第56話「変わらぬはずの週末 outtake」

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「くーりーすー♡さんぽいこー」

カシャカシャと音を立て

リビングのフローリングを小走りに玄関に向かうクリス

すっかりカノジョとの“新居”に慣れたようだ

平屋建て一軒家のドアを開け

2分も歩けばもうそこは湘南の海

コーギー犬のクリスにとっては

都会のアスファルトよりも

波打ち際に広がる砂浜は格好の散歩コースだ

カノジョにとっても、缶ビール片手の早朝の浜辺、

海に太陽が沈む夕暮れの浜辺の散歩は、この上ない至福のときとなった

「ねえ、クリスー、あいつも一緒にくればよかったのにね…」

首を傾げ、大きな丸い目でカノジョを見つめるクリスだった

ーーー 思えば一週間前のこと ーーー

「よーし、鎌倉住むぞぉー!」

「はあ?」

「よーし、不動産屋にいこう!」

そういいだすカノジョの行動は俊敏だった

すっかり日が暮れた頃

鎌倉駅前で、閉店間際の不動産屋を見つけるや否や

「すみませーん!海が見えるおウチありませんか~!」

最初は、少し迷惑顔の不動産屋のスタッフも

カノジョの勢いと、水商売で培った“相手をノセる”トークで

すっかりカノジョのペースにハマリ

結局、夜にも関わらず内見まで行くことに

んで、その内の一つを即決…

必要書類だなんちゃらは、翌日手配して

2日後には、カノジョとクリスは、ほとんどお引越しというわけ

もちろん、カノジョと違ってボクは仕事もあるし

そんな勢いだけで引越し、

ましてや通勤片道一時間半の鎌倉なんかには住めない

ということで、彼女はクリスを連れて出て行っちゃったってワケさ

そんなこんなでもう一週間

カノジョとクリスは海の見える新生活

ボクはといえば、カノジョの食べかけのポテチまでそのままの一人暮らし

これからお互いどうなるんだろう?

神のみぞ知る、ていうか、

神様にだってアイツの行動は読めないだろうけどね…

2011.10.27