第85話 第2章「ブリティッシュなティータイム」の巻

「なんだキミは?なにしにきた?」

明らかに機嫌が悪い

 

「今朝ここにいるって伺ったから迎えにきた」

 

「ふーん、別にいつまででもいていいってママがいうからいるんだよ、アンタにゃカンケーのないことだ」

 

「・・・。」言葉に詰まる

しかもママってクラブじゃねーっつーの…

 

クリスが近寄ってくる

 

「なあ、クリスおジャマだからウチに帰るぞ」

 

ボクはそういってクリスを抱き上げると

クリスをベロベロとボクの顔をなめ始めた

 

「あーあ、こういうヤツをヒキョーモノっていうんだろーね、世間では」

「な、おい、ヒキョーモノクン!」

 

「いや、別に、ってなんだよけんか売りやがって」

 

「どっちがけんか売ったんだよ!バーカ!」

 

いきなりそんなボクらを見かねてか奥さんが仲裁に入る

「まあまあ、喧嘩してないでお茶でもいかが?」

「このこが焼いたスコーンと手作りジャムもあるわよ」

 

「すみません、なんだかお伺いして早々…」

 

奥さんは優しく微笑んでお茶の準備にキッチンへと消えた

 

「なあ、悪かったよ、帰ってこいよ、謝るからさ」

 

「いやなこったね、あたしゃここで暮らしてるのがイチバンなんだよ」

 

「迷惑だろ~が」

 

「いったぢゃん!メーワクなんかぢゃないもん!それに…」

 

「それに、なんだよ?」

 

「アンタにゃカンケーないことだよ、バカ!」

 

さっきからバカにバカって言われ続けて

怒りというか、切なさを感じるよ…

 

いいタイミングで奥さんがお茶とスコーンを持ってリビングに現れる

 

「家はいつまででもいていいけど、そろそろ帰ってあげたら?彼も心配してたのよきっと、それに寂しいでしょうしね」

 

“まあ、慣れてるんで心配はしてないんですが、寂しいのは確かです”と、口に出そうと思ったけど、やめておいた

 

「ママ後で夕飯の買い物に行こう!それか、今日はパパと3人で外食しよっか?アタシがおごるから!」

 

なんだよ、今度はシカトかよ

 

リビングに流れるこれはショパンか?

なんとも、イングリッシュティーとスコーンにぴったりだ

ボクが紅茶を啜る音だけが、何とも不釣り合いに思えてきた

そしてクリスは床で寝ている

 

たかが5分くらいなのに2、3時間くらい経った気がする

おかしいな、この前伺った時と違ってなんとも居心地が悪い

いたたまれずに声を発した

 

「ごちそうさまでした。帰ります」

 

そういって、奥さんの引き止めるのを振り切り

スーツのジャケットを着て外に出た

 

何とも蒸し暑い昼下がりだ

2012.06.21