事業実施候補者辞退について

構成・鎌田浩宮

 

 

この度、ココトラがマスコミ各社へ、こんな文書をお送りしました。

関係者の皆様へ

平成27年度遊休施設管理・運営事業/旧寅さん会館・やすらぎ会館管理運営者
事業実施候補者辞退について(ご報告とお詫び)

平素からココトラの活動にご理解とご協力を賜り、誠に有難うございます。
さて我々ココトラは、小諸市が昨年4月に実施した「平成27年度遊休施設管理・運営事業/旧寅さん会館・やすらぎ会館管理運営者公募」に応募し、管理、運営する事業実施候補者として選定され、今日までその準備を進めてまいりました。しかし期日である本年3月31日までの履行が困難な状況となったため、誠に残念ではありますが、本事業者を辞退することと致しました。これまでご支援頂いた多くのファンや関係者の 皆様には、ご期待に添えず心よりお詫び申し上げます。
このような結果を招いたのは計画の甘さや、資金不足など、ひとえに我々の力不足であったと痛感しております。以下に、このような結果に至った経緯を、簡単ではございますがご説明させて頂きます。
まず、公募が行われた時点で我々応募者と事業主たる小諸市が簡単に考えていた点、それは「権利」への対応です。旧寅さん会館の所有者は小諸市ですが、収蔵品の「著作権」や、出演者の「肖像権」は、映画「男はつらいよ」の制作会社である松竹株式会社様及び関係者様にありました。しかしながら当初は市も我々も、その「権利」についての認識が足りないまま本事業へ臨み、それが準備を進めていく段階で明らかとなり、最終的には各段階で松竹様等の許諾なしには事業を進められない事が分かりました。
また、松竹様より具体的な事業計画や運営内容、収蔵品の再調査と展示企画の具体案、交通アクセスや近隣施設(懐古園など)との協力体制、過去の問題点の解決方法や施設全体のリニューアルによる入場者数の見直しなど、資金計画を含め多くのご指摘をいただきました。これらのご指摘はどれも必須条件でありましたが、市との協議の結果、実施には巨額の費用が必要なこと、またこれらの課題を時間内に解決することはもはや不可能との判断から、誠に残念ではありますが今回の結論に至りました。
したがって、本事業に関しましては一旦白紙に戻させて頂くこととなりました。また、先に述べた権利の問題に関しては、我々が提案した内容でなくとも配慮必須な事項であるため、会館のあり方を含め今後どのようにすべきかは小諸市と松竹様との協議の上、最良の道をご検討頂くこととなりました。
最後に、この度はこのような事態を招いてしまい、ご支援ご協力いただいた多くの皆様には多大なるご迷惑をおかけし、本当に申し訳ございませんでした。
我々としても忸怩たる想いではありますが、小諸を愛した渥美清さんと、そのきっかけを作った井出勢可さんの想いを後世に残すという気持ちには何ら変わりありません。これからも上映会などを通じて寅さんと小諸を愛して頂く活動を続けてまいりますので、引き続き温かいご支援を賜りますよう心よりお願い申し上げます。

2016年4月
ココトラ代表 一井正樹

 

 

これを受け、長野県最王手紙・信濃毎日新聞2016年4月6日(水)朝刊の地域面にて…。

寅さん会館 活用白紙
小諸 事業計画まとまらず

小諸市は5日の市議会議員全員協議会で、古城の旧「渥美清こもろ寅さん会館」と同館地下の「やすらぎ会館」を、東信地方の有志団体「コモロ寅さんプロジェクト『いつもココロに寅さんを♪』」(通称ココトラ)が新たに運営する計画を、白紙に戻すと報告した。計画検討期限の3月末までに具体的な事業計画がまとまらず、ココトラ側が辞退を申し出た。
寅さん会館は市出資の第三セクターが「男はつらいよ」シリーズ主演の俳優・故渥美清さんゆかりの品を展示したが、経営難で2012年に閉鎖。三セクから寄贈された市が、自主財源で施設と収蔵品を活用する事業者を15年3~4月に公募、カフェなどを併設した有料展示施設とするココトラの事業計画を選んだ。
その後、同シリーズの著作権を持つ松竹側から、長期継続できる堅実な収支計画や施設の修理が必要では‐との指摘もあり、ココトラが事業計画を練り直していた。
ココトラによると、両会館の修理費は最大約500万円。インターネットで資金を募る方法を検討したが実現しなかった。収支計画や具体的な展示計画を期限内にまとめることが困難だったという。
ココトラ代表の一井正樹さん(35)=御代田町=は取材に「多くの寅さんファンの期待に応えられず申し訳ない」と話した。市経済部の清水哲也部長は全協で「私どもの認識が甘かった部分がある」と述べた。松竹は「会館を復活させようとの試みがありがたく、感謝している」としている。
両会館の施設・展示品の活用は再び宙に浮く形となり、市はあらためて活用方法を検討するとしている。

 

 

 

そして、同じ日の読売新聞長野県版地域面にて…。

休館中の長野・小諸「寅さん会館」、再開を断念

2012年に休館した俳優の渥美清さんゆかりの品を展示する「渥美清こもろ寅さん会館」(長野県小諸市古城)について、今年夏頃の再開を目指していた市民団体「いつもココロに寅さんを♪」が、再開を断念していたことがわかった。
映画「男はつらいよ」シリーズについて権利を持つ映画制作会社の松竹と交渉を続けてきたが、了承を得られなかったという。
会館は、経営難などを理由に12年に休館。その後、当時の所有者から展示品と建物を寄贈された小諸市が15年4月に管理者を公募し、同団体が選ばれ、再開に向けた準備を進めてきた。
同団体によると、松竹側からは、運営の継続性について疑問視されたという。資金不足もあり、再開を断念することにした。
同団体代表の一井正樹さん(35)は「寅さんの魅力を後世に伝えたかった。多くのファンが期待を寄せてくれていたのに本当に申し訳ない」と話した。
小諸市は今後、会館の建物や収蔵品の活用方法について、改めて検討するとしている。

 

 

 

新聞では
分かりにくい
こと。

 

まず、ココトラの文書から解説します。
渥美さんから前寅さん会館館長・井出勢可さんに寄贈された収蔵品は、その時は井出さんに全ての権利があった。
しかし、市に寄贈された時点で、収蔵品の肖像権や著作権は、再び松竹や映画出演者などに返ってしまうのだった。
これは法律を熟知していないと分からない事であり、市もココトラもこの点を知らなかった。

一方、松竹は企業である。
寅さん、渥美さんというブランドイメージを落としたくない。
1度財政難で閉鎖され、ブランドイメージを落とした施設を再開するには、それなりのビジネスにならないのであれば、肖像権・著作権を盾に取り、決して許諾しない。
これは、企業という利潤を追求する立場にすれば、至極まっとうだ。
危ない橋を渡り、ハイリスクでローリターンなら旨味はない。

しかし逆に言えば、既に没後20年となる故人だ。
ネームバリュー、知名度は主に若年層を主に衰えさえするものの、これから上がることはまずない。
それこそ大袈裟に書けば、ディズニーランドのようなレベルでの周到なアイデアと予算がなければ、松竹は首を縦に振らないだろう。
つまり、ほとんどのアイデアはハイリスク、NGとみなされるのだ。

僕は先日までココトラに在籍していた。
だから知っているが、経営の素人にもかかわらず、それなりの事業計画を松竹に提出していた。
しかし、そういった部分を抜きに新聞記事にされてしまうと、県民の読者には何が起こりこんな結末になったのか分かりにくい。

 

小諸市は
この財産を
どうしたいのか。

 

市は、この事業計画を達成するには相当の年数がかかる事は、松竹との折衝で分かったはずだ。
であれば、2016年3月末までという期限を延長してもよかったのではないか。

また、僕はココトラ在籍時に、経営コンサルタントと広告代理店に相談する事をココトラ幹部に提案した。
広告代理店というプロの目から、少ない予算でどんなテーマパークを造り上げることが可能か見てもらわない事には、松竹には勝てないだろうと思ったからだ。

勿論ココトラには、そんな人を雇う金はない。
しかし、無償で担ってくれそうな友人知人はいたので、そこが残念だ。

今後は小諸市が、推定数百万とも数千万とも思しき価値のある収蔵品を本気で活用する気があるのか、それとも他地域の他団体に売却してしまうのか、コンサルタントや代理店と綿密な相談の上で考えてほしい。

そして、元々ココトラは、会館再開をアピールする団体ではあったが、管理運営権を自らに要求していた団体ではない。
ココトラは元のポリシーに戻って、会館再開をアピールしていけばいいのだと思う。


2016.04.11