第55話「変わらぬはずの週末」

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静かな秋の週末の午後

静かすぎる週末の午後

なにもかわらない、なにごともない静かな週末の午後

静かというのは平和だということなんだろう

別に見ているわけでもないTVをつけ

ボクはいま、ソファーに座り、

窓の外の空を眺めながらカフェオレを飲んでいる

リビングのテーブルにはカノジョの食べかけの湿気ったポテトチップ

洗面所にはカノジョの化粧道具

クローゼットの中にはおびただしい量の

カノジョの洋服、バック、アクセサリー

キッチンの隅には

クリスの食器

贅沢にもペットボトルで与えている水は

まだ2cmほど残ったままだ

すべてがそのままで、いつもと何ら変わりない部屋の風景

クリスを連れて散歩に出かけたカノジョが

あと数十分もすれば

あーだのこーだの言いながら

もしくは、いつもの訳のわからない鼻歌を歌いながら

散歩から帰ってくる

そんな気がする

pm2:00

おなかがすいたな

カノジョが散歩帰ってきたら

お気に入りのカフェにごはんを食べに行こう

また、“ギュードン!“とか、いうのであれば

吉野家でも構わない

ふと、そんなことを思う

秋の日差しが心地いい

なんだかうとうとしてきた

カノジョが帰ってくるまで、ちょっと昼寝でもするかな

pm3:00

目が覚めて、携帯電話の時計を見る

小一時間寝たのか…

昼寝をしたら頭痛とまではいかないが

なんだかアタマが重いな

腹がグーっとなった

そうか、昼寝をしても空腹は満たされないんだなw

独り苦笑いする

pm4:00

すこし重いアタマをリフレッシュするため

シャワーを浴びた

なんとなくスッキリして

自分でアイロンをかけた白いコットンのシャツとジーンズに着替える

“なんかくうかな” そう思い、外に出た

いつものカフェはやめよう

今日はひとりだから、

カノジョはどうした?クリスは連れてこないのか?と、

クリスファンのあの店長がうるさいだろうからな

どこでもいいやと、ぶらぶら歩くものの

なかなか店が決まらない

pm5:00

早いな、もう陽が暮れてきた

アスファルトに映る自分の影が長い

結局朝から何も食べずに

イングリッシュパブに入った

“ギネスをパイントで、あとジョムソンをロック、ダブル下さい”

空きっ腹にしみるな…

10分と経たずに両方とも飲み干した

“ギネスをパイントで、あとジョムソンをロック、ダブル下さい”

これを何度繰り返したんだろう?

am2:00

目が覚めたのはリビングのソファーだった

人間というか、酔っぱらいというか、

ちゃんと帰巣本能って働くんだな

そんなことを思いながら

今度は本格的に思いアタマを抱えながら

冷蔵庫のペットボトルの水を一気に飲み干した

寝直そう、明日も仕事だ

朝には酔いもさめるだろう

酔っぱらいのアイツにも

エサをほしがり顔をなめるクリスにも

もう安眠は邪魔されない

目覚ましのアラームが鳴るまで

熟睡できるさ

アイツとクリス今頃は波の音でも聞きながら寝てるのかな…

ボクはソファーに戻り

クッションを抱いてまた眠りについた

am6:45

目覚ましの音で目が覚めた

さて、いつもと変わらぬ一週間の始まりだ

そう、カノジョとクリスがここにはいない

それだけを除けば…

2011.10.20