対談 大友麻子・鎌田浩宮

2018年10月13日より
全国各地でロードショウされている、

白石和彌監督作品「止められるか、俺たちを」

白石監督の大ファンである鎌田浩宮、
公開初日にて観劇しております。

この作品は白石監督の最新作でもあり、
若松プロの最新作でもあり。

若松孝二監督による
「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)」
「海燕ホテル・ブルー」
「11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち」
「千年の愉楽」
にラインプロデューサーなどで参加し

塚本晋也監督「野火」には助監督・フィリピンロケ製作
として携わった大友麻子さんは、

この「止め俺」でプロデューサーを務めています。

鎌田の新作「マラソン・マン」をご覧下さった
大友さんと鎌田の対談です。

 

 

 

 

大友
作品、かまちょらしいリズムでした!カットインの映像と和夫ちゃんの心象風景とか意識の持ち方とか、でも、やっぱり走る理由は実はすごく人間臭いとか。というのは、かまちょの気遣いでカットしてくれていたと和夫ちゃんは言ってたけども、まあ、その辺りの揺らぎというかね、1人の人間の脆さと強さと走る熱量みたいなのが、かまちょらしい演出で作品としてまとまってたと思うよ!

鎌田
ありがとう!結構ぎりぎりまで、その事をほのめかすカットを挿入していたんだけどね、代わりに、彼が笑うカットを断続的に入れるシークエンスに替えちゃったのよ。
あれは、ポール・ニューマン主演「暴力脱獄」のラストシーンを真似したのだけど、彼の秘められたエピソードを暴露するより、そっちの方が粋かなあと思いまして…彼に配慮したわけではないんだけど、結果的にそうなったわけですなあ。

大友
へえ。「暴力脱獄」、知らんなあ!いつか見てみよう。その映画がどんなラストシーンなのか知らないけども、和夫ちゃんの笑顔カットの連続は、実に牧歌的でよかったよ。
ただ、やっぱりマイクの音の拾い方はもう少しいい感じになるといいなあ…あまり目立たないくらいの小さいのを装着するとか?

鎌田
観客の皆さんには申し訳なかったんですが、色々とカメラ内蔵のマイクを試しながら撮っていて、ガンマイク機能にして、高校のシーンとか撮ったのよ。そしたら全然駄目で。

大友
ははは!カメラテストが本編の映像になったというのが、まあ、なんともおかしいね!全てゲリラだしね!
ドキュメンタリーって瞬間だから、そうなんだよね!その瞬間のその人の表情とか、その瞬間が全てだもんねー!面白いね!

鎌田
そうそう。ドキュメンタリーの制作はその辺が癖になるね。
あと、この映画、いろんな作品から音声を脱法的に頂戴しちゃったんだけど、意図せずして70年代の映画が多くなりました。子供の頃、東京12チャンネルとかでやっていた…昔は毎日テレビで映画放映してたものね。あの頃、よく観てた映画です。

大友
そうなんだね!私が見ているものは一つもなくて、ただ、スペイン語かイタリア語か判別つかない少年の声は、もしかして「ニュー・シネマ・パラダイス」かしら?なんて思ってたが、ビクトル・エリセだったんだね。
若松プロも真っ青の脱法!!

鎌田
そうそう、「ミツバチのささやき」。大学生の頃観たんだ。
「暴力脱獄」はね、無実の罪かなんかで投獄されたポール・ニューマンが、脱走しては捕まって戻されて、また脱走して、最後は殺されるの。そのラストシーン。

大友
最後殺されちゃうのか!!明日に向かって撃て!的な!その瞬間に生前の彼の笑い顔がカットインされるの?

鎌田
殺されるんだけど、最後は何故か彼が生前笑っているカットの断続なのよ。それを和夫にダブらせてみたんだけどね。

大友
映画って、すごいよね。精神がすべての障壁を超えていく様をも表現してくれる。それもエンタメとして。

鎌田
そうなのよ。僕はマイケル・ムーアのドキュメンタリーも大好きで、最初は彼の、あちこちから映像をインサートする手法を模倣しようと思ったんだけど、彼とは違うニュアンスで、音声のみを挿入してみようと思ったの。

大友
銃社会のドキュメンタリーだけ1本見たことがあるけれども、どうだっただろう、パーツごとのシーンしかおぼろげに記憶にない。「華氏911」とか見てないのよ。

鎌田
「ボウリング・フォー・コロンバイン」だね。伊勢真一監督とか、ああいうの嫌いですって。彼の新作「華氏119」も、前売買ってます!

大友
伊勢さんが?攻撃的なのが嫌なのかな。
(編集部注:「奈緒ちゃん」シリーズを撮った伊勢真一監督と大友さん・鎌田は旧知である)

鎌田
ドキュメンタリーに作り手の意図が見えるのは嫌なんだろうね。そういう意見のドキュメンタリー作家って多いと思う。

大友
へー、でもテーマによっては作り手の意図が見えないと全然面白くないよね。森達也監督の「A」とかさ。

鎌田
僕もそう思うのよ。

大友
ドキュメンタリーであっても、やっぱり嘘なわけだから。作り手のてによって歪み、受けての目によって歪む。歪まない情報なんてないじゃん。

鎌田
森さんも、原さんも。

大友
原さんなんて、「ゆきゆきて、神軍」なんて、完全に加担してるじゃん!

鎌田
いい事言う!歪みは絶対起こる。

大友
それにしても、1本の作品を産み落とすのはエネルギー注いだことでしょう!仕事しながら、お疲れ様!

鎌田
そちらも「止められるか、俺たちを」のロードショウ、頑張って下さい!

 

 

 

 

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2018.11.19