第七十三夜:「あしたが待ち遠しい」

昨晩は大きな宴会が入り、更新できませんでした。
申し訳御座いません。
今宵は以前に告知していた、少し前のお話です。
 
 
 
 
1月末頃からでしょうか。
突然、小学6年の息子の帰りが遅くなりました。
不良デビューにしても早いし、別段リーゼントにもなってないし、
トゲトゲの服も赤いトックリセーターも着てないので、
なんだろな?とほんのり思う程度でした。
ま、私は息子の鉄郎を信じているので心配はしていませんでしたが、
このご時世なので聞いてみたら?と仲居頭のヨシ子さんに言われ、
少しだけ問いただしてみました。 そうすると鉄郎は、
 
 
「まあ、ちょっとね・・・」
 
 
と、お茶を濁すではありませんか! おおっ、初・お茶濁し!
とはいえ誰かに迷惑掛けてると困るので、
鉄郎の友達で、ママ友のショウマ君ママに聞いてみたところ、
それはそれは子供たちのイジらしいお話でした。
 
 
 
 
ウチの鉄郎は、図工のタブチ先生が学生時代からの趣味で
絵画を書いているのを知り、その絵に感銘を受け、
絵を描く楽しみに目覚めました。
小学校卒業を前にして、鉄郎の人なつっこい性格からか、
授業では聞けないタブチ先生の若い頃のお話や、体験談、
作品などを見せてもらおうと、ショウマ君と共に
放課後に先生たちに貴重な話を賜わっていたのだそうです。
それが他の子供たちにも、他の先生たちにも話が広がり、
先生が毎日代わる代わる話し、希望する生徒と語り合う会を
開いていたのだそうです。
数人の親御さんも参加してその場を見守っていたそうです。
 
いいじゃない!ていうか、なぜ私に言わない!息子よ!
お母さん忙しいし、とは冷たいじゃない!
でも偉いよ、鉄郎・・・ ちょっとわたし、誇らしいよ・・・
 
 
 
 
という事で、見学してきました。
その日は私よりかなり年上のF先生が話されていました。
塾とも授業とも、親と子の語らいとも異なる、
上下の感覚のないやり取り。 そして両者から出てくる笑い声。
真に、大人から話される経験談を、真剣に聞き続ける子供たち。
私はなんだか目頭が熱くなりました。
 
 
そのF先生の言葉に、私は少し感動していました。
なんで教師になったのかツッこまれたF先生は、
自身の不幸な生い立ち、暴れていた時代、ある教師との出会いで
救われた事などを、分かりやすく、そして説教を入れる事なく、
笑顔で話されていました。 最後に話された言葉はこうでした。
 
 
「こどもが大人になるんだよ。ぼくも子供だった。そしてこうなった。
 大人は子供を裏切っちゃいけない、
 キミ達のあしたを大人が裏切っちゃいけない。
 そういう思いだけで、ぼくはここへ来たんだと思う。
 キミ達も必ず大人になる。
 だからキミ達も子供を裏切っちゃいけないよ。
 みんながいつも、あしたが待ち遠しくなるような世界を
 いっしょに創っていこうよ」
 
 
子供たちと同じ目線で語るF先生の目も、真っ赤になっていました。
 
 
 
 
昨今、変態教師の話がよくクローズアップされますが、
やはりそういった人間は一握りなんだと思い知らされました。
使命をもって、恩師への恩返しをもって、子供への深い愛をもって、
教師をやられている方もいるのです。
大人は子供に語る事をやめてしまいました。
勝ち組、負け組という概念、子供は恐ろしいモノという決め付けが
大人を惑わしてきたのかもしれません。
でも、そうじゃない。 子供に必要なのは大人の理由なんかじゃない。
子供たちの、話を理解しようと、前のめりになっている瞳の光に、
そう思いました。
私は本当に、感謝の気持ちでいっぱいになり、涙がこぼれました。
 
 

最後に、F先生は昔歌手も目指していたという話から、
用意してきた曲に合わせてF先生は熱唱しました・・・
 
 
 
 
F先生、あなたの天職は教師でした・・・・・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

2012.02.23