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エプスタ1周年企画!映画オールタイムベストテン
編集部より
既に掲載したエプスタ1周年企画の映画ベストテンですが、
戦闘的ゴジラ主義者さんのチョイスだけは
わざと掲載しなかったんです。
延々と続くファンキーな能書き、
これはぜひ別枠でじっくり読んでもらえたら
と思い、本日アップします。
このこだわりまくったベストテンを
どうぞお楽しみください。
戦闘的ゴジラ主義者
本文を事実上休んでいる状態でこうして番外を書くには気が引けるな。
単にさぼっているだけで地震や原発で大変な訳でも、「エプスタの池上彰」という形容が嫌でごねている訳でもない。
お題は映画のオールタイムベスト。
受けてから色々と考えたことをはじめに書く。
ベストテン選びとは遊びだと思っていたが、お気に入りを選んで何を何位に、とやるこの行為が僕の嫌いな政治的行為であると気づいた。
もっと正確に言えば議会政治的な行為、だ。
個人で行うベストテンでも既にそうなのだが、これが大勢の意見を集計してのベストテンとなればその政治性は明確になる。
そこにあるのはいかにして多くの票をとるか、そのための種々の駆け引きである。
キネ旬のベストテンも映画芸術のベストテンも、いやそれらに比べたらはるかにチンピラな映画秘宝のベストテンですら個々人の投票の集積としてその年度のベストテンが決定すれば何らかの権威を帯びる。
それこそその種の権威の最大のものであるアカデミー賞だって投票の結果なのだ。
個人の趣味性の表明が実は十分に政治的な行為なのだとあらためて気づかされた。
お前今更何言ってんだよ、と言う指摘は正しい。
まったく、今更何言ってんだよ。
自分でもその鈍感さには笑ってしまう。
洋画と邦画を分けて、とのことだがこれも考えさせられた。
日本語圏、つまり国内市場でしか通用しない作品と言葉の壁を越えて市場に入ってきた作品を分けてる意味ってなんだろう。
当然の前提として国内と海外といった分け方をさまざまな事柄でしているけど、その意味は何なのだろう。
僕たちは無自覚に国内市場を守りたいのか?
あらためてそう問われるとためらいつつもうなずいてしまう自分がいる。
それは保護主義的なナショナリズムであり、排外主義的なナショナリズムとどこが違うというのか。
邦画といっても人も資本も国境を越えている時代、原作や出演者は「日本人」だが監督は外国人なんて映画は珍しくない。
それに、沖縄の資本と言葉で作られた映画を「日本映画」とくくってしまっていいのか?
在日朝鮮人が出資、監督、出演している映画を「日本映画」と無邪気に呼んでいていいのか?
同様の問題は戦前の植民地で製作された映画についてだって当てはまるだろう。
残念ながら僕は戦前の作品をほとんど見ていないので今回選ぶにあたって真剣に悩むことはなかったが、こういった問題に無自覚であれば僕たちは簡単に「がんばろう、日本」の声に飲み込まれてしまうだろう。
洋画、というくくりはかつてはヨーロッパ・アメリカ(決して南北アメリカのことではない、アメリカ合州国だけを指している言葉だ)のことだったが今やこの国以外の全ての国、といった意味になっている、はずだ。
でもこれも自覚的でなければオールタイムベストは欧米の作品ばかりになるだろう。
と、ひとしきりくだを巻いたところで選考基準めいたことを。
劇場、ないしそれに準じた場所で見た映画に限っている。
つまりテレビやビデオで見た作品は入れていない。
何も考えずに好きな映画に順位をつけて頭から十本という手はあるが、そこまで自身の政治性に無自覚ではないのでこれはしなかった。
監督や俳優で一人一本という選び方や、ジャンルごとに一本という選び方はあるが、邦画はほぼジャンルごとに一本である。
洋画は国ごとに一本という選び方もあるだろうが、残念ながらそんなにたくさんは見ていない。
洋邦ともに自身の記憶だけを頼りに選んだ。
何かの資料を見ながら選べばだいぶ入れ替わると思うし、三ヶ月後に選んでも入れ替わっているだろう。
そのときの気分で変わる程度のベストテンと思っていただきたい(逆に言えば「これが絶対のベストテン」は多分僕にはない)。
オールタイムベスト、と言ってもどうしても同時代の作品、自分で見つけたと思っている作品に偏り、旧作は少ない。
旧作はどうしても評価の定まった作品をお勉強的に鑑賞することになりがちで、同時代に見ていれば違って見えただろうと思うことは少なくない。
さて、では以下ベスト。
順位はない。
どれも「二番館へ走れ」で取り上げたい作品ばかりなので簡単に触れる。
(休んでるくせによく言うよ)
邦画
あ『狂った果実』1956年 日活
原作・脚本 石原慎太郎 監督 中平康 出演 石原裕次郎
い『独立愚連隊』1959年 東宝
監督・脚本 岡本喜八 出演 佐藤充 鶴田浩二
う『座頭市物語』1962年 大映
原作 子母沢寛 脚本 犬塚稔 監督 三隅研次
出演 勝新太郎 天知茂
え『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』1966年 東宝
(米国との合作)脚本 馬淵薫・本多猪四郎 監督 本多猪四郎
特技監督 円谷英二 出演ラス・タンブリン
お『伝説巨神イデオン 接触篇・発動篇』1982年 日本サンライズ
総監督 富野喜幸
か『山谷 やられたらやりかえせ』1985年 「山谷」制作上映委員会
監督 佐藤満夫 山岡強一
き『いじめて、ください。 アリエッタ』1989年 KUKI
監督・脚本 実相寺昭雄 出演 加賀恵子
く『櫻の園』1990年 ニュー・センチュリー・プロヂューサーズ
原作 吉田秋生脚本 じんのひろあき 監督 中原俊
出演 つみきみほ 大島ひろ子
け『スワロウテイル』1996年 「スワロウテイル」製作委員会
監督・脚本 岩井俊二
出演 三上博史 chara 伊藤歩 江口洋介
こ『呪怨』2002年 「呪怨」製作委員会
監督・脚本 清水崇 出演 藤貴子
あ、若い人が劇場で見ていないのはもったいないとしか言いようがない。ヌーベルバーグどころかこの手の夏と海が出てくる青春映画すべてに影響を与えている。津川雅彦が実にいい。けどあんな演技、二度とできないだろう。同じく日活の『八月の濡れた砂』も傑作だが残念ながら僕は劇場で見ていない。見てればこれとどちらにするか悩んだと思う。
い、若い人(以下略)。中国を舞台にした戦争映画、しかしフォルムは西部劇。佐藤充が実にかっこいい。「祝言だ、結婚式だ、派手にやってくれ」に泣く。
う、若い人が劇場で見ていないのは実にもったいない。時代劇からこれかオリジナルの『十三人の刺客』にするかで少し悩んだ。この十本で一番好きな映画かもしれない。
え、今の僕は『ゴジラ』よりこちらを取る。脚本の馬淵薫は関沢新一と共に東宝特撮映画を支えた脚本家だが、明るい関沢新一に対して人間の情念や社会に対する批判を描いて魅力的である。ガイラは自衛隊によって殺されかけた数少ない怪獣で、もともとは人間の細胞から作られた存在である。それを自衛隊が追い詰めるとは、当時有り得たかも知れない治安出動の暗喩なのか?
お、正しい表記は『THE IDEON』かな?テレビシリーズの総集編と放送できなかった最終回を劇場で公開。ゆえにまとまりは悪いが、今でも一番好きなアニメはこれだ。中学でこれを見れたのは幸せだったと思う。ただし、登場人物は文字通り一人も生き残らないどころか人類は宇宙規模で完全に絶滅する。映像でこれをやった作品は他にない。
か、日雇い労働者の町、東京は山谷の労働運動を映したドキュメンタリー。この十本の中で上映可能性が一番高い。ネットで検索してりゃ多分半年以内に上映される。ドキュメンタリーはこれか『ゆきゆきて、神軍』にするかで悩んだが、もしかするとこれを読んで映画を見てアンダークラスとしての階級意識を持つ人がいるかもしれないと思ってこれを選んだ。
き、ピンク映画からの一本。大作AVとして製作された。実相時の最高傑作は円谷プロ時代でもATGでもなくこれだと思う。
く、これか『blue』かでちと悩んだ。つみきみほは『花のあすか組』にするかでも悩んだ。
け、円盗(イェンタウン)と呼ばれる外国人たちが円都(イェンタウン)に集まる。金のあるところに人が集まってくるのはあたりまえだ。「円盗円盗というが円都とはもともとお前たちのふるさとの名前ではないか!」という叫びが胸を打つ。
こ、劇場で震え上がった初めての映画。エンドクレジットが始まると満員の観客が一斉に緊張を解くのがわかった。みんな怖かったのだ。そんな経験を映画館でしたのもこれだけ。
岸田森も平田昭彦も入っていないベストテンになるとは。自分で選んどいて絶句。
洋画
さ『太陽がいっぱい』1960年 フランス・イタリア
原作 パトリシア・ハイスミス 監督 ルネ・クレマン
出演 アラン・ドロン
し『夕陽のガンマン』1965年 イタリア
監督 セルジオ・レオーネ
出演 クリント・イーストウッド リー・ヴァン・クリーフ
ジャン・マリア・ヴォロンテ
す『ゾンビ』1978年 アメリカ・イタリア
監督 ジョージ・A・ロメロ 特殊メイク トム・サビーニ
せ『ブルード 怒りのメタファー』1979年 カナダ
監督 デヴィット・クローネンバーグ
出演 サマンサ・エッガー オリバー・リード
そ『アナザー・カントリー』1984年 イギリス
原作(戯曲)ジュリアン・ミッチェル 監督 マレク・カニエフスカ
出演 ルパート・エヴェレット コリン・ファース
た『ヒッチャー』1986年 アメリカ
脚本 エリック・レッド 監督 ロバート・ハーマン
出演 ルトガー・ハウアー C・トーマス・ハウエル
ジェニファー・ジェイソン・リー
ち『ウォレスとグルミット ペンギンに気をつけろ』1993年 イギリス
監督 ニック・パーク
つ『インファナル・アフェア』2002年 香港
脚本 アラン・マック フェリックス・チョン
監督 アンドリュー・ラウ アラン・マック
出演 トニー・レオン アンディ・ラウ
て『V フォー・バンデッタ』2006年 イギリス・アメリカ・ドイツ
原作 アラン・ムーア(完成作品が気に入らず公式な表示は拒否)
デヴィッド・ロイド
脚本 ウォシャウスキー兄弟 監督 ジェームズ・マクティーグ
出演 ヒューゴ・アーヴィング ナタリー・ポートマン
と『グエムル 漢江の怪物』2006年 韓国
監督 ボン・ジュノ 出演 ソン・ガンホ ぺ・ドゥナ
さ、フランス映画なら『スズメバチ』とも思ったが、アラン・ドロンとあの音楽、そしてラストの絶望は捨てがたい。
し、マカロニ・ウェスタンの傑作。おととし初めて劇場で見たが、終映後、ゲストが来ている訳でもないのに熱狂的な拍手がおこった。
す、ホラーからでこれ。ゾンビ映画というだけなら『死霊のはらわた2』とか『ブレインデッド』でもいいかもしれない。怪物ではなく(長らくこのジャンルの王座にいた吸血鬼ですらなく!)人間が敵というのは不幸なことだ。『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』のまともなヴァージョンがこの国で公開されていたらそちらを選んだかもしれない。
せ、この一本だけ監督で選んだ。クローネンバーグで好評なのは『デッドゾーン』『ザ・フライ』、最近では『ヒストリー・オブ・バイオレンス』『イースタン・プロミス』あたりだろうが僕はこれだ。子どもたちが身近な道具で大人を殴り殺す、まったく救いのない映画である。
そ、これでルパート・エヴェレットにやられた。しかし最近はよく見逃す。「彼の喉のくぼみに蜜を注ぎ込んでなめたい」は最高の口説き文句だと思うが当然使ったことはない。ゲイの青年が共産主義に目覚める話だが、今見たら僕にはどう映るだろう。公開当時高校生だった僕にはどちらも魅力的だった。
た、ルトガー・ハウアーはこれだ!『ブレードランナー』じゃない!脚本のエリック・レッドは一番燃える『エイリアン3』の脚本を書いたと言われているが映像化されず。最近同監督でリメイクされたが凡作。
ち、人形アニメから一本ということで。正確には粘土アニメに近いけどな。人形アニメといえばエンターテイメントならハリーハウゼンだが、残念ながらハリーハウゼンは同時代に見ていないどころかほとんど劇場で見たことがないので選べないのだ。世界的にエンターテイメントの世界から金と手間のかかる人形アニメは排除されてしまいCGに取って代わられてしまった。僕はどうにか劇場でSFやホラーの中で人形アニメが使われているのを見れた世代である。東欧の作品なども捨てがたい魅力があるが、手に汗握る面白さを粘土だけでやってのけたこれを推す。
つ、この二年くらい劇場で見ていない。また見たい(公開から数年経っても劇場で見る機会のある洋画はそうそうない)。潜入捜査官物の最高傑作。
て、今時アナーキストが暴れまくる映画が見られるなんて!「アノニマス」が映像を使用しているが、とても正しい使い方である。同じようにアナーキストが暴れまくる最近の映画に『ダークナイト』がある。
と、韓国の怪獣映画。政治的なメッセージも強く、製作者たちはそれにきわめて自覚的だ。そんなことを考えなくとも十分に面白い。韓国映画では他に『復讐者に憐れみを』か『シルミド』にするかで悩んだが、ペ・ドゥナより怪獣を選んでしまった。
やっぱり西ヨーロッパと北米ばっかりだ。世界最大の映画生産国インドどころかソ連≒ロシアすら入ってないじゃないか!ジャンルも偏ってるし、何が「政治性を自覚」だよ。はあ。これが今のワタクシの現状でございます。
2011.08.15