休を、毎月楽しみにしているとお越し下さった方々が、はるか昔の自分を抱きしめてあげる時間にして下されば、と心から願います。
そして、せっかくの新春を、この上映に費やして下さったこの34人に方々を、決して忘れてはならない。

そして一方寅さんは、そんな恋を、子供がいてもおかしくない齢になっても、まだしている。
おいちゃんもおばちゃんも、みっともないねと嘆く。
ただ、さくらと博だけは、温かい眼差しで、寅を見守る。
そんなおじさん、いたっていいじゃないか!

そんなような事を、上映後のアフタートークで喋った。

さあ、来月の上映の頃は、ドカ雪に見舞われてないか。
カマキリ君、教えてくれないかい?


2016.01.10

東信ジャーナルに掲載されました

こりゃあ、まいった。

長野県小諸市にある
渥美清こもろ寅さん会館再開を目指す
私達ココトラの代表・一井正樹が
正月早々、また、新聞沙汰です。

長野県東信地方に配布されている
東信ジャーナル 2016年1月3日号に
掲載されました。

 

「2016年 申年生まれ」という特集ですね。
12歳から84歳まで、いるでよ。

いいなあいいなあ、地元密着新聞ならでは、だ。

 

36歳 一井正樹さん こもろ轟屋人力車俥夫 御代田町
寅さん会館を再開させたい

 

小諸市懐古園の人力車観光ガイド「こもろ轟屋」(小諸市観光協会)俥夫や、コモロ寅さんプロジェクト『いつもココロに寅さんを♪』代表として、小諸市民以上に小諸市をPRしている。
「懐古園で5年間、100万人の観光客を出迎える中で、つくづく小諸が日本一のまちだと感じており、より対外的に発信したい。小諸の魅力は自然、歴史はもちろん、おもしろい人が多い。人の力、結びつきで小諸を盛り上げたい」と語る。
今年の目標は「自ら会社を立ち上げ、引き続き人力車を曳き、観光協会と連携していきたい。閉館中のこもろ寅さん会館を再開させたい。そのため、サルのごとく飛び回る年、節目の年になる」と気合いを入れている。


2016.01.05