"戦闘的ゴジラ主義者による"、現在ロードショウ館、二番館でかかっている映画の連載レヴュー。

渥美清こもろ寅さん会館にて「男はつらいよ・翔んでる寅次郎」35㎜フィルム上映

文・鎌田浩宮
動画撮影・清水mimo見守
写真・大島Tomo智子/鎌田浩宮

 

桜を、見るか。
銀幕、見るか。

 

前日の、金曜の夕方。
高速バスでぶっとばして、やって来た。
途中、釜めしで有名な横川の近くにある、妙義山のグランドキャニオンのようなごつごつの尾根には、樹木の葉のシルエットが加えられ始めた。
春だ。
浅間山にも、もう雪化粧は、わずかしかない。

小諸の仲間と、この連載で何回も書いた、居酒屋寅さんへ。
ここの女将は、渥美清さんとプライベートでも親交があったんだぜ。

そんな女将に、1週間前から予約をしておいたら…こんなに沢山のご馳走を手作りしていてくれた。
手羽先、タラの芽の天ぷら、卵焼き、ポテトサラダ、昆布巻き、酢の物、漬物、ゴボウ、厚揚げ煮たの、豆腐にフキ味噌、粕をかけた鮭、ウド。
〆はたけのこご飯とカレーうどん。
これにビールやら地酒やらで、1人3000円弱。
北島康介の引退となった200m平泳ぎの生中継を観ながら、心もお腹も一杯になった。

小諸にはいい酒場が多々あるが、ここにかなう店はない。

翌朝、懐古園を通る。
女将が言ってた通り、桜はまだ、開花していないのかなあ?
東京ではもう、散り始めてるっていうのにさあ。

今日から懐古園は、桜祭りだ。
咲いていようがなかろうが、晴れていれば祭りは決行だ。
地元有志による太鼓が高らかになり、1年で1番多く観光客も訪れる。
その中の1人でも2人でも来てくれないかと、上映会のチラシを配る。

咲いてる、じゃないか。
懐古園近く。
ソメイヨシノじゃ、ないけれど。
空の青と、色が鮮やか。

寅さん会館越しにそびえる、山々が美しい。
昼12時、会場設営開始。
こんなにお花見日和なのに、映画を観に来てくれる人、いるだろうか不安だ。

今回から昼夜2回上映となる。
両方とも参加するスタッフにとっては、夜9時半頃までの長時間労働となる。
体がもつか?
それよりも食い気が先の僕にとっては、空腹に耐えられるか?

忙しいこの季節、先月に続き、欠席のスタッフが多い。
それでもてきぱきと会場設営をこなせた。
小学6年生の男の子も手伝ってくれた。

手が空いたら外に出て、桜祭りに来た人々へチラシを配る。

約100席のこの椅子だって、階上の椅子置き場からわざわざマンパワーで運んでくるんである。
なんと手間のかかる設営だろう。

昼1時半。
県内外で活躍する人をお呼びし、トークをしてもらうという、今回から始まる新企画「園(その)まち講座」第1回講師の、「千曲の桜並木を生き返らせた男」、NPO法人千曲環境緑化協力会・堀内太一さんがいらっしゃった。
コワモテだけど、話し方は優しく、偉ぶらず、桜並木を愛していることがグワングワンと伝わってくる。

講義中スクリーンに投影する写真の打合せをするが、僕の初歩的なミスで、投影できない。
ココトラスタッフの1人が車で、猛ダッシュで自宅へケーブルを取りに行き、なんとか本番に間に合った。
と言いつつ僕は上映・音響・照明スタッフにもかかわらず、人手の足りない受付も手伝う。
映画上映中、真っ暗闇の場内で、筆記で打合せをする僕とスタッフ。

さて、映画上映の前に、ココトラ代表・一井正樹より挨拶。
つい先日新聞などで、ココトラが寅さん会館再開事業を辞退したことが報道された。
それに対する説明は今日あるのかと、僕も場内のお客様から尋ねられるほどだった。

ついでというわけではないが、夜の部の挨拶の映像も紹介します。

いっちーは故意に話をはぐらかせているわけではないのだが、上映後回収されたアンケートには、
「昔から応援しているのだからもっと詳細を丁寧に説明してほしかった」
という不満が複数書かれていた。
一井君、猛省しなさいね。

 

桜並木を
生き返らせたい
男の話。

 

上映後、間髪を入れず、園まち講座が始まった。
映画本編にしか興味のない人が多く、途中退場が目立ってしまったが、いい内容だったと自負している。
質疑応答も、活発だったし。

堀内さんが再生させた、千曲市の桜並木の一部です。

枯れてしまう樹木を生き返らせる、木々とコミュニケーションを交わす、地域を活性化させるという難しいテーマが、こんなに分かり易く30分で聴けてしまうというのは、とてもいい企画だと思う。
司会が僕だったというところが、すんごく良かったんじゃないかな?(自画自賛)



 

最後の、
提案。

 

最後に、先月約20名にまで減ってしまった客足。
心配して下さった読者の方々も多かったので、今回も発表します。
昼の部は…41名
最盛時には60名以上の来場もあったので、決して多い数字ではないが、一応先月の2倍、ではある。
夜の部は…9名
これは、完全に赤字だ。
映写技師さんの、ギャラさえも払えない。

僕はこの上映をもってココトラを退会してしまったので、この誌上で提案をします。
寅さんの上映は偶数月のみにし、奇数月は他作品の上映にしたらどうだろう?
寅さんファンの僕でも、毎月寅さんでは、腹一杯になってしまう。
食傷気味、というやつだ。
正直、僕だって関係者でなければ、毎月は観に来ない。

例えば「禁じられた遊び」「鉄道員」「大脱走」「二十四の瞳」などの、あまりテレビで放映されなくなった名作を上映する。
この上映会の常連さんの年齢層にも合っているだろう。

逆にたまには若年層をターゲットに、70~90年代の作品を上映するのはどうだろう?
「ドゥ・ザ・ライト・シング」「ブルース・ブラザース」「狼たちの午後」等の洋画から、「転校生」「逆噴射家族」「太陽を盗んだ男」等の邦画まで。

そして時々でいいので、小中生をターゲットに、しかも同伴する親御さんも楽しめる「ルパン三世・カリオストロの城」「機動戦士ガンダム」「銀河鉄道999」等のアニメーションを上映。

こうして幅広い年齢層に、上映会に来させる「クセ」をつけさせるわけだ。
そうすれば、偶数月の寅さん上映にも、客足は微増するだろう。

また、「父と暮せば」「東京物語」など、山田洋次監督作品と関連性の深い作品も上映すればいいだろう。

こうした作品のチョイスを、山田組に近しい著名人にお願いするといいだろう。
例えば「山本晋也監督の選んだ『必見の10作』」、とか。
そうすればココトラのモチベーションも下がらないだろう。
というよりかは、ココトラメンバーの各々が、かけたい作品をかけていけばいいのだ。

映画館の興行主として、どうすれば「上映したいもの」と「経営(観客が望むもの)」が成り立つかを、少しビジネス寄りに考えてみてはどうだろうと思うのだ。

最後は、寅さん風に〆させてもらいます。
じゃ、あばよ。


2016.04.13

事業実施候補者辞退について

構成・鎌田浩宮

 

 

この度、ココトラがマスコミ各社へ、こんな文書をお送りしました。

関係者の皆様へ

平成27年度遊休施設管理・運営事業/旧寅さん会館・やすらぎ会館管理運営者
事業実施候補者辞退について(ご報告とお詫び)

平素からココトラの活動にご理解とご協力を賜り、誠に有難うございます。
さて我々ココトラは、小諸市が昨年4月に実施した「平成27年度遊休施設管理・運営事業/旧寅さん会館・やすらぎ会館管理運営者公募」に応募し、管理、運営する事業実施候補者として選定され、今日までその準備を進めてまいりました。しかし期日である本年3月31日までの履行が困難な状況となったため、誠に残念ではありますが、本事業者を辞退することと致しました。これまでご支援頂いた多くのファンや関係者の 皆様には、ご期待に添えず心よりお詫び申し上げます。
このような結果を招いたのは計画の甘さや、資金不足など、ひとえに我々の力不足であったと痛感しております。以下に、このような結果に至った経緯を、簡単ではございますがご説明させて頂きます。
まず、公募が行われた時点で我々応募者と事業主たる小諸市が簡単に考えていた点、それは「権利」への対応です。旧寅さん会館の所有者は小諸市ですが、収蔵品の「著作権」や、出演者の「肖像権」は、映画「男はつらいよ」の制作会社である松竹株式会社様及び関係者様にありました。しかしながら当初は市も我々も、その「権利」についての認識が足りないまま本事業へ臨み、それが準備を進めていく段階で明らかとなり、最終的には各段階で松竹様等の許諾なしには事業を進められない事が分かりました。
また、松竹様より具体的な事業計画や運営内容、収蔵品の再調査と展示企画の具体案、交通アクセスや近隣施設(懐古園など)との協力体制、過去の問題点の解決方法や施設全体のリニューアルによる入場者数の見直しなど、資金計画を含め多くのご指摘をいただきました。これらのご指摘はどれも必須条件でありましたが、市との協議の結果、実施には巨額の費用が必要なこと、またこれらの課題を時間内に解決することはもはや不可能との判断から、誠に残念ではありますが今回の結論に至りました。
したがって、本事業に関しましては一旦白紙に戻させて頂くこととなりました。また、先に述べた権利の問題に関しては、我々が提案した内容でなくとも配慮必須な事項であるため、会館のあり方を含め今後どのようにすべきかは小諸市と松竹様との協議の上、最良の道をご検討頂くこととなりました。
最後に、この度はこのような事態を招いてしまい、ご支援ご協力いただいた多くの皆様には多大なるご迷惑をおかけし、本当に申し訳ございませんでした。
我々としても忸怩たる想いではありますが、小諸を愛した渥美清さんと、そのきっかけを作った井出勢可さんの想いを後世に残すという気持ちには何ら変わりありません。これからも上映会などを通じて寅さんと小諸を愛して頂く活動を続けてまいりますので、引き続き温かいご支援を賜りますよう心よりお願い申し上げます。

2016年4月
ココトラ代表 一井正樹

 

 

これを受け、長野県最王手紙・信濃毎日新聞2016年4月6日(水)朝刊の地域面にて…。

寅さん会館 活用白紙
小諸 事業計画まとまらず

小諸市は5日の市議会議員全員協議会で、古城の旧「渥美清こもろ寅さん会館」と同館地下の「やすらぎ会館」を、東信地方の有志団体「コモロ寅さんプロジェクト『いつもココロに寅さんを♪』」(通称ココトラ)が新たに運営する計画を、白紙に戻すと報告した。計画検討期限の3月末までに具体的な事業計画がまとまらず、ココトラ側が辞退を申し出た。
寅さん会館は市出資の第三セクターが「男はつらいよ」シリーズ主演の俳優・故渥美清さんゆかりの品を展示したが、経営難で2012年に閉鎖。三セクから寄贈された市が、自主財源で施設と収蔵品を活用する事業者を15年3~4月に公募、カフェなどを併設した有料展示施設とするココトラの事業計画を選んだ。
その後、同シリーズの著作権を持つ松竹側から、長期継続できる堅実な収支計画や施設の修理が必要では‐との指摘もあり、ココトラが事業計画を練り直していた。
ココトラによると、両会館の修理費は最大約500万円。インターネットで資金を募る方法を検討したが実現しなかった。収支計画や具体的な展示計画を期限内にまとめることが困難だったという。
ココトラ代表の一井正樹さん(35)=御代田町=は取材に「多くの寅さんファンの期待に応えられず申し訳ない」と話した。市経済部の清水哲也部長は全協で「私どもの認識が甘かった部分がある」と述べた。松竹は「会館を復活させようとの試みがありがたく、感謝している」としている。
両会館の施設・展示品の活用は再び宙に浮く形となり、市はあらためて活用方法を検討するとしている。

 

 

 

そして、同じ日の読売新聞長野県版地域面にて…。

休館中の長野・小諸「寅さん会館」、再開を断念

2012年に休館した俳優の渥美清さんゆかりの品を展示する「渥美清こもろ寅さん会館」(長野県小諸市古城)について、今年夏頃の再開を目指していた市民団体「いつもココロに寅さんを♪」が、再開を断念していたことがわかった。
映画「男はつらいよ」シリーズについて権利を持つ映画制作会社の松竹と交渉を続けてきたが、了承を得られなかったという。
会館は、経営難などを理由に12年に休館。その後、当時の所有者から展示品と建物を寄贈された小諸市が15年4月に管理者を公募し、同団体が選ばれ、再開に向けた準備を進めてきた。
同団体によると、松竹側からは、運営の継続性について疑問視されたという。資金不足もあり、再開を断念することにした。
同団体代表の一井正樹さん(35)は「寅さんの魅力を後世に伝えたかった。多くのファンが期待を寄せてくれていたのに本当に申し訳ない」と話した。
小諸市は今後、会館の建物や収蔵品の活用方法について、改めて検討するとしている。

 

 

 

新聞では
分かりにくい
こと。

 

まず、ココトラの文書から解説します。
渥美さんから前寅さん会館館長・井出勢可さんに寄贈された収蔵品は、その時は井出さんに全ての権利があった。
しかし、市に寄贈された時点で、収蔵品の肖像権や著作権は、再び松竹や映画出演者などに返ってしまうのだった。
これは法律を熟知していないと分からない事であり、市もココトラもこの点を知らなかった。

一方、松竹は企業である。
寅さん、渥美さんというブランドイメージを落としたくない。
1度財政難で閉鎖され、ブランドイメージを落とした施設を再開するには、それなりのビジネスにならないのであれば、肖像権・著作権を盾に取り、決して許諾しない。
これは、企業という利潤を追求する立場にすれば、至極まっとうだ。
危ない橋を渡り、ハイリスクでローリターンなら旨味はない。

しかし逆に言えば、既に没後20年となる故人だ。
ネームバリュー、知名度は主に若年層を主に衰えさえするものの、これから上がることはまずない。
それこそ大袈裟に書けば、ディズニーランドのようなレベルでの周到なアイデアと予算がなければ、松竹は首を縦に振らないだろう。
つまり、ほとんどのアイデアはハイリスク、NGとみなされるのだ。

僕は先日までココトラに在籍していた。
だから知っているが、経営の素人にもかかわらず、それなりの事業計画を松竹に提出していた。
しかし、そういった部分を抜きに新聞記事にされてしまうと、県民の読者には何が起こりこんな結末になったのか分かりにくい。

 

小諸市は
この財産を
どうしたいのか。

 

市は、この事業計画を達成するには相当の年数がかかる事は、松竹との折衝で分かったはずだ。
であれば、2016年3月末までという期限を延長してもよかったのではないか。

また、僕はココトラ在籍時に、経営コンサルタントと広告代理店に相談する事をココトラ幹部に提案した。
広告代理店というプロの目から、少ない予算でどんなテーマパークを造り上げることが可能か見てもらわない事には、松竹には勝てないだろうと思ったからだ。

勿論ココトラには、そんな人を雇う金はない。
しかし、無償で担ってくれそうな友人知人はいたので、そこが残念だ。

今後は小諸市が、推定数百万とも数千万とも思しき価値のある収蔵品を本気で活用する気があるのか、それとも他地域の他団体に売却してしまうのか、コンサルタントや代理店と綿密な相談の上で考えてほしい。

そして、元々ココトラは、会館再開をアピールする団体ではあったが、管理運営権を自らに要求していた団体ではない。
ココトラは元のポリシーに戻って、会館再開をアピールしていけばいいのだと思う。


2016.04.11

渥美清こもろ寅さん会館にて「男はつらいよ・噂の寅次郎」35㎜フィルム上映

文・鎌田浩宮
動画撮影・鎌田浩宮
写真・大島Tomo智子/鎌田浩宮

どしたら
お客さん
増えるのか。

勉強会
行きまくる
わたしたち。

 

もー、冒頭からぶっちゃけちゃいますよ。
もー、赤字なんですわ。
毎月、上映会、まっかっかなんですわ。
皆、頭抱えて、どーしよーと相談しきりっすわ。

先日、お知恵を拝借するために、ご近所の千曲市の勉強会「第3回 みんなで街まちミーティング」にも行ってきた。
すげーぜ、千曲市。
NPOなど様々なグループが町おこしを頑張ってる。
それに加え、なんと高校生が、担任の先生の指導もあり、課外授業とでも言うのだろうか、町おこしのアイデアを出し合ったり、地元の特産品の販売のお手伝いをしたり、ガンガンに活動しているのだ。

発表する高校生達。

俺らが高校生だった頃は、シラケ世代の残党だったりして、世の中の事はおろか、地元の事も地域振興にも関心がなかったではないか。
全く情けないぜ。
よくオトナが「今時の若者は駄目だ」と世代論をぶつ。
が、今の若者に限っては、それはお門違いだ。
今の10代、20代は、俺らのそれと比べても全く真面目で、酒も煙草もやらず、地道に生きている子が本当に多い。
ひいてはSEALDsやT-nsSOWLなど、立派な活動に燃えている子も沢山いる。
さあ、小諸市の若者は、ダイジョーブだろうか?

 

4月からは
昼夜の
2回上映。

 

で、負けてはおれんとバカな頭で考えた。
寅さん全作フィルムで観よう会」は4月から、午後3時の回に加えて、午後7時の回も加え、2回上映とするんです。

で、小諸市内の小中高校にチラシ配布をお願いしたり、広報こもろに添付して市内全世帯配布もするんすわ。

さらにさらに、上映後のお楽しみとして、県内外で活躍しとる人を呼んで色々喋ってもらおうという
園(その)まち講座」も開講するんですわ。
寅さんとは関係ないテーマでも、面白ければ何でも喋ってもらっちゃって、観客も知性とか教養とかいろんなものを磨いてもらおうかという主旨でござんす。

第1回は4/9(土)昼の回の上映後、「千曲の枯れた桜並木を復活させた男」と題して、NPO法人・千曲環境緑化協力会 堀内太一さんをお招きするぜ。

鎌田が制作したこのCMを、観てたもれ!
シークレット・ゲストの告知もあるでよ。

すっかり雪化粧の浅間山。

2016年3月12日、土曜日。
午前11時45分に僕らは、渥美清こもろ寅さん会館に集合。
年度末の忙しさで、駆けつけられたスタッフも、いつもより少ない。
それでも約1時間で、ホールを「映画館」に設営するのだ。

会場に欠かせない物の1つ。空調だけでは寒いのだ。

僕は、吟味に吟味を重ね、東京で買ってきたお返しのホワイトデーのプレゼントを、女性スタッフに配った。
1年間ありがとうございます、と言葉を添えて。
しかし!
なんとそのお菓子、セブンイレブン小諸店でも売っておるではないか!
重い荷物背負って持っててきたっちゅーのに、なんてこった。
しかも、そんなに安くないぞ。
スタッフに、コンビニで慌ててテキトーに調達してきたと思われたらたまんない。
僕は見苦しく、言い訳をして回ったが、真意は伝わったのだろうか…。

ここ数日、小諸には雪がぱらついた。
今朝も、降った。
でも、すぐに止み、晴天。
相変わらず寒いこの日、お客さん、来てくれるだろうか…。

会場内では、本日封切「家族はつらいよ」の前売券も販売。
1枚も売れなかったのであるが…。

名古屋神奈川からも、お客さんが来て下さった。
開映前、そんなお客さん方と談笑するのも、楽しみの1つ。
「おお、随分太っただな!」
年輩の人から、お腹もさすられる。

午後3時過ぎ、我らがココトラ代表・一井正樹の挨拶に続き、上映が始まった。

相変わらず騒ぎを巻き起こすお兄ちゃんを、慌てるでも怒るでも同情するでもなく、少し俯瞰した所から見つめる、妹。
馬鹿で愚かな兄を、好きでたまらないのだ、じっと見つめている、見守っている。
そんな倍賞千恵子さんの演技が、目が、素晴らしくてたまらない。

毎月販売しているたい焼き。
今日はお店のスタッフさんが直々に販売して下さった。

 

その
美貌が
罪であることを
彼女は
知らない。

 

上映後の挨拶で、僕は手短に、大原さんの一生を語った。
早く両親が離婚し弟と別れ、時々会うものの、別れる時は号泣し合ったこと。
60年代に出演した「網走番外地」シリーズで出会った高倉健さんを生涯の兄と慕い、大原さんの死後、書棚には健さんの写真アルバムが置かれていた事。
2度の離婚、ギラン・バレー症候群、若く孤独な死。
倒れていた遺体のすぐ傍に、携帯電話があった事。
しかし、生涯孤独な役者馬鹿の美しさは、この35㎜フィルムと皆さんの胸に、久しく刻まれるという事。

それを聞いていたスタッフの1人が、涙が出そうだったと言ってくれた。

 

終わり

季節

 

しかし、だ。
この日の来場者数は、わずか22人。
最低動員数を更新してしまった。
地元小中高校全校生徒にチラシを配ったが、それを見て来て下さった方は1人だけだった。
赤字が、さらに、増す一方。

この上映の前日は、東日本大震災のあった日だった。
震災直後、被災地のあちこちで、寅さんはじめ様々な映画が、体育館や公民館で臨時上映された。
お笑いは不謹慎とされたあの頃、こうしたコメディー映画の上映が、どれだけ苦しみの淵にいる被災者の皆さんの心の、慰めとなった事だろう。
そしてきっと今でも、仮設住宅などで寅さんを上映したら、どれだけ被災した方々に喜んでもらえることだろう。
しかし、小諸では、もうどうやら、宝の持ち腐れ、上映は必要ないようだ。
もう、この地で上映する意義は、なくなってしまったのかも知れない。
既に、僕らの赤字は、限界にきている。
東京から小諸への、交通費も宿泊費も、馬鹿にならない。
もう潮時だというのなら、僕らはここを去り、被災地で上映する事にするよ。


2016.03.14