第七話「タマゴサンド」 <前編>

 

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ある早い朝、タレントを目指しているリサ(村川絵梨)は、マスター(小林薫)の店で、新聞配達を続けながら大学に通う苦学生・中島(田中圭)と出会い、タマゴサンドを分け合う。中島は暗いうちから新聞配達の準備をし、後片付けをしてから大学の講義に参加、 睡魔と闘いながら勉学に励むと
すぐに夕刊の配達が待っている、という厳しい生活を送っている。
そんな中島が新聞を配る時間に合わせて、店に通うようになったリサだが、やがて彼女の仕事が軌道に乗り始め・・・。若い二人の恋の行方は?
 
 
住む世界の違う二人。
 
流れゆく夜の街「新宿」を写す、オープニング映像。
 鎌田「とうとう、この回が来たね・・・」
 倉田「鎌田さんが待っていた回ですね・・」
  鎌「一番多く観た話だと思うよ」
  倉「僕はオンエア時の一回だけでしたが、この話は・・・」
  鎌「うん・・・」
 
タレントを目指しているリサ(村川絵梨)と出会う苦学生の中島(田中圭)。
 鎌「この話の主人公の二人、いいよね」
 倉「ええ」
 鎌「僕はこの二人、よく知らないんだけどね」
 倉「え?マジですか?二人とも有名ですよ?もしかしたら
   このシリーズ内でも一番、二番くらいに」
 鎌「そうなの???」
 倉「リサ役の村川絵梨ちゃんはルーキーズにずっと出ていましたし、
   田中圭君は最近の色んなドラマによく出ています。NHKでの
   『チェイス~国税査察官~』でも良かったです」
 鎌「そうなんだあ。村川絵梨ちゃんはタイプではないけどイイね」
 倉「僕は結構好きな顔ですね。あ、深夜食堂来だした頃はまだ化粧も
   ヘタで顔色も悪かったんですね」
 鎌「次第に変わっていくんだよね。服装もイイものになっていく」
 倉「丁寧な演出されていたんですね」
 
タマゴサンドをリサに勧める中島。美味しそうに食べるリサ。
 倉「リサちゃん、美味しそうに食べますね。ではこちらでも
   食べましょうか?」
 鎌「そうだね・・・。ああ、美味しいやね」
 倉「なんとも言えない素朴な。サンドウィッチはタマゴですね」
 鎌「この頃の二人は、なんとも・・・」
 倉「あぁ・・・後の事を想うと・・切なくなりますね・・・」
 
お見合いパーティ帰りのお茶漬けシスターズ登場。
 倉「うわっ!出たっ!キライ、コイツら!(笑)」
 鎌「(パーティでの愚痴をこぼすシスターズに) ダメだコイツら(笑)」
 倉「なんだかどんどん怖くなっていってますね彼女ら・・・」
 鎌「(理想の男を語るシスターズに) いねえよ!そんなんっ!」
 倉「(笑) 自分を顧みろっ!」
 
食堂でタマゴサンドを食べるリサの前に、新聞配達で現れる中島。
中島は以前のお礼にと、リサからタマゴサンドを一つ渡され。
 倉「なんとも・・・美しいボーイ・ミーツ・ガールですね・・」
 鎌「俺もね、新聞配達やってたんだよ・・・」
 倉「そうなんですか?」
 鎌「高校1年の時。父が女を作って家出しちゃったでしょ。
   それで家計を助けようと思って。いやね、新聞配達って本当に
   キツイんだよ。だから学校の授業はホントよく寝ちゃってた。
   学園祭の日も、新聞配ってから登校してたんだよ」
 倉「労働だけでなく、睡眠も削られますからね。若い頃には
   厳しい仕事かもしれませんね」
 鎌「そうだったよ・・」
 倉「僕の仲間も新聞奨学生をやっていたのでよく覚えています。
   今は音声の技師やチーフをやっていますが、18、9で出会った頃は
   新聞屋の仕事がメインのようなサイクルだけで暮らしてて、
   本当に苦労していたのを見ていました。同い年なんで余計に
   気持ちも入っていたし。イイ奴なんです。バカだけど」
 鎌「彼はそうだったよね・・・」
 
中島の大学キャンパスで、告白するリサ。
しかし中島は「二人の住む世界は違いすぎるよ」と返してしまい・・・
 鎌「住む世界が違う、か・・・」
 倉「今回のキーになりそうな台詞ですね・・・」
 鎌「もう、ちょっと泣きそうだ・・・」
 倉「好きなのに・・・なんとも・・・もどかしくて、辛いです・・・」
 
リサとIT社長との熱愛が報じられ、食堂に泥酔状態で現れる中島。
それを見たお茶漬けシスターズのミキ(須藤理彩)が中島に喝を入れる。
 鎌「うん。須藤理彩、よく言った」
 倉「先程も、中島と同じように格差のある恋愛をした様にも聞こえる
   台詞を言っていましたよね?」
 鎌「言ってたね」
 倉「このミキも同じ経験があるんでしょうね・・。だからこそ余計に
   中島の行動にイラつくんでしょうね。それでも背中を押す様に
   言ってあげている。ちょっと見直したかも」
 鎌「若さで打破できないのかな?格差を」
 倉「そうですね。そうも思います。若い時代ならば。でも・・・」
 
食堂で再会するリサと中島。さよならを告げるリサ。
落ち込む中島に、マスターは聞いていたリサの真意を伝える。
 鎌「マスター・・・」
 倉「今回も前回もですが、やはりシリーズ終盤に来て、マスターが
   前に出てきてくれていますよね・・・」
 鎌「うん。マスターがいなかったら彼も救われなかっただろうな…」
 倉「マスターの、彼への言葉。本当に優しい・・・(泣)」
 鎌「(号泣) 彼にはいい男になっていって欲しいよ・・・」
 
 
 
思春期、青年期、そしてそれを越えた世代。
 
 鎌「俺は今回のドラマテーマを、作者の意図とは違うかもしれないし、
   ロミオとジュリエットやウエストサイド物語じゃないけど、
   “格差のある恋”とは思っていないんだ」
 倉「ほお!」
 鎌「思春期、青年期の恋愛というものは、何故か相手に感情を
   伝えようとすると、もどかしくなってしまって、
   臆病になってしまって、不安になってしまって、踏み出せない」
 倉「そうですよね・・」
 鎌「『男はつらいよ』シリーズなんてのは、それが40、50になって
   もそういった人間であり続ける寅次郎の話だし、最近のドラマ
   『モテキ』も面白可笑しくカリカチュアして描かれていて、」
 倉「はい」
 鎌「やはり根底にあるのは、真面目すぎるくらい色々考えてしまって
   相手や自分の事を想い過ぎたりして、素直に気持ちを伝える事が
   できないというね。初めてこの回を観た時は、過去の恋愛と
   照らし合わせてしまって号泣してしまった。
   2回目観た時はお茶漬けシスターズの須藤理彩の様に“そんな事で
   どうする男よ!女よ!そこで勇気出さずにどうすんだ!“
   という気持ちになって、泣かなかったんだけどね」
 倉「初回と2回目で見方が変わったんですね」
 鎌「うん。でも今日観て、また泣いてしまった(笑)」
 倉「あら!(笑)」
 鎌「俺自身、42歳になってもまだそういう所、未だにあるんだよね。
   恋愛に対しても、人間全体に対してのコミュニケーションでも。
   ダメだな~俺バカだな~って思っても、うまく伝えられない」
 倉「僕は、このドラマは思春期、青年期のみのお話とは最初から
   感じていなくて。どの世代でも恋愛という一番のコミュニケーシ
   ョンを必要とするものの難しさ、それは単に恋愛を成就させるか
   否かだけではない、気持ちを伝え合う事の難しさを、前回の
   「カツ丼」も今回「タマゴサンド」も出している様な気がします」
 鎌「そうかもしれない」
 倉「もしかしたら、特に思春期、青年期では、相手との差を感じ取る
   という事は、コミュニケーション不全になってしまう一番の要因
   かもしれませんね。それほどに繊細な時代には“格差”とは大きな
   障害かもしれません。若さで打破できるかもしれませんけど。
   それでも逆に今の僕らの世代よりも、もしかしたら・・・」
 鎌「さっき、若い時ほど格差なんて乗り越えられる事は多いのでは?
   ってあったけど、年取ってからは相手の地位やら会社やら役職やら
   を考えてしまうかもね。でも、どの時代でもなのかもな・・・」
 
 

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第七話<後編>へつづく・・・



 


2010.10.04