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浪日記㉚あれから4年
撮影・庫田久露武
文・鎌田浩宮
ようやく最近になって、ごく、たまにだけれど、夢の中に浪が出てくるようになった。
浪は、押し入れから出てくる。
まるで「父と暮せば」だ。
浪!ずっと押し入れの中にいて、お腹は空いてないのかい?
でも、浪は答えてくれない。
最晩年の頃のように、何も食べられないのかな…。
夢から覚めて、浪はもう生まれ変わって、誰かの家の子になって居ても可笑しくない頃だ、と思う。
あれからもう、4年も経ってしまったのだから。
これから僕がうんと生きて、浪と過ごした17年半よりも、長く生きるかも知れない。
2011年12月2日から17年半、生きるかも知れない。
それでも僕は、生活を変えない。
6時と12時と6時と0時に、浪にお水をあげて、時々お風呂場で、浪が好きだったあぶくの音を立てる。
やがて僕の友達が皆死んで、浪の事を覚えている人は、誰もいなくなる。
そうなっても僕は、浪のお水を買いに、スーパーマーケットへ行く。
特売している日を狙って、スーパーへ行く。
戦争だって、そうだろ?
忘れないように、するのさ。
そのために、生活を変えないのさ。
去年の命日は広島で映画の上映があって、初めて1人で過ごした。
横川シネマの大きな銀幕に、浪の姿が映った。
お客さんは、僕を除いて1人だけだったなあ…。
今年の12月2日は、どうするのかな。
2015.12.02