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私の2018年映画ベストテン 名無シー編 後編
新春恒例
名無シーが選ぶ
映画ベストテン
連載最終回。
2018年に観た映画
の中
で、この3本
を、ベスト
としました。
では、どうぞ。
既に大分長くなってしまったけれど、2018公開映画のベストは、どれなのかと考えて思い浮かんだ三作品を以下に。
想田和弘「港町」
ワイちゃんの流す網、クミさんの真偽不明な重い話、クミさんを慕っているのか監視しているのか判らないクミさんの友だち、その他の皆さん。緊張感と完全に寛いだ空気の同居したあの牛窓の景色。何も言う言葉が出て来ないけれど、物凄い引力で吸い込まれて行く。
(編注:名無シーさんと鎌田浩宮による「港町」についての対談を、こちらで読む事ができます)
ホアン・シー「台北暮色」
仕組みの面を説明してしまうと、隠喩を、登場人物達を主語にする統語軸上の提喩として、登場人物達の内面を表す象徴的な行為に結びつけて、それによって登場人物達の見えない内面に気づかせるための仕組みがあった。
観客をその罠に捉える仕組みが作品全体至る所に張り巡らされていて、罠に上手く掛かって、登場人物達の見えない内面に気付いたとき、何もかも合点が行く感じだった。現実の生活の中で誰かの内面に気付いて、それまで気付けずにいた自分が何をやっていたんだろうかと悔悟するときの感覚に似ている。
この映画にはどぎつい画作りは一切無い。画の質に特別な引っ掛かりを設けなかったことは、登場人物達の内面の見えなさ同様、まるで日常そのものだった。我々の日常では、多くの場合、家族の内面すら見えないことが多い。この映画はそこを意識した節があった。
映画の最初の方で、この映画の最重要人物とも言えるリー君が、一緒の地下鉄に乗り合わせた同じアパートの住人のシューが持っている小鳥を運ぶ箱に興味を示す。このシーンは後でとても大切なシーンだったと判る。
シューは箱の中のインコを元から飼っていたもう一匹のインコと一緒に飼い出すものの、新しいインコは窓から逃げていってしまう。リー君は、一度、道観(?)の屋根に登って逃げたインコを捉え様とするけれど、すんでのところでインコに逃げられてしまう。
シューの生活が明らかになるにつれ、逃げたインコが自由の象徴だったと気付かされる。それが分かるように、左から右へ水平にパーンしながら自由になれない登場人物達を写して、鳥が逃げた自由な空へ斜めにティルトして行くカメラワークが作中二度使われる。
シューとフォンの二人は、少しだけ自由な空に近付ける高架の上を子供の追いかけっこの様に走り、高速の高架も車で走る。でもリー君だけは、高架の下で同じ円をぐるぐる描き続ける。
リー君は人前では常に気丈にしているが、フォンの仕事を手伝っているとき、「飛んでいる鳥は止まっているのだろうか」と、彼の内面に気付かなければ言葉遊びにしか聞こえない質問を口にする。気付いたとき、その言葉は深く胸を刺す。
ジョセフ・コシンスキー「オンリー・ザ・ブレイブ」
コシンスキーは、全作、魂についての映画を撮っている。「トロン:レガシー」では自らの魂をゲームの中に閉じ込めた男が出て来た。「オブリビオン」では無限に複製された女の片思いと、複製された男による、コピー元の男の魂の代行が描かれた。
実話をベースにした今作は、仲間達の魂が一人のたまたま生かされた男に憑依したかのように引き継がれる話だった。今作は、予告編からは全く予想できない感じでそのコシンスキー節がいきなり展開され、そこに至って、ショックの中でああ、やっぱりコシンスキーだと思わされた。
これら三作品は皆2018年新作のベストワンだった。
2019.01.15
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