私の2019年文化映画ベストテン 鎌田浩宮編

写真・文/鎌田浩宮

ドキュメンタリー映画だけを集めて、2019年の順位をつけてみました。
7位以降は、あまり面白くなかったため、ここには挙げません。
伊勢真一監督の「えんとこの歌」や、佐々木育野監督「どこへ出しても恥かしい人」は2020年に観たので、来年ぜひ挙げさせていただきますね。

 

 

 

1位 主戦場

 

文句なしの1位。
これほど説得力のある作品を僕も創らなくっちゃいけないと(足元にも及んでいませんが)痛感しました。

上映のあった渋谷・イメージフォーラムの方と立ち話をさせていただいたんですが、街宣車が来るなどの嫌がらせは、一切なかったとの事でした。

であれば川崎市・KAWASAKIしんゆり映画祭での上映中止騒動は、なんだったんでしょう?この映画に対し訴訟を起こすかも知れない、起こさないかも知れない、まだ海とも山とも分からないことへ、臭いものにはフタ、事なかれ主義、ヤサシイ配慮をしているだけ。頭の悪い奴等。

 

 

2位 i-新聞記者ドキュメント-

 

望月さんが女性だから、その普通なそぶりを、個性的と受け取っている観客が多いのではないか?だとしたら、それは差別だ。

望月さんのエネルギッシュな個性溢れる映画、と評するのはおかしい。望月さんが普通なのであり、人間的なのであり、まっとうな人間であり、ブンヤなのだ。ほかのブンヤが腰抜けなだけ、血の通ってないのっぺらぼうなだけなのだ。

いや、ジャーナリストだけではない。庶民全体がそうなのだ。なにもアクションを起こしちゃいないのに、はなから諦めている。腰抜けだ。

確かに、この国には、いや世界中に希望がない。願望や要求は通らず、踏みつぶされる。しかしそれと、普通に生きる事をやめてしまう事を混合してはいけない。何千年も前から、大昔から、市井の人は、庶民は、虐げられてきた。しかしそれでも多くの人は、普通のふるまいを続けてきた。普通を、やめなかった。

食べたいように食べ、麺をすすり、ケーキを食み、興味のある所へ向かい、訊きたい事を訊き、話したい事を話す。その事を、震災で学ばなかったのか。自分を信じ、訊きたいことを訊き、自身で判断せねば、死へ向かってしまうのだ。同調する事だけを重んじ生きていては、死んでしまうのだ。生きていくうえで、本当に肝心な事は、何か。この映画を観て、もう1度考えてほしい。

望月さんのお父様も、ブンヤだったそうだ。お父様から学ばれた事も、多いのかも知れない。

 

 

 

3位 陽のあたる町

 

名無シーさんに教えてもらい、観に行ったらすんごくよかった。振り向けば、「ドッグマン」「帰れない二人」に出てくる町も、こんな所に住まなくてはならないのかと嘆くような廃墟だった。しかし「陽のあたる町」には、人間味あふれる人々がいる。一方で、廃墟はアートのようでもある。

そこに住む人々への監督のまなざしは、「家族を想うとき」の中盤で、介護の仕事をしている母が、独り暮らしの老女を急遽訪ねなくてはならなくなり、「じゃあ僕らみんなで行こうよ」、不良のレッテルを貼られた息子が言い出し、家族思いの娘も笑顔で、4人で父の車へ乗り込んで、歌さえ歌いながら向かい出す…あの涙なくしては観られないシーンと似ている。

この映画に出てくる、ジョージアの町。一体、地球上のどこにこんな町があるのだろう?でも、そこに住む人達は、僕らと変わらない事を認識しなければならない。

 

 

4位 ヨーゼフ・ボイスは挑発する

 

80年代、中学生の頃から憧れだったボイス。社会彫刻。この作品では、彼のプライヴェートな側面には触れていない。そこが物足りなくもあるけれど、ボイスの映画が生まれたこと自体を歓迎します。

 

 

 

5位 盆唄

 

テアトル新宿、初日の舞台挨拶。福島のほうぼうから、この映画のために駆けつけた人、人、人。涙を浮かべ、高揚している。出演された双葉の方々が、銀幕の前で太鼓を叩き、歌う。駆けつけた福島の方々と僕ら東京の者が、客席通路で輪になって、盆踊りをする。ずっと続いたし、ずっと続けばいいのにと思った。

「パイナップルツアーズ」から大好きな中江監督。常にコメディーの要素を持ってうちなーを描いてきた方が、ユーモアを無理に盛ることなく描いていく。

 

 

 

6位 米軍が最も恐れた男 カメジロー不屈の生涯

 

カメジローさんの膨大な日記。映し出されて、たまげた。字が汚ぇ~!汚いとは大変失礼ですが、読みにくいのだ。でもって、何十冊いやもっとある。全部読んで、カメジローさんという偉大な方と、うちなーと、米軍と、日本政府を紐解く。

本当に大変な作業だったと思う。とにかくほかに、資料がないのだ。特に映像は残っていないし、録音されたものも乏しい。戦中戦前に至っては、沖縄戦で何もかもが残っていない。

NEWS23で筑紫哲也さんと共に働いていた、佐古忠彦監督。ぜひ、筑紫さんの分もご活躍いただけたら!応援しております。

 


2020.02.28