第4便「日本で1番、ナウい区の。」

取材/写真/文・鎌田浩宮

 

 

前回は、イノッチやケラリーノ・サンドロヴィッチもいるに相違ない、サッカーW杯セルビア代表について書いたんであるが、今回もサッカーの話をしようではないか。
W杯開会式の翌々日、6月13日の早朝5時30分、NHK総合にて、『アジアンスマイル 「アラブの誇り シュートにこめろ~イスラエル サフニン~」』というドキュメンタリーが放送されていた。
こちとらブッチギリ失業中にてせっかくのチャンス、全試合をオンタイムで観てやろーではないかと息巻いていたものだから、この番組も観たんです。

http://www.nhk.or.jp/asiansmile/onair_sogo/20100613.html

どんな内容かってゅーと、イスラエルでもサッカーは盛んなわけで、なんとリーグの中に唯一アラブ人のチームもあるんです。
この試合がすごい。
観客は圧倒的にイスラエル人。アラブ人はごくわずか。そしてそのイスラエル人が、あらん限りの憎悪を剥き出しにして、アラブ人の観客を罵るのだ。
中指を立てるのは当たり前、お前らは死んでしまえという類の、とても翻訳できないような言葉を浴びせまくり、じきに虐殺が始まってしまうのではないかといったほどの切迫しきった場内。
それでも命がけで、文字通り必死に応援するアラブ人。
圧倒的なマジョリティーの中で、常時ヒステリックな状況の中で、どれだけマイノリティーが生きにくいのか、を描ききっていたぞ。
これも、サッカー。
これも、遠くない世界の話。
・・・、すごい番組でした。早朝だったけど、観られてよかった。
と同時に、W杯開催中にこの番組を放送したNHKにも、拍手。本当に、受信料お支払いする。

さて、トイレの話にしましょ。

原宿、
表参道、
代官山、
広尾、
恵比寿、
渋谷。

ナウい。
死語しか浮かばない。
ナウすぎる。
恐らく地方の人が、東京都内で1番行ってみたい場所だらけだ。そしてこれ、全て渋谷区なんである。
これはもー、行くしかない。

渋谷区役所へ。

shibuyakuyakusyo

この写真の図中の、下部をやや斜めに横断している青い建物が、渋谷区合同庁舎。すごく横長の建物なんですよ。しかも、写真には写ってないですが、かなり古い建物です。ま、こーいったものは、少し古いほうが、フウカクがあっていいのですが。
しかし。
この区役所、すごさは、中に入ってから分かるのでした。

shibuyakuyakusyo (8)

すぺぺ!
なんと、中にドトールコーヒーがあるんよ。
さすがオシャレ渋谷区。間接照明もス・テ・キ。
隣接するCCレモンホール(うちらの世代だと、渋谷公会堂と言われないとピンと来ないんですが)からも気軽に入れるようになっていて商売上手のSHOW by ショーバイ、これはさすがとしか言いようがナッシング。
このようにですね、今までに通った官公庁と違わず、外見は古くとも、内装はきれいなのですよ。

さて、トイレを見せてちょ・・・。
うーむ。この建物の上の階は区議会の議事場になっていて、その階はスーツ姿の男しかいない。私のような風情は誰もおらず、非常に取材しにくい。
しかし、なんとか全階チェック。
横に長~いこの建物、全階、中央部分と左端の2箇所にトイレがあり、まずは中央を。

shibuyakuyakusyo (7)

もー、問題なく、シブヤ。いわゆるウォシュレットタイプ。落書きも一切ありません。
さて、距離的にもしんどいが、今度は左端を全階調べるべし。階段を、廊下を、歩きまくれ。

 

shibuyakuyakusyo (2)

あら、廊下の壁にはGLAYの写真。さすがシブヤ、と思いきや、これはエイズの啓蒙ポスターだった。そりゃそーだ。ここにディスクガレージやらアミューズやらジャニーズの告知が貼ってあるわけない。

shibuyakuyakusyo (3)

これはエグザイル。なんのポスターだったっけ?忘れた。動物が写っているから、おそらく動物愛護の啓蒙ポスターでしょうね。
そーいや私、子供の頃は、ピンク・レディーのポスターが国鉄に貼ってあったりすると、駅員さんに泣かんばかりにお願いして、貼り出し期日を過ぎるとタダでもらったりしてた。今も、そんな美談、あるのかなあ。

さて、左端のトイレにイン!
しかし、これが、驚きなのだった。
古い。
ボロい。
いわゆる、ナウくない。
清潔にはされているが、人によっては「もー漏れちゃいそーだけど数分歩いて中央のトイレに行こう」と思うだろう程の古さなのだ。渋谷区だもの、税収入すごいだろうに、なんで中央だけリニューアルしていて、端のトイレは古いままに?
そして、最早当然の如く、落書きはあったのである。

shibuyakuyakusyo (5)

大便ブースの中の張り紙。「フック」が「ウック」になっている。ある種巧妙です。
にしても、張り紙、古っ。黄ばんでるし破れてるし。
そして上の階へゴー。

shibuyakuyakusyo (6)

またあった。しかも落書き度合い、ヴァージョンアップしてる。
できうる限り手を加え、原文が分かりにくくなっている。
さらに上の階へ、まだまだ行くど。

shibuyakuyakusyo (4)

よく見てちょ。平仮名書き換えヴァージョンです。
「ありまもた」!「からほ」!「離きないまう」!
にしても、ここのトイレ、照明が暗いなあ。お尻も拭きにくいことでしょう。
もち、ウォシュレットタイプではありません。
やはりトイレが古くて、張り紙も古いと、落書きしたくなるんだなぁ。
そして、誰もそれを剥がさずそのままにしとくんだなぁ。

渋谷区。日本全国で最もナウい街の区役所のトイレは、痛いくらい古くて、暗くて、でもその分エコだし省エネで、税金も無駄遣いしてないのでしょう、と信じたいです。

で、なんで肝心の、古いトイレの写真はないのかって?
その古いトイレと、NHKで放送されたイスラエルのサッカードキュメンタリーは、実際に自分で見てほしい。ないしは、心の中の想像の翼を広げてみてください。
大切なのは、どちらも、画面の外にある物、画面には写っていない事象を慮ることなのです・・・。


2010.08.18