第九十九夜:「コスモスなどやさしく吹けば死ねないよ」

こんばんわ。
今晩でこちらともお別れとなります。
最後にもう少しだけ、お付き合い下さいませ。
 
最後の夜という事で何を書こうか考えておりました。
どうにも定まらず、書いては消し、書いては消しを
繰り返しておりました。
これまでの夜を振り返るに、
語る事も見つからない白夜もあれば、
語りたくて仕方が無かった闇夜もありました。
孤独は人に多くの事柄を起こさせるものです。
 
そして結局今晩は、私が息子の為に書いた
絵本の文を掲載して終わろうと思います。
書いたのは息子が四歳の時でした。
しかしこの絵本を息子に見せる事はありませんでした。
その頃の私もまたどん底にいて、
ただただ希望に縋ろうと、もがいていました。
書き終わったお話を読み返した私は
少しヘビーに感じてしまい、
そのまま封印してしまいました。
 
何をこのお話から思われるかは分かりません。
ただ、当時の私の心境だったんだろうと思います。
今ならば表に出しても良い気がします。
ま、文学部くずれが書いたおかしな物語です(笑)
気楽にどうぞ。
 
 
 


 

 
「ほしくま」
 
 
 
 
【げつようび】
 
 
 ぼく、くまです
 あ、いまはベランダに吊るされて
 干されてるから・・・干しぐまです!
 
 ぼくのともだちはこよちゃん!
 あ、お部屋の中からみてるみてる!
 へへ! 
 なんかポーズとろうかな? あ、ムリみたい・・・
 おみずでからだがおもいんだ
 ぼくはさっきこよちゃんママにあらって
 もらってベランダで干してもらってるんだ
 ぼくはしろいからこよちゃんとあそぶと
 すぐにまっくろになっちゃう
 こよちゃんは、すごいからなあ・・・
 
 さあ、はやくかわかないとなあ
 ぽたぽた ぽたぽた
 ぼくからおみずがたれていく~
 あ、おしっこじゃないよ おみずだよ?
 はあ、ヒマだなあ~
 はやくこよちゃんとあそびたいなあ・・・
 
 よるになりました
 さっきこよちゃんママがぼくをぎゅううってしたけど、
 まだしめってるからダメだって
 あ~あ~
 
 
 
【かようび】
 
 
 こよちゃんはほいくえん
 ぼくは干しぐま・・
 あれ? こよちゃんパパ、かえってきたのに
 もうでかけるんだ いそがしいんだね
 あ、いまパパ、ぼくをみてわらった!
 へへ! 
 ぼくはこよちゃんパパにかってもらって、
 こよちゃんのともだちになったんだ
 
 よるになりました
 こよちゃんママこない・・・さみしい・・・ 
 そんなぼくにおほしさまが、はなしかけてくれた
 
 「くまさん、お加減どうですか?」
 
 「ぼく、おかげんわるくないよ?おほしさまは?」
 
 「私はずっと変わらないから元気よ」
 
 「そうなんだ あきない?」
 
 「あきる? あきるってなあに?」
 
 「えっと、おなじことばっかしてるとなったりすること」
 
 「わからないわ 同じことなんて一度だってなかったわよ?
  よく目を開いて周りを見ていると毎日ぜんぜん違うわよ?」
 
 「ええ~うそ~ぼくわかんない~」
 
 「ふふふ、いつかくまさんにもわかるわ」
 
 
 
【すいようび】
 
 
 あめふってる
 ママ、あめふってるよお~ いれて~
 おへやにいれて~
 よごれちゃうよ~ またしめっちゃうよ~
 
 
 
【もくようび】
 
 
 きょうはこよちゃんのおたんじょうび
 おめでとう~ こよちゃん、おめでとう~
 あれ? でもこよちゃんパパいない
 なんでだろ? きょうもおしごとかあ
 あ、でもパパからのプレゼントあったね
 よかったね こよちゃん!
 
 あ、ぼく、たんじょうびさんかできてない!
 まだここにいるよ~!
 なんで~! なんで~! なんで~!
 
 よるになりました
 
 「もうなんにちたったんだろ? 
  ぼく、もうほんとうに干しぐまになったみたい・・・」
 
 「ほし? じゃあ私と一緒なのね」
 
 「そうなの?」
 
 「そうよ 何も変わらず そして変わるのを見守るのが、ほしよ」
 
 「ええ~うそ~ぼくわかんない~そんなのできない~」
 
 「ふふふ、いつかくまさんにもできるわ
               だいじなものがみつかったら」
 
 
 
【きんようび】
 
 
 こよちゃんママのでんわがなって、
 こよちゃんとこよちゃんママ、
 はしっていった
 
 おーい、いつとりこんでくれるの~
 
 
 
【どようび】
 
 
 あさから、こよちゃんとこよちゃんママ、
 ずっとないてる
 どうしたの? どうしたの?
 
 そっか、こよちゃんパパしんじゃったんだ
 
 あれ? ぼくかわいてたはずなのに
 おめめからおみずでてきちゃった
 なんでかな? なんでかな? なんでかな?
 
 でもだいじょうぶ  ぼくかわいてるよ
 だからこよちゃん、ぼくのからだで
 おみずをすってあげるから、
 ぼくのおなかをつかってよ
 ねえ、こよちゃん ねえ、こよちゃん
 ないていいよ ないていいよ
 
 よるになりました
 
 「ぼくのだいじなものみつかったよ、おほしさま」
 
 「そう? よかった」
 
 「ぼく くまだけど ずっとみまもるんだ」
 
 「うん 私もくまさんを見守っているわ」
 
 「そうなの?」
 
 「ええ」
 
 「ありがと・・へへ」
 
 「こちらこそ ありがとう ふふふ」
 
 
 
【にちようび】
 
 
 なんどめの にちようびかなあ
 あ、こよちゃんかえってきた!
 うまれたんだね、あかちゃん!
 
 あ、かよちゃん!
 こよちゃんパパにそっくり!
 
 へへ! こよちゃんもママになったね!
 こよちゃん、なんどもあそんでくれて、
 なんどもあらってほしてくれてありがと
 ぼくかわいてるよ!
 あ、かよちゃんもぼくとあそんでくれるの?
 ありがと!
 
 ぼく、くまだけどずっとみてるよ
 だからあんしんしておおきくなってね
 ぼくはほしぐまだからね!
 へへ!
 
 
 
 
 
 
 
今宵まで長らくお付き合い頂き、
本当にありがとうございました。
何処かで皆様と出会えたら、そんな幸いは御座いません。
では、本日記のタイトル、そして第一夜で書きました、
鈴木しづ子さんと同じように締めくくりたいと思います。
 
 
「それでは皆さん、ごきげんよう。 そして、さようなら」
 

 

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

2012.12.05