キャマダの、ジデン。㉔和田先生の教え

写真/著・鎌田浩宮

和田先生とは、
大人になってからも、何度も会っている。
お酒を呑んだり、ご飯を食べたり。
今度のライヴにだって、来てくれるんだぜ。

冗談を言い合ったり、
お互いの色恋話をしたり、
時間、いくらあっても足んないんだけど、
たまには、真面目な話もする。

この頃、既に先生は
教頭先生か校長先生に出世していた。

僕らはあの当時のやんちゃ坊主のままだから
何でもかんでも先生にやっかむのよ。
「先生、何で現場の教員続けないの?」
「給料がいいから?」
「先生みたいな先生がいないと寂しいのに!」

先生はきちんと答えてくれた。
「そうねえ…学校全体を面白くしたいのよねえ。
一教員だと、そうするのは大変なのよ」

僕ら、大納得。
満面、笑み。

そして、あれは一昔前。
またもや先生を囲んで皆で呑んでいた。
しかし!
僕ぁ珍しくマジメな顔。
どうしても先生に訊きたい事、あったのだ。

その時は、1999年、
僕らが、31歳の頃。

国旗国歌法案が通過し
日本のあっちこちの学校で
君が代の斉唱に反対する先生が
大量に処分を受けたりして
大問題になっていたのだ。
(今じゃ、信じらんない?当時は、教育界を二分したほどだったんだよ)

「先生…とっても真面目な話題なんですけど…僕自身は君が代・日の丸の強制は反対なんですけれど、僕個人の考えはさておいて、この国には、学校の中には、歌いたい人もいれば、歌いたくない人も沢山いるわけでしょ?でも、先生の立場だと、歌いたくない人にも強要する側になっちゃうのは、すっごく悲しいんですけど…。そして、そういうものを強要するような学校で、まともな教育ができるんでしょうか?」

僕、先生の答え次第では、
長い長い師弟愛が壊れちゃって
先生の事を嫌いになっちゃうかもしれないな、
と一大決心をして!訊いたのだった。

先生、答えた。
「もちろん学校の中では、教えたくないことも強要されたりもするし、それに不満はあるのよ。でもね、私は、青い海を見て『ああ、青い海って素敵だなあ』、青い空を見て『青い空って美しいなあ』って、素直にいつまでも思えるような子供になってもらえたら、それが1番嬉しいの」

この教えは、
その時から今に至るまで、
僕のものの考え方の、根幹になっている。

まず第一に、
人として、
豊かかどうか、
素直であるか。

これを忘れている人、多いと思う。
世界を語る前に、道端で困っているおばあちゃんに声、かけること。
お受験だの習い事だのの前に、一緒に空、見上げること。
斜に構えず、格好つけず、自然や人を愛しむこと。

こんな大事なこと、
小学4年の時に、
毎日教わっていたんだと思う。

幸福な時。

しかしそれは、あまりにも
短かったんでぇございやす…。


2013.02.20