第57話「カノジョの鎌倉ライフ〜前編〜」

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平屋建ての一軒家の呼び鈴を鳴らすと

クリスがカシャカシャと音を立てて玄関先に向かってくるのがわかった

「お、クリス元気そうだな!」

ボクはしゃがみ込んでクリスの顔を両手でなでる

「チューオーフリウエーチョーオフキチーがナーンチャラー

部屋の奥からは、聞き慣れたカノジョの鼻歌

「ン?クリス~ 懐かしのダーリンが来たか?」

「ハイハイ、その懐かしのダーリンですが、お邪魔していいのかな?」

「ドーゾー♡」

2週間ぶりに会うカノジョは

古着っぽいパーカーにジーンズ姿で、

髪は後ろで結んだ所謂ポニーテールというスタイルは

今までに見たことのないスタイルだ

実は昨日のこと

少し酒に酔って、無性にひとりの部屋が寂しくおもえて

つい、カノジョに電話をしてみた

で、 “あいたい”といったら、“くればいいじゃん”ってことに

で、さっそく、週末の今日、ボクはカノジョに会いにきたってワケ

「元気そうだね」

「ン?元気だよ~」

キッチンに立ち、何やら料理をしているようだ

「キミにおいしいランチをごちそうしてやるから、そこで待ってなさい」

ン?どういう風の吹き回しだ?

コイツが料理なんて…

「どう、こっちの暮らしは? 退屈じゃない?」

「ンーン、ぜんぜん!毎日がパラダイス、チューオーフリウエーだよキミ~♪」

まあ、意味不明なところは変わってなさそう…

なんとなく、いい香りが漂う

「なに喰わせてくれんの?」

「海風漂うポトフかまくら風♡ あと愛情たっぷりの手作りハンバーグ♡ うへへ、うまそうだろ~」

ネーミングは美味しそうだが、どうにも、その笑いが気味悪い…

「れーぞーこにシャンパン冷やしてあるから、あけてちょーよ」

ふーん、今までにない展開だ!?

どーしたんだ、いったい?

シャンパンを開けて、グラスに注ぐと、

カノジョがキッチンからできたてのポトフを持ってきた

テーブルにポトフを置くといきなりボクのほっぺにキスをする

「いらっしゃ、ダーリン♡」

あっけにとられるボク

マイペースながら “やさしくなった” カノジョ

「じゃあカンパイ♪」

「あ、あー、カ、カンパイ…」

な、な、なんなんだこの変貌ぶりは!

まあ、嫌じゃないけど、、、

なんとなく慣れないし対応に困る…

ホントどうしたんだろう、この街は人を変えてしまうのか?

などと、思いながら、カノジョの手作り料理を一口

「あ、うまい…」

思わず口走った後、カノジョの顔を見てみる

両手で頬杖したカノジョの笑顔は今までに見たことのない可愛らしさだった

なんなんだ、コレ?

続く

2011.11.07