渥美清こもろ寅さん会館にて「男はつらいよ・噂の寅次郎」35㎜フィルム上映

文・鎌田浩宮
動画撮影・鎌田浩宮
写真・大島Tomo智子/鎌田浩宮

どしたら
お客さん
増えるのか。

勉強会
行きまくる
わたしたち。

 

もー、冒頭からぶっちゃけちゃいますよ。
もー、赤字なんですわ。
毎月、上映会、まっかっかなんですわ。
皆、頭抱えて、どーしよーと相談しきりっすわ。

先日、お知恵を拝借するために、ご近所の千曲市の勉強会「第3回 みんなで街まちミーティング」にも行ってきた。
すげーぜ、千曲市。
NPOなど様々なグループが町おこしを頑張ってる。
それに加え、なんと高校生が、担任の先生の指導もあり、課外授業とでも言うのだろうか、町おこしのアイデアを出し合ったり、地元の特産品の販売のお手伝いをしたり、ガンガンに活動しているのだ。

発表する高校生達。

俺らが高校生だった頃は、シラケ世代の残党だったりして、世の中の事はおろか、地元の事も地域振興にも関心がなかったではないか。
全く情けないぜ。
よくオトナが「今時の若者は駄目だ」と世代論をぶつ。
が、今の若者に限っては、それはお門違いだ。
今の10代、20代は、俺らのそれと比べても全く真面目で、酒も煙草もやらず、地道に生きている子が本当に多い。
ひいてはSEALDsやT-nsSOWLなど、立派な活動に燃えている子も沢山いる。
さあ、小諸市の若者は、ダイジョーブだろうか?

 

4月からは
昼夜の
2回上映。

 

で、負けてはおれんとバカな頭で考えた。
寅さん全作フィルムで観よう会」は4月から、午後3時の回に加えて、午後7時の回も加え、2回上映とするんです。

で、小諸市内の小中高校にチラシ配布をお願いしたり、広報こもろに添付して市内全世帯配布もするんすわ。

さらにさらに、上映後のお楽しみとして、県内外で活躍しとる人を呼んで色々喋ってもらおうという
園(その)まち講座」も開講するんですわ。
寅さんとは関係ないテーマでも、面白ければ何でも喋ってもらっちゃって、観客も知性とか教養とかいろんなものを磨いてもらおうかという主旨でござんす。

第1回は4/9(土)昼の回の上映後、「千曲の枯れた桜並木を復活させた男」と題して、NPO法人・千曲環境緑化協力会 堀内太一さんをお招きするぜ。

鎌田が制作したこのCMを、観てたもれ!
シークレット・ゲストの告知もあるでよ。

すっかり雪化粧の浅間山。

2016年3月12日、土曜日。
午前11時45分に僕らは、渥美清こもろ寅さん会館に集合。
年度末の忙しさで、駆けつけられたスタッフも、いつもより少ない。
それでも約1時間で、ホールを「映画館」に設営するのだ。

会場に欠かせない物の1つ。空調だけでは寒いのだ。

僕は、吟味に吟味を重ね、東京で買ってきたお返しのホワイトデーのプレゼントを、女性スタッフに配った。
1年間ありがとうございます、と言葉を添えて。
しかし!
なんとそのお菓子、セブンイレブン小諸店でも売っておるではないか!
重い荷物背負って持っててきたっちゅーのに、なんてこった。
しかも、そんなに安くないぞ。
スタッフに、コンビニで慌ててテキトーに調達してきたと思われたらたまんない。
僕は見苦しく、言い訳をして回ったが、真意は伝わったのだろうか…。

ここ数日、小諸には雪がぱらついた。
今朝も、降った。
でも、すぐに止み、晴天。
相変わらず寒いこの日、お客さん、来てくれるだろうか…。

会場内では、本日封切「家族はつらいよ」の前売券も販売。
1枚も売れなかったのであるが…。

名古屋神奈川からも、お客さんが来て下さった。
開映前、そんなお客さん方と談笑するのも、楽しみの1つ。
「おお、随分太っただな!」
年輩の人から、お腹もさすられる。

午後3時過ぎ、我らがココトラ代表・一井正樹の挨拶に続き、上映が始まった。

相変わらず騒ぎを巻き起こすお兄ちゃんを、慌てるでも怒るでも同情するでもなく、少し俯瞰した所から見つめる、妹。
馬鹿で愚かな兄を、好きでたまらないのだ、じっと見つめている、見守っている。
そんな倍賞千恵子さんの演技が、目が、素晴らしくてたまらない。

毎月販売しているたい焼き。
今日はお店のスタッフさんが直々に販売して下さった。

 

その
美貌が
罪であることを
彼女は
知らない。

 

上映後の挨拶で、僕は手短に、大原さんの一生を語った。
早く両親が離婚し弟と別れ、時々会うものの、別れる時は号泣し合ったこと。
60年代に出演した「網走番外地」シリーズで出会った高倉健さんを生涯の兄と慕い、大原さんの死後、書棚には健さんの写真アルバムが置かれていた事。
2度の離婚、ギラン・バレー症候群、若く孤独な死。
倒れていた遺体のすぐ傍に、携帯電話があった事。
しかし、生涯孤独な役者馬鹿の美しさは、この35㎜フィルムと皆さんの胸に、久しく刻まれるという事。

それを聞いていたスタッフの1人が、涙が出そうだったと言ってくれた。

 

終わり

季節

 

しかし、だ。
この日の来場者数は、わずか22人。
最低動員数を更新してしまった。
地元小中高校全校生徒にチラシを配ったが、それを見て来て下さった方は1人だけだった。
赤字が、さらに、増す一方。

この上映の前日は、東日本大震災のあった日だった。
震災直後、被災地のあちこちで、寅さんはじめ様々な映画が、体育館や公民館で臨時上映された。
お笑いは不謹慎とされたあの頃、こうしたコメディー映画の上映が、どれだけ苦しみの淵にいる被災者の皆さんの心の、慰めとなった事だろう。
そしてきっと今でも、仮設住宅などで寅さんを上映したら、どれだけ被災した方々に喜んでもらえることだろう。
しかし、小諸では、もうどうやら、宝の持ち腐れ、上映は必要ないようだ。
もう、この地で上映する意義は、なくなってしまったのかも知れない。
既に、僕らの赤字は、限界にきている。
東京から小諸への、交通費も宿泊費も、馬鹿にならない。
もう潮時だというのなら、僕らはここを去り、被災地で上映する事にするよ。


2016.03.14