第二十八夜:「めぐり、廻る」

diary_meguri

忙しなさこの上ない日々、皆様は如何お過ごしでしょうか?
私は元気です。 若女将のけい子です。
色々あったので、箇条書きのように先週を振り返ります。
 
 
  
<先週金曜>
祖母の三回忌があり、母の実家の方に一泊してきました。
早いものです。 もう二年かお祖母ちゃん・・。
法事も一通り終わり、母がか細く言った言葉。
「アンタも長野だし、美香子(妹)もいつか嫁に行くもんね。
私らの老後、どうなっていくのかなあ・・・」
そんなん、私がどうだってするよ。 私の目が黒いうちは。
そんな不安、持たないで欲しいよ。
そんな寂しい事、言わないでよ・・・。
 
 
 
<今週日曜日>
御泊りになっていた、若い夫婦の方が大喧嘩をなされました。
叫び声や物が壊れる音を仲居が聞き、駆けつけました。
ああいう現場に遭遇すると、人は何も言えなくなるものなんですね・・・。
急遽部屋をもう一つ用意し、お二人は別々にお泊まりになる事に。
お二人は離婚問題を抱えていたそうです。
その後、その御夫婦は一人ずつ私のところにやってきて、
丁寧に謝罪を述べられました。その様子を見るにつけ、
二人とも普段はとても穏やかな方々なんだろうと思いました。
それでも当事者、男女間にある愛の事柄は、
人を豹変させるし、見失わせるのでしょうね。
 
 
 
<月曜日>
営業のシミズさんと飲みに行きました。 シミズさん行き付けの店に。
色々私が疲れているのを察してくれたのだと思います。
年齢は私より上の、兄貴のような方です。 この業界の大先輩です。
「忙し過ぎて自分見失って、別世界に行くなよ?
けい子、お前は本当に頑張ってきてるからさ。 俺は知ってるから」
酒のせいもあり、ポロポロと泣き出す私を余所に、
シミズさんは店長と共にガンダム話に華を咲かせていました。
ええ、お料理が超絶美味しいのに、何故かガンダムのプラモが
店中そこかしこにあるという不思議な店なのです、ソコは。
そしてシミズさんと店長のヒロシさんが言いました。
 
「じゃあ、みんなで静岡に行くか!」
 
え!?じゃあって慰安旅行的に温泉とか!?ええ!?シミズさんカッコイイ!!
え!?ガンダム!?え!?等身大の!?え!?そのためだけ??!!
 
 
 
<さっき>
女将と少しやりあいました。
しかし、何故か今日は違いました。
大女将の言葉が少しだけ理解できたように感じたのです。
大女将なりのお客様への眼差しやおもてなしの意味、
比べ物にならない程のお客様方と対峙してきたからこその蓄積。
お客様に幸いを感じてもらうには、こちらも幸せでなければならない、
不幸を背負った人間が、そう思いこんでいる人間が
まともな接客などできるはずがない、という強い理念。
少しだけ、ほんの少しだけですが、大女将を見直しました。
彼女が見てきた景色を、私は感じたのかもしれません。
 
ですが、勝手に大きな買い物して、
それを経費で落とそうとした事だけは許しませんからね。
 
 
 
 
今週の事をざらりと書き出してみて、私が想う事。
幾重にも重なり、拡がる情愛の只中に、私はいるんだという事。
その情、一つ一つが私を強くする。 私を守っている。 私を導いている。
今はそんな気がしています。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

2011.03.02