私の2021年外国映画ベストテン 鎌田浩宮編

2021年は43本の映画を映画館で観ました。でも、見逃がした作品も多く、今年以降映画館で観られればいいなと思っています。

1 アメリカン・ユートピア

2位とは全く同列。順位付けに意味はないのですが、現代を舞台に現在へ拮抗している点で、1位にしました。本国アメリカでは、劇場上映がなかったそうで。配信で映画人口が広がったのだとしても、不幸な事です。

時折、客席が映し出されます。僕より少し上の世代…60代や70代が多いかな(RCサクセションやムーンライダーズ関連のライヴでも、同じ光景です)。このお客さん達は、40年前にはウッディ・アレンとダイアン・キートンのNYものを楽しんでいたんじゃないかな。そういった想像も楽しめました。

ひょっとしたら、彼らの一部は昔も今も、自由といったものへ未だに期待を寄せていて、バーンの訴える「選挙へ行こうぜ」にダンスしているのです。そして選挙は行われ、トランプの悪夢が去ったのです。ダンスが祈りの一種だったとしたら、それは通じたのです。

2 アメイジング・グレイス/アレサ・フランクリン

ゴスペルは宗教音楽でもあるので、無宗教者である我々が何かを言うのははばかれる…といった論調を耳にする事もありますが、心を揺さぶられる事に理屈はないんです。子供の頃「ブルース・ブラザース」で観たJBのゴスペルも脳天をぶち抜かれましたが、アリーサも本当に凄い。

3 1秒先の彼女

登場する全ての人をキュートに描くのは、それほど簡単なことではない。交番の警官1人を描くにしても、海外の観客(僕)を想定し対応するのは楽かも知れないが、台湾現地の観客からすれば「あんなに善いお巡りさんなんていないよ」となってしまう。素晴らしい一作だった。

4 ブータン 空の教室

ストーリーの詰めの甘さがどうでもよくなるほど、様々な物事が素晴らしかった作品です。8日歩かないと行けないロケ地には電源がないため、蓄電池なども持っていく。そこに広がる景色の素晴らしさは、今後も映像に記録されない場所なのではないでしょうか。さらに教室に集う生徒達の、至上の愛らしさ。演技も素晴らしいので、これは流石に子役を連れて行ったのだろうと疑わなかったんです。何と、現地の子供達でした。となればこの子供達も、今後記録されない物事なのではないでしょうか。

5 MINAMATA-ミナマタ-

日本の映画人ができない事を、ジョニー・デップがエンターテインメントに。冒頭のミュージック・クリップじみた編集がなければ、もっと上位に挙げました。

6 リスペクト

名曲が生まれる過程を、映像で観ることのできる嬉しさ。ピーター・バラカンさんが「バラカンビート」でお読み下さった、僕の投書です。

映画「リスペクト」も観ました!
素晴らしかったです。
最後、拍手しちゃいました。
スパイク・リーが監督だったらどうなったかなあ、などと思いながら観ていました。
ジェニファー・ハドソンにとって、アリーサのヴォーカルと比較されることはリスキーだったと思うのですが、素晴らしい歌声でした。
夜中にアイデアが浮かんで、姉妹を起こしてコーラスアレンジをするシーンでは、踊り出したくなるほど高揚しました。
リー、リー、リー、リー!

7 DUNE/デューン 砂の惑星

ハンス・ジマーの音楽は未だに好きになれないが、レベッカ・ファーガソンの美しさ1つ取っても、細部にまで思索が行き届いている。

8 やすらぎの森

朝鮮人の日本への強制連行と強制労働、戦地での人肉食など、倉本聰だから描きまくれた「やすらぎの刻」とタイトルをもじってしまった、凄い邦題。こちらは隠居爺が、隠居先の人知れぬ森で大麻を育て売りながら、死にたい時に自分で死のうという映画。

9 渚の果てにこの愛を

1970年頃のソフトポルノ。んなもの現実に起こりっこないっしょという展開が、むやみやたらにリアリティーへ厳しい現代映画よりも、俄然楽しい。

10 サマー・オブ・ソウル

以上、音楽映画に傑作揃いの2021年でした。「ゲット・バック」はコヤでの上映がなく残念。音楽ものこそ大画面大音量、コヤで観たいものです。

「COME & GO」「グンダ」「茲山魚譜」「大地と白い雲」は未見。今年の宿題です。未見多いのにベストテンしちゃいかんのですが。

2022.01.06