渥美清こもろ寅さん会館にて「男はつらいよ・フーテンの寅」35㎜フィルム上映

撮影/文・鎌田浩宮

渥美清こもろ寅さん会館
復活のための
寅さん全作フィルムで観よう会
奮闘努力の第2弾です。

2014年7月5日(土)。
僕は朝7:50新宿発の高速バスに乗って、一路小諸へ。
あれえ、埼玉辺りで雨、降って来たぞ。
今日の上映、大丈夫かな。
渋滞もなく定刻通り、10:55に小諸駅前着。
霧雨だった。
しかし、渥美さんがそうしてくれたんだろうか?
雨雲の切れ目から、青空が。

正午、会場設営開始。
映画上映施設でありながら、普段は合気道の練習などに使われてしまっている、休館中・渥美清こもろ寅さん会館の地下。
そこに、月に1回、息を吹き込むんである。
ほら、広~い駐車場のあじさい、きれいだよ。

55人来た前回のお客さんで、1人だけ煙草を吸う人がいたので、ミーティングの結果、喫煙スペースを作る事に。
たった1人のために奮闘する寅さんのように、頑張るんです。
灰皿を経費削減のため、100円ショップで買ってきたど。

約10名のスタッフで、2時間という短時間で、掃除機をかけ、椅子を並べ、受付を設営し、看板を立て、無料サービスの飲み物などを作り、寅さん本や寅さんタオルなど販売コーナーのセッティング、等々…。

加えてこの日は七夕が近いので、短冊とペンとひもを用意して、お客さんが思い思いに書いて、すだれにつるせるようにしましたよ。

ココトラのメンバーは、年輩の方が多い。
僕の親、いや、もっと上の世代の人が中心になって、重いものを運び、金勘定をし、額に汗する。

僕は、技術を必要とする音響と照明のセッティング。
音楽や映画をやって来た事が、たまにゃあ役に立つね。

ココトラのメンバーが撮影した、山田組の撮影の様子の写真。
今やあまりにも貴重になった、晩年の渥美さんの現場での素顔などが飾られていく。
なんにもない壁が、少しずつ映画館の内装に変わっていく。

2時を回ったのに、予定していた設営が間に合ってない。
開場は2時半からなんだけれど、もうお客さんが並び始めた。
立たせて待ってもらうなんて、しちゃあいけない。
至急、開場!
60代以上の人が多いけれど、前回も来てくれた20代の青年のカップル、また来てくれている。
嬉しいなあ。

僕も、ライヴや自身の映画上映で、受付をやる事があるけれど、大変なのよ。
お釣りをたっぷりと用意し、笑顔を絶やさず、待たせずスムーズに。
ちなみに今回、女性スタッフは全員浴衣姿です。

 

観客と、
いつの間にか、
大合唱の
上映前。

 

そして2時半。
ウェルカム・イヴェントとでも申しましょうか、ココトラ最年少メンバー、かっくんこと各務雄太くんによる、ハーモニカ演奏。

かっくんは東北の被災地を、ボランティアでハーモニカ演奏で廻ったそうで。

かっくんの吹く演奏に自然とつられ、お客さんも歌いだした。
お年寄りってえのは、すごいね。
自然に、照れずに、我慢せずに歌っちゃうんだね。
小学校の頃覚えた唱歌を、何も見ないで歌えちゃう。

 

遂に、
あの人から、
メッセージが。
小諸市長、
耳の穴かっぽじって、
よおく聞けよ。

 

その司会を務めるのは、かっくんのお父さん・各務定雄さん
各さんの話す東北の様子に、皆のめり込んで聞いていますど。
集計したアンケートでも、この2人の催しは好評。
2人とも、ココトラのメンバーです。

こうして午後3時を迎え、シリーズ第3作「フーテンの寅」、上映開始!
…っとその前に、ココトラ代表の轟屋いっちーこと一井正樹さんから、重大発表。
なんと、あの山田洋次監督から、この全作上映会と寅さん会館復活についてのメッセージが届いたのです。
内容は…ちょっと出し惜しみしちゃおうかなあ!
次回上映の時、小諸に来て下され。
そこで、再度お読み致します。

 

寅さんシリーズ第3作は
なんと森崎東監督。
そう、
昨年、賞を総なめした
「ペコロスの母に会いに行く」
の監督です。

http://pecoross.jp/

この「ペコロスの母に会いに行く」という作品は、認知症の母と、彼女へ愛情を込めて介護する独身中年の息子の2人の、笑いと涙の実話の物語。
同名のマンガが原作。
しかもこの漫画は、その息子さんが描いているのだ。

しかし悲しいのは、森崎監督自身が認知症にかかってしまい、この映画も難産の末完成したんであった。

それでも監督は、めげずに現在、次回作の構想を練っている。
その次回作とは、監督の実の兄が、1945年8月15日の敗戦の日に自殺した実話を、反戦の願いを込めて映画化したいというもの。

森崎監督は、1927年生まれの86歳。
松竹への入社は、1956年。
1969年、『喜劇・女は度胸』で監督デビュー。
山田監督は、1931年生まれの82歳。
松竹への入社は、1954年。
1961年、『二階の他人』で監督デビュー。

森崎監督作品で1番話題になりヒットしたのは、あの夏目雅子主演
「時代屋の女房」ではないかしら。
物悲しさが通奏低音として奏でられた、いいフィルムだった。
哀感に、監督の独特さがある。

でも、誰が何と言おうと監督の最大の傑作は
「生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言」
コザ暴動、原発ジプシー、じゃぱゆきさんと、日本社会の矛盾を描き切った1985年作品。
チェルノブイリの事故が1986年だから、監督の先見性がいかにすごいものか。
公開当時、反原発を訴える芸術家なんぞいなかったのだ、皆無だったのだ。
当然、松竹からの公開にはならなかった。
僕は、日本映画史上10本に入るべき作品だと思っている。

 

色きちがい。
ヨイヨイ。
イロノーゼ。
放送自粛用語飛びかう
粗野で
ヤクザな
森崎寅さん。

 

森崎監督にしても、山田監督にしても、喜劇も撮れば社会の矛盾も描く。
しかし、同じ車寅次郎を描いても、2人には違いがあるんだね。

上映中も、自由に席を立ち、移動し、お喋りしながらワイワイ暗闇の中で笑うお客さん。
でも、決して上映の妨害にはならず。
昔のコヤ(映画館)って、こんな感じだったんじゃないかねえ。
しかも、小諸は涼しい。
扇風機さえも、途中でお客さんから要望があり、消しちゃった。

こうして、上映は終了。
間髪入れず、松竹の衣装係で山田組に参加していた本間邦仁さんと共に、お客さんと30分ほどの座談会。
いっちーと僕でマイクを持って、お客さんの間を回ります。

さすがにお腹一杯で帰るお客さんもいたけれど、残って楽しそうに話を聞く人も多く。

次回上映はシリーズ第4作「新・男はつらいよ」!
8月9日(土)午後3時に開催です。
そして8月4日は、渥美清さんの18回目の命日。
それに先立って、8月3日(日)に、この渥美清こもろ寅さん会館にて、去年に引き続き、献花式を行います。
どちらもどちらも皆さん、お控えなすって。
両日とも、お待ちしております。


2014.07.08