2012年6月11日(月) Rise

文・鎌田浩宮

ロンドン
オリンピック

出なかった
男。

 

用事があって、新宿駅のホームをうろうろ。
月曜の昼間、勤め人やいろんな人で、ごった返してるぜ。

階段を降りていくと、4人の親子連れが。
お母さんもお父さんも、ちっちゃい子供も、手には荷物が一杯。
さらに、ベビーカーに赤ちゃん。
どうやってベビーカーを持ち上げながら階段を昇ろうか、困っている。
人々はどんどん通り過ぎる。

世間は、冷たい人ばかりじゃない、と考えたい。
ただ、忙しいだけ、なんだ。
急いで、どっかへ行かなくちゃいけないだけ、なんだ。

僕はここ数年で、いろんなものを失ってしまったけれど、寅さんのようにゆっくり、街を、ふらりふわりと歩いている。
そうしていると、困っている人は自然に目に入ってくる。

この間なんて、荻窪から帰宅しようとしているとおばあちゃんが茫然と立ち尽くしているから声をかけると「気分がすぐれない」というから、逆方向の東小金井まで送っていくと、「体調がよくなったから途中の武蔵境で降りて買い物して帰る」というので、僕も下車して改札を出て途中まで見送り、カネがないから無賃乗車で帰った。

新宿に話を戻して。
僕はその子に「荷物を手伝って偉いね」と声をかけ、ベビーカーを担いでホームまで運んだ。
それではね、と声をかけその場を去り、外していたiPodをまた耳にかけると、Public Image Ltdの「Rise」が流れてきた。

パンク最大のアイコン、セックス・ピストルズが解散し、ヴォーカルのジョン・ライドンが、パンクの彼岸へ手を伸ばし作ったバンド。

iPodはシャッフルの状態だった。
随分、イカシた選曲しやがるじゃねえか。

東北大震災の直後、東北へボランティアに行った人が沢山いた。
募金する人も多かった。
反原発運動に参加する人も沢山いた。
それはそれで尊いことだけど、すぐ傍で泣いている人を放っておいては、いないかな。

東北へ行けなくっても、お金がなくっても、寅さんのように、触れ合った人に手を差し伸べていくこと。
それも、同じくらい素敵なことだと思うんですよ。

首相官邸前のデモで、政治家が原発を廃止せよと演説する。
そういう人に限って、最も身近で困って泣いている人に目など向けないのだ。
演説を終えるとデモにも参加せず、すぐに帰ってしまうのだ。

遠くばかりを見て、急いで通り過ぎる人よ。
すぐ傍に横たわる、パンクの彼岸を、見渡してみないかい?

俺は間違っているかもしれないし、正しいかもしれない

俺は間違っているかもしれない

俺は間違っているかもしれないし、正しいかもしれない

俺は黒人かもしれないし、白人かもしれない

俺は正しいかもしれないし、間違っているかもしれない

俺は白人かもしれないし、黒人かもしれない

君の時代がやってきたんだ

今こそ生まれ変わるチャンスなんだ

失う物は多いが得る物は少ない人生

谷間を歩いていく

壁に書かれている言葉は嘘ばかり

君の道が開かれますように

君の道が開かれますように

君の道が開かれますように

君の道が開かれますように

俺は間違っているかもしれないし、正しいかもしれない

俺は黒人かもしれないし、白人かもしれない

俺は正しいかもしれないし、間違っているかもしれない

俺は白人かもしれないし、黒人かもしれない

俺の言う事や行動が気に喰わないから

奴等は俺の頭にコードを突き刺して

全てを抑えつけようとする

どこからどう見ても「模範的市民」だぜ

君の道が開かれますように

君の道が開かれますように

君の道が開かれますように

君の道が開かれますように

怒りこそがエネルギー

怒りこそがエネルギー

怒りこそがエネルギー

怒りこそがエネルギーなんだ

俺は間違っているかもしれないし、正しいかもしれない

俺は間違っているかもしれない

俺の言う事や行動が気に喰わないから

奴等は俺の頭にコードを突き刺して

全てを抑えつけようとする

どこからどう見ても「模範的市民」だぜ

ようやく君の時代がやってきたんだ

今こそ生まれ変わるチャンスなんだ

失う物は多く得る物は少ない人生だから

君の道が開かれますように

君の道が開かれますように

君の道が開かれますように

君の道が開かれますように

怒りこそがエネルギー

怒りこそがエネルギー

怒りこそがエネルギー

怒りこそがエネルギーなんだ


2012.08.21