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どこへ出しても恥かしい人
写真・文/鎌田浩宮
友川カズキさんを追った
ドキュメンタリー映画
「どこへ出しても恥かしい人」。
素晴らしかったです。
映りこむ、監督。
監督・佐々木育野さんの力量にほれぼれした。
友川さんの部屋で、一緒にめしを食っている。スタッフも一緒に、画面へ映りこんでいる。カメラは据え置きにしている。映りこんでいる監督やスタッフは、20代か30代だろうか。the great rollingflowerの名ギタリスト・オーツカさんを思い出す。若く、痩せていて、未成熟のように見えて、野武士のようにも見える。腹が減ってるのか?夢中にめしをかっこんでいるように見える。
これにより、書くのも野暮であるが、友川さんと監督・スタッフの信頼関係が、一発で分かる。
ライヴで友川さんが歌う。その背中のみを撮影する。1曲の最初から最後まで、カットを変えず、ずっと背中を撮影するのみ。友川さんがどのような表情で歌っているのか、分からない。背中越しに観客が映りこんでいるんだが、客席は暗いので、そちらの表情は分からない。その姿のシルエットは分かる。若者は、じっと聴いている。それで十分なのだ。
気づかれなくて、いい。
上映時間は64分。短いとは感じなかった。多くのシーンは、友川さんが博打をしているだけだ。それで十分なのだ。
ドキュメンタリーは、難しい。被写体を深く掘り下げられない場合は、その友人や知人や関係者にインタビューをしたり、過去の写真や映像を挿入したりして、作品を膨らませる。これは間違った手法ではなく、これにより素晴らしい作品となるケースは、多々ある。
しかし育野監督の場合、それをせずとも素晴らしい作品に仕上げた。これは、大した力量である。
友川さんとバンドメンバーをリムジンに乗せ、走らせながら演奏する。これがたまらない。登川誠仁さんと知名定男さんがオープンカーに乗っているジャケット写真を思い出す。アングルが変わり、リムジンではなくボックスカーであることが分かる。
その中で歌うドンパン節。ロックやフォークの2拍4拍ではない。1拍めの頭にアクセントを置く。このリズムこそが、友川さんだ。友川さんの豊かさ…怒りも何もかもがごっちゃになって、車内を揺るがす。そして扉が開き、セッションは新宿の街に漏れる。気づく人は少ない。この熱に気づく者は少ないのだ。ほぼいないとも言える。サイコーだ。サイコー。これが友川さんだ。
反応した方が、いい。
上映の後、友川さんのミニライヴがあった。僕はどのライヴでも、感情に身を任せ、声を上げる。しかし、この日の客の多くは若者で、じっと黙って聴いていた。友川さんは曲の合間に、安倍政権は独裁政権であり、民主主義ではない、まともじゃない、こんなにひどい世の中はないと、叫ぶように語った。
じっと聴いているのもいい。だが、その場で感情のままに声を上げ、独り暮らしの家に帰っても声を上げ、職場に行っても声を上げなければ、嘘だ。友川さんのような爺が1番イキがよくて行動を起こし、若者がぼんくらじゃ、どうしようもない。
友川さんの思いを受け止めるということは、それを受け止め、反応するということだ。反応するということは、体が勝手に動き出すということだ。体が勝手に動けば、それは自然に、他者や世界へのアクションとなる。体が勝手に動かなくなると、不感症になる。ばくちのどこが面白いのか、分からなくなる。
およそ30年前、無二の親友・加藤久直が友川さんを教えてくれた。あの頃の僕はあまりに未熟で、友川さんの良さを分からなかった。今、友川さんの素晴らしさに夢中だ。俺たちはトドだ。皆トドだ。
2020.02.25
Column&Essay
