キャマダの、ジデン。⑯戦闘的ゴジラ主義者

小学2年に三軒茶屋へ越してきて
大人になっても途切れない友人が
数人いる。

その中の1人、このエプスタで「二番館へ走れ」に執筆している
戦闘的ゴジラ主義者こと、かときんとは
子供の頃、共通点が多かった。

①SF小説・SF映画が大好き
②親が離婚したり復縁したりしている
③家の家具に裁判所から差押えの札を貼られたことがある
④ビンボーなのは社会が悪いと、左翼思想をかじった事がある
⑤親がそんななのに、自分もなかなか定職を持たず、かなりの期間フラフラしていた

もーここまでくれば、共通点だらけ。
ドッペルゲンガー。

僕は小岩にいた頃からSF小説を読むようになり、
三軒茶屋に転校してきてからも、
学校の図書室のSF小説を
端から端まで読み漁っていた。
小学2年でSF小説を読むなんぞ他にはいなかった。

小学3年になりクラス替えがあり
読書の授業になると図書室へ行く。
誰も寄り付かないSF小説のある棚に
いるはずのない人影を発見。
それがかときんだった。

最初は互いに警戒し合いけん制し合い、
そして話しかけてみるのだった。
「君、SF好きなの?」
「うん。君も?」

可愛いですね。
こんな風にして、生涯の友情が芽生えるんですね。

2人で競争し合うようにして小学4年までに
図書室中のSF小説を読み切ってしまった。

それで、友達皆、
そう、馬鹿丸出し軍団の皆で自転車に乗って
世田谷区中の図書館に行くようになった。
この齢で学区域の外に出るのは、冒険でもあった。
ドキドキとウキウキがごっちゃになってたまらなかった。

かときんは貧乏だったので自転車がなかった。
それをバカにしていじめるのではなく
交替で後ろに乗せたり
あるいはかときんを自転車に乗せ自分は駆け足して
ああ、世田谷区は広いなあって、
あっちこっちの図書館の貸出券が増えるのは楽しいなあって。

それも全部読んでしまいそうになると
児童向けの本から文庫本に手を出した。
こんなところでも、随分とおませだった。

そんなかときんのお父さんが
会社を設立し三軒茶屋に事務所を構えたのは驚いた。
今でも覚えている。
青葉造園という名の会社。

うちの父は既に、
常に進むと書いて常進金属という会社を設立し
全く進まずあっという間に倒産させていたが
かときんのお父さんは必死に頑張った。

学校が終わると青葉造園に皆でお邪魔して
そこでよく遊んだ。
仕事の邪魔で迷惑だったろうに
笑って許してくれていた。

しかし、経営は傾く。

話を戻して、その後、共通していないところ

①かときん家は、経営悪化後、夜逃げしたことがある。
  うちは、ない。
②夜逃げ先で不良にカツアゲなどのヒドイ目に遭い、性格がねじまがる。
  僕は、ない。
③左翼思想が激化し、活動家(死語?)となり、逮捕歴がある。
  僕は、ないってばさ・・・。

ある日、かときんが学校から帰ると
玄関のドアノブがいつもより余計に回ったのだという。
家に入ると、裁判所からの差し押さえの札が
家具のあちこちに貼られていたそうだ。

僕は、ドアノブがいつもより余計に回りますと
染之助染太郎のようなことはなかったが
家の中で弟とかくれんぼをしていたら
テーブルの下に差押えの札が貼ってあり
驚愕した覚えがある。

貧乏故に夜逃げ、
貧乏故に離婚、
お金ができて復縁。

鎌田家の場合そこは圧倒的に女が絡んでくるので
100%の相似形ではないが
まあ笑ってしまうほどの似た者同士。
お互いの父親が亡くなった時期もほぼ一緒だった。

3年2組の友達の核となる部分というのは
かときんにせよ前述のさときっちゃんにせよ
この後出てくる予定の他の者にせよ
共通する痛みや苦しみの体験がある。
家計の問題だったり家族の問題だったり
それは各人それぞれなのだけど。

そんな痛みや苦しみを共有しない
割合裕福な家の友達も増えていくのだが
その子達は想像力をもって
僕らの痛みや苦しみを理解してから
加わっていったんだと思う。

人間、想像力や空想力がなくっちゃ駄目なんだよ。
想像力、空想力のない人間が、差別や争いを起こすんだ。
SFって、空想科学小説と訳すんだぜ。


2012.03.02