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キャマダの、ジデン。⑪シゲタデザイン事務所
鎌田浩宮・著
さ。Win8Clave.com
かかしさんこと、孫さんからリクエストもあったので、
自伝、再開です。
ちなみに、前回はこちら。
http://epstein-s.net/archives/4657
三軒茶屋にて鎌田家が再集合、
新生活を始める場面でぇございやす。
さて、小岩の實(みのる)おじさん家に預けられていた時は
母は夜のスナック勤め、
父は大阪で歌手?という事だったんだが、
再集合が可能になったって事は
2人とも新たに仕事を見つけられ
Windows 7 Clave たからであって。
父は、なんと實おじさんが以前勤めていた、
代官山にある印刷会社の営業マンとなった。
今となってはそのいきさつを誰も覚えちゃいないんだが、
仕事の当てがなくて、實おじさんに紹介を頼みこんだのだとしたら
相変わらず他力本願な人で、微笑ましい…。
母はというと、東京に上京して来た時に共同生活をしていた
兄である修おじさんが三軒茶屋で興した個人会社、
「シゲタデザイン事務所」に
写植オペレーターとして就職したんである。
写植と言っても、今の若い人、分かんねぇだろうなぁ。
物凄く大雑把に書くと、
タイプライターやワープロを、
価格的にも技術的にも、またフォントの種類でも
数百倍立派にした、文字入力の機械だ。
活版印刷以降、
パソコンが今のようになるまでは、
殆どの出版物・印刷物は、写植によって文字を組んでいた。
母は僕らを小岩に預けていた間、昼間は学校に通い、
写植オペレーターの資格を取ったんである。
修おじさんは、近所の三軒茶屋のお店のチラシのデザインから
有名な学校の案内パンフレットのデザインまで
大小様々な仕事を手掛けていた。
ここで母は、
兄妹の2人しかいないシゲタデザイン事務所で
修おじさんからお給料をもらえたおかげで
夜の勤めから、足を洗うことができたんである。
朝は子供を学校にやらねばならないから
出勤は10時にしてもらえた。
父母会のある時は、早引きさせてくれた。
鍵っ子となった僕と弟が寂しかろうと、
事務所の中で遊ばせてくれた。
事務所に上がると
「よお、しろ君、学校終わったか」
(前述の通り、母の家族=重田家は長野県人なのに「ひ」と「し」が言えない)
と修おじさんが優しく迎えてくれた。
.
壁には大きなビートルズのポスターが貼ってあった。
修おじさんも、實おじさんと一緒、
ビートルズの大ファンなんである。
母の淹れてくれたコーヒーをすすりながら
「おじさん、イマジンって曲はビートルズの曲?」
「しろ君、あれはジョンのソロの曲なんだよ」
と会話を楽しんだ。
ただ、あんまり弟とソファの上ではしゃぎ過ぎると
さすがに修おじさん、怒ったよ。
たまに仕事が空くと、事務所のある国道246号線の向かい側にある
タチバナというパチンコ屋に一緒に行って、
「しろ君、ちょっとだけだぞ」
と玉をもらって打たせてくれた。
仕事が早く終わった時は
「はじめ(母の名前)、もう上がっていいぞ」
と言って、母と弟と僕は並んで帰った。
それだけでも、早く夕ご飯にありつけるので有難いんである。
おじさんだけは残って、黙々と作業机で格闘していた。
子供の頃から、読書や絵を描くことが大好きだった僕にとって、
修おじさんは憧れの人だった。
サラリーマンと違い、自分のやりたい職種で
自力で会社を設立し、仕事の依頼も次々とやってきて、僕も大好きな、デザインの仕事をどんどんこなしていく、しかも優しくて、鎌田家の心配を常にしてくれている。
實おじさんから教わった音楽、
修おじさんから教わった美術、
どれが欠けたって、今の僕はありえないんです…。
つづく…
2011.10.25