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第二十六話「ロールキャベツ」
文・鎌田浩宮
肌寒くなってきたある日、マスター(小林薫)はロールキャベツをあらかじめ多めに仕込んでいる。喜ぶ常連客たちだったが、新しくできた男、キミトシ(高橋周平)と店にきていたストリッパーのマリリン(安藤玉恵)だけは、「母親がロールキャベツを作る日は、男のところに出かける日だった」と気が乗らない。
その母、エリ(柴田理恵)が急に入院することになり、見舞うために福島の実家に戻るマリリン。しかし、エリの病状はたいしたことがなく、つきあっている男を紹介されるばかりか、「ダンサー」として患者仲間に紹介され、マリリンはショックをうける。
後日、マリリンの踊る新宿ニューアート前に、エリの姿が。エリには上手く伝えられなかった娘への思いがあり、ある優しい嘘をついていた。
(公式サイトより抜粋)
安藤玉恵
という
役者の
当たり役。
うちは子供の頃赤貧で、母は出来合いの物を買ってきて僕らに食べさせることはなかった。
手作りは、安く上がる。
何でも時間をかけて作ってくれた。
時々来る實おじさんさえ、「姉ちゃんの料理は美味いなあ」と、ニコニコして食べていた。
でも、ロールキャベツをお願いした時は、渋ったんだよねえ。
あれは面倒なのよ、と珍しく言った。
それだけ面倒な料理なんだから、マリリンの母ちゃん、それなりに罪悪感を持って作ったんだと思う。
まあ、それだけ悪いと思ってるんなら、男遊びをやめろってなもんだけど。
ろくでなしには、変わりはない。
「あまちゃん」でプチブレイクした?いや、それさえもなかったかも知れない安藤玉恵だけど、演技、素晴らしい。
柴田理恵を、完全に食っちゃっている。
失礼だけれど、ものすごい美女、というわけではない。
でも、決してブスでもない。
仕草や表情、あらゆるところから「あまちゃん」では観られなかった、憂いだとか、愛くるしさが、醸し出されている。
マリリンという役は、性格も含めて、「美女」ではない。
短気で自分勝手で我儘なところも、垣間見える。
でも、愛くるしい。
懸命に、生きている女性の役だ。
そういう女性を放っておく男は、なんと野暮な生き物だろう!
コミュニケーション
を、
求める
生き物。
僕の父も、女遊びがひどくって、家に金を入れず、家出を繰り返したりしていた。
僕が大人になると、今度は脳梗塞とアルツハイマーで、50代にして早くもボケ老人のようになった。
この男は、いつまで僕を苦しめるんだろう。
僕の生活を、脅かすんだろう。
経済的にも、精神的にも。
早く死んでくれればいいのに、と思うのは自然なことだったし、誰からもとやかく言われたくないし、言わせない。
父が亡くなった時、しかし僕は泣いた。
それは、寂しいから泣いたんじゃない。
父と、結局コミュニケーションが取れぬまま終わってしまったことが残念で、泣いたのだ。
人間というのは、コミュニケーションを求める生き物だ。
(もちろんそうでない人もいるし、それは全くおかしいことでもない)
友達、恋人、愛人、そして家族、それぞれに対して意思の疎通を図ろうとする。
大島渚が男同士の愛という「戦メリ」を撮り、そしてなんと次に人間とチンパンジーの恋愛を描いた「マックス・モン・アムール」を撮った時、彼は答えた。
僕は、結局コミュニケーションというものを撮りたいんだよ、と。
マリリンも、彼女の母も、ぶつかり合いながら、コミュニケーションを取ろうとする。
そんな母親、捨てちまえばいいのに。
でも、そんなマリリンが、羨ましい。
微笑ましい。
そして、愛くるしい。
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