和む!ウイグルの音楽 pt.8 ئۇيغۇر مۇزىكىسىنى ئاڭلاڭ

構成・文・一部撮影/名無シー・鎌田浩宮

 

 

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和む!ウイグルの音楽
ئۇيغۇر مۇزىكىسىنى ئاڭلاڭ

 

 

ウイグルの音楽を、聴いてみようじゃありませんか。
音楽で、ウイグルを訪ねてみようじゃありませんか。
東京芸大や博物館、ウイグル料理屋さんに寄り道しながら。
その道の大家に、話を聞きに行ったりして。
きっと、眩しい旅になるでしょう。
時間は、たっぷしありますよ。
さあ、一緒に出家しましょうぞ。

 

 

 

 

最初の手掛かりは、
図書館の倉庫に眠っていた、
下記2枚のCD。
ここからウイグルへ
浸っていくのだ。

 

キャラバンの調べ~ウイグルの器楽
1 ムシャーブラクムカーム
2 グンドゥパイ
3 カーデル・マルラン(マルラン公社幹部)
4 タシュワイ
5 ヤルー(恋人)
6 ダワンチェン(大板城)
7 ディハンラー・マディア(農民讃歌)
8 豊作
9 ウッシャーク・ムカーム 第一ダスタン
10 ラクダの鈴の音
11 カルワン(キャラバン)
12 ラーク・ムカーム テザ間奏曲

新疆ウイグル自治区歌舞団
新疆ウイグル自治区新玉区文工団(ホータン)

レワープ:ダウティ・アウティ
バラマン:バーキル・トゥルディ
アジェク:マハムティ・トルスン
ダップ:イミン・クルバン
1989年5月2日 キングレコード第1スタジオにて録音

 

 

 

オアシスの抒情~ウイグルの歌

1 タック・スーレイ(山水)
2 ヤルー・スイニン・ダルダン(恋人よ)(1)
3 ヤルー・スイニン・ダルダン(恋人よ)(2)
4 グリヤール
5 グレー・チスカン・ミニン・ヤレン(花を持つ恋人)
6 ティレック・ボスタン(生き生きとしたオアシス)
7 チャビアート・ムカームのチョンナグマン
8 白い泉
9 遥かなる道
10 トーガン・ジェル(ふるさと)
11 クォールケム・アルタイタウェ(美しきアルタイ山)

新疆ウイグル自治区歌舞団
新疆ウイグル自治区新玉区文工団(ホータン)

歌:パシャ・イシャ
レワープ:ダウティ・アウティ
アジェク:マハムティ・トルスン
ダップ:イミン・クルバン
歌・ドゥタール・タンブル:マハムティジャン・シャキル
歌・ドンブラー:ダリルハン
1989年5月2日 キングレコード第1スタジオにて録音

 

 

 

都内で唯一の、ウイグル料理専門店。
出会ったことのない、味覚。
店内も、美しい。

 

鎌田浩宮
食べ物に目を奪われているのだが、店内の四方を見つめるのも楽しいのだ。食器・壺・人形。並べ方も素敵。なかなか簡単に見られるものじゃないですぞ。

 

 

名無シー
トイレには、山の絵が飾ってありましたよ。なんて山でしたっけ?店員さんに教えてもらったんですが…。


火焔山(かえんざん)じゃないかな?ウイグルを代表する山…


そう!火焔山!


池袋駅北口に「火焔山」っていう行きつけの蘭州料理店があるんで、覚えてたんですよ。あすこも一品料理が充実、どえらい美味しいでっせ!

 

店内。こちらはペルシャ絨毯じゃないけれど、素敵な編み物だなあ。

 

 

 

お客さんと、楽しくお喋り。

 


(隣の席にいらっしゃるウイグル人のお客さんへなれなれしく話しかける)パシャ・イシャン、いいですよね!

お客さん
え?え!なんでそんなに古いの、知ってるんですか?いつ聴いたんですか?(こちらの方も日本語お上手)


すごいでしょ!ラヴ。やはりパシャ・イシャンのような大御所だと、ご高齢の人が聴くんでしょうか?

お客さん
そうですね。日本で言えば美空ひばりみたいなものです。

 


ウイグルを代表する歌手、パシャ・イシャン。

 


確かに、今店内でかかっている…YouTubeからwi-fiでスピーカーに飛ばしている…これらの曲は、もっと今風。伝統音楽というより、ポップス寄りですよね。こういうのは聴きます?

お客さん
う~ん…(楽しい雰囲気に皆爆笑)

お客さん
地元にいた学生の頃は、すっげえ聴いたんだけど。この曲は、10年くらい前のラブソングですね。


(すっげえ、という日本の若者風言葉に感激しつつ)今も、ウイグルのテレビをつけると、この人出てますか?

お客さん
この人は、バラエティ―とかに出てますね。今は歌ってないです。


今のウイグルのテレビでは、どんな曲がかかってますか?

ほかのお客さん
中国の歌ですね。また、ウイグルの語の歌番組でも、下に中国語の字幕が出るようになりました。


ああ~!(一瞬にして諸々察知)

 

店内に飾ってあるドゥタールは、お客さんが弾いて楽しむためなのだそう。

 


若い人は、ドゥタールを弾いたりしますか?

お客さん
お父さんが演奏できたり、興味のある人は弾きますが…


ドゥタールじゃないんだけど、ラワープは津軽三味線に似ているんですよ!ベンベラベンベラ!(バカマダ、ベンベラで伝わるかっつーの)

お客さん
おお、青森!(以前青森にお住まいだったらしい)

 


ドゥタール、実際はこんな風に弾きます。

 


こちらもウイグルの楽器、ラワープ。メロディーや弾き方が、津軽三味線に似ているでしょ?

 

 

 

 

時間一杯まで、喰らい続ける。

 


来ました。ジゲル・コルミス JIGER QORUMISI。羊のレバーとピーマンの炒めです。


トルコではピーマンを食べるんです。ハンバーグに似たキョフテという料理があって、焼いたピーマンが付け合わせなんですね。日本のピーマン肉詰めのような感じ。そう考えるとピーマンは、中東つながり。ウイグルのどこに植わっているのかな…?

 

JIGER QORUMISIどーん。

 


〆の麺。普通はラグメン leghmen لەغمەن を頼みますが…。


他のものでいいですよ。ラグメンは前回・前々回にいただきましたので。


ではラグメンではなく、このウイグル風焼うどん、タリム・コルマ・チョップ TARIM QORUMA CHOPを。


俺たちゃ常に変化球!でもってこの料理、ケンメンソメンとも呼ばれるようです。ウイグルではラグメンに次いで人気だとか。


瓶ビールを頼みましょう。すみませ~ん!グラス2つで。


確かに、ちょっと辛い!


そろそろ8時。時短協力金をもらえなくなっちゃう。

店員さん
大丈夫ですよ~。


急いで食べますね!

店員さん
こちら、サーヴィスです!


干しブドウだ!柔らかくておいしい!ありがとうございます。辛さが中和されます。

 

TARIM QORUMA CHOPどーんどーん。

 

 

 

文化と歴史と背景と。

 


ウイグルは、文化の回廊ですからね。人もモンゴル系みたいな顔の人もいれば中東的な顔の人もいたり。その辺は、中央アジアの他の国々と同じですね。違うのは、現代中国の独裁的政治的支配下にあると言う、チベットと同じ悲劇的状況ですね。


中央アジア諸国諸地域は、人々の往き来の歴史も、他の地域とはまた違っていますね。歴史的記録に残っているところだと、マケドニアの王アレクサンドロスの東方遠征とか。


マケドニアは、ギリシャの北側に隣接しています。


彼は現在のトルクメニスタン辺りのバクトリアの辺りまで遠征し、その周辺の中央アジアを支配下に収めます。ユダヤ教やキリスト教に先駆けて神に序列を与え、一神教的世界観を先取りしたとも言われるザラスシュトラの故郷はこの辺りと言われています。

 

トルコのキョフテ。

 


紀元前18世紀から紀元前6世紀の間に、現在のイラン辺りで生まれたザラスシュトラ。自然崇拝・多神教だった中で、彼は善悪2種類の神で形成するゾロアスター教を唱える。その後のキリスト教にも影響を与え、中国にも広まった。


元々古い信仰と工芸の地だったバクトリアは、以降ギリシア文化的支配の影響下、グレコ・バクトリア文化を花開かせます。アレクサンドロスの最期を看取るのも、バクトリア出身の妃ロクサーヌでした。中央アジアが、ギリシア世界にとってどんな意味を持っていたかを想像させられます。


トルクメニスタンから東へ進むと、タジキスタン、キルギス、そしてウイグルへ連なる!

 

 


遠征はその後、ヒンドゥークシュを南東に進んで、インドの西端の辺りまで来ます。この遠征にはたくさんの学者が随行していたため、ヘレニズム文化にインド思想が流入するわけです。中央アジアは、人が住む場所でありつつ、人が行き交う場所でもあったわけです。

中央アジア史は、学校で余り詳しくやらないので、改めて色々調べるととても面白いですね。


中央アジアとウィグルのイスラム化はいつくらいでしょうね。モンゴル帝国時代は、様々な宗教文化に寛大な時代ですので、大都にも紅毛人マルコ・ポーロの他にも中東系イスラム系(回族)のアドバイザーや官僚がいたと言うことです。恐らくはモンゴル帝国がターニングポイントでしょうね。


なるほど。モンゴルは現在ラマ仏教ですが、すぐお隣にあるウイグルはイスラム教だ。

 

西遊記にも登場する、火焔山。

 


モンゴル人自身は他の宗教に寛大ながら、仏教を大事にしたんですね。とは言え内部では世界帝国を捨てる過程など、様々な紆余曲折はありそうですけれど。
モンゴル史もそういう意味では面白そうですね。


どわー。なるほど。音楽のルーツが多岐に渡る理由が分かりました。となると、現在初台にいるウイグルの方々は、どの曲に郷愁を感じるか…。中国の連中に嗅ぎつけられないように注意しつつ、取材したいです。


新しいと言ってもイスラム化からは何百年も経っていますから、イスラムありきの現在のライフスタイルが馴染むんでしょうね。我々も戦後百年も経っていませんが、百年前の生活をしろと言われても無理です。ここ二十年くらいの通信機器生活を捨てることは出来ません。


イスラムでありながらも多元的な彼等の文化が正に壊されようとしているのが矢張り問題ですね。チベット、ウィグル共に彼等自身の選択で生きられるようにならなければなりませんが、今の隣国の指導部にそんな殊勝なものは期待できませんよね。


はっきり言ってしまえば、この企画も、ジェノサイドへの抵抗です。

 

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2021.04.15