- 2020.02.13:好きな映画を仕事にして 第2回
- 2020.01.07:好きな映画を仕事にして 第1回
- 2017.11.28:パターソン
- 2017.03.16:わたしは、ダニエル・ブレイク
- 2017.03.04:沈黙
- 2017.02.25:この世界の片隅に
- 2016.07.27:団地
- 2016.04.18:恋人たち
- 2016.04.15:コミュニティテレビこもろにて放映
- 2016.04.13:渥美清こもろ寅さん会館にて「男はつらいよ・翔んでる寅次郎」35㎜フィルム上映
サブ・コンテンツ
- 2023.03.26:[Radio] walkin’ to the beat everlasting⑦
- 2023.03.04:[Radio] walkin’ to the beat everlasting⑥
- 2023.02.26:[Radio] walkin’ to the beat everlasting⑤
- 2023.02.25:[Radio] walkin’ to the beat everlasting④
- 2023.02.19:[Radio] walkin’ to the beat everlasting③
渥美清こもろ寅さん会館にて「男はつらいよ・寅次郎忘れな草」35㎜フィルム上映
文・鎌田浩宮
動画撮影・竹原Tom努/鎌田浩宮
写真・大島智子/鎌田浩宮
美しき
雪山、
若き
人々、
小諸に。
2015年3月14日。
今日は、いつものように1人旅ではない。
来月から僕らの上映に合わせて「長野県小諸『寅さん全作フィルムで観よう会』に行くバスツアー」を運行して下さる、バス会社・銀河鉄道㈱の広報・村井優子さんの運転する乗用車で、一緒に小諸へ向かった。
小諸に到着し、村井さんの第一声。
「ああ、空気が美味しい!」
雪化粧の浅間山は、1年を通じて最高の眺め。
村井さんはすっかり、小諸を気に入って下さったようだ。
早速、ツアーの昼食会場となる、蕎麦屋の古城軒に行き、ご挨拶。
飾ってある沢山の渥美さんの写真も、出迎えてくれる。
すると、今日は休業なのに、うどんをご用意して下さっていて。
お代はいらないとおっしゃってくださり。
葱、椎茸、肉、具沢山。
信州名物の野沢菜に、蜜のたっぷりなりんごも。
村井さんも僕も、しばし仕事であることを忘れ、ゆったりした心持ちになる。
田舎は、いいな。
ああ、このままごろりと寝転んで、昼寝をした後は温泉に浸かって、客として寅さんを観て、地酒で1泊したい…。
さあ、仕事だ、仕事!
小諸の名所をチェックするために散策する村井さんと別れ、寅さん会館へ。
1時間遅刻した分、たっぷりと仕事は残っている。
本日、上映前にプロジェクターで映写するCMは、これだ。
映画館
といえば
本編
上映前の
コマーシャル
ですよね。
僕が何度も創り直した、このCM。
山本直純さんの曲は、こうして聴いていると、本当に美しい。
先日、5年目の3月11日を迎えた。
この写真は、僕らココトラのメンバー・なべさんが撮影した、第48作「寅次郎紅の花」での、震災直後の神戸市長田区ロケのもの。
本当に、時間がない。
焦る。
皆が休憩を取っている時も、1人急いで仕事をする。
すると、ココトラのメンバーが、1人、また1人と、パンや、お菓子、手作りのおにぎりを持って来てくれる。
ああ、嬉しいなあ。
今は時間がないので、夜にでもいただきますね。
喉が、渇く。
古城軒でいただいた栄養ドリンクを、一息で飲み干す。
1人、暑い。
冷たいものが、飲みたい。
観客に無料でふるまう「おもてなしコーナー」も、寒い冬は温かいお茶とお菓子と、手作りのパンケーキ。
高倉健さんを偲び、場内は「幸福の黄色いハンカチ」を模したデコレーション。
写真に写るは、ココトラ最年少・かっくん。
僕より、25歳若い若人。
でもって、寅さんの黄色いハンカチ、ならぬプチタオル、販売しています。
小諸に、
子供が
いたのである!
なんとか、間に合わせた。
皆の協力のおかげです。
本日上映前のお楽しみコーナー、地元・みすず幼稚園の園児が17人、そのお母さんお父さんたちも約20人前後、大量の人たちがやってきた!
小諸には、こんなに沢山ちびっ子がいたのか?
街を歩いてても、上映会場にも、年輩の人ばかりなもんで、こりゃあびっくらこいた!
しかも、その親御さんたち、僕より全然若い。
若者も、小諸には実はこんなに沢山いたのだ!
子供が、若者が、小諸で生き、笑い、泣き、働き、育ってる。
映画を観に来たおばあちゃん、おじいちゃんたちも巻き込まれ、皆で歌い、おゆうぎする。
それにしても、子供達のしつけがよくって、泣き叫ぶ子達は1人もいない。
先生方の指導が、とても優れているんだなあ。
感心した。
な、な、なんと。
上演が終わると、園児と親御さんたち、ほとんど帰ってしまいました。
映画、観ていってくれないのね、涙…。
きっと、上映を妨げないよう配慮して下さったのね。
間髪入れず、協賛者のご芳名紹介CM上映。
そして続けざまに、僕と村井さんが登壇、来月から遂に始まるバスツアーの宣伝。
そしてココトラ代表・轟屋いっちーこと、一井正樹のご挨拶までが、この動画に綴られています。
音量が小さくって、ごめんなさい。
こちらはそのレトロバス、日本にはもう2台しかない1981年製造・日野自動車製RC-701Pの運転風景。
バスツアーの件は、この日の長野県内最大手紙・信濃毎日新聞でも大々的に報じられた。
午後3時過ぎ、上映開始。
色褪せた、セピア色に近いフィルム。
きっと、ロードショウ時に使われたフィルムなんだろう。
ところどころ、コマが飛び。
全てを
受容
して
ほしかった
リリー。
1973年に公開されたこの頃、浅丘ルリ子さんは33歳、倍賞千恵子さんは32歳、渥美さんは45歳。
倍賞さんは初々しく、可愛らしささえあるのに比べ、浅丘さんは役作りのために厚化粧で、生きるのに疲れたキャバレー歌手を演じ切り、老けてさえ見える。
母親はろくでなし、キャバレーでも嫌な思いをし、生きていることに疲れ切り、すがる思いで寅さんを訪ねる。
こんな風につらい時、あなたにはあるだろうか?
こんな時は、全てを受け入れてほしい、受容してほしいのだ。
たまには私の言う事を、訴えを、わがままを、誰かに全て受け入れてほしい。
この広い世の中に、たった1人でいいから。
最愛の人、寅さんなら、全てうなづいてくれるのではないだろうか?
こんなになっちまった自分の人生を、寅さんなら肯定してくれるんじゃないだろうか?
寅さんは、うなづいてあげられなかった。
私を、肯定してくれなかった。
リリーと、僕ら観客の頬に、涙が伝う。
寅さん、あんたは気付いてくれなかったのかい?
私が初めてとらやを訪ねた時、中にお入りなさいよと促された時、私がこんな幸せな温かい家庭に招かれていいのかしら、嬉しさと戸惑いのないまぜになった表情を見せた事を。
私が味わったことのない、家庭というものに招かれる事を。
久しぶりに他人が敷いてくれた布団に入り、満ち足りた気分でお月様を眺めながら、私があなたに「恋がしたい」と言ったのは、堅気への、定住への、憧れであり願望だったのよ。
上映後、敢えて灯りを消したままで。
一井正樹と鎌田浩宮の、暗闇トーク。
リリーの思いを、2人で語り尽くしました。
実は、このトークに出てくれといっちーから言われたのは、上映開始直前。
次回上映の第12作「私の寅さん」の解説もしてほしい、とのこと。
おお!何も予習してないが、いっちーの頼みとあらば、全てを受容し、肯定する。
照明を消したままで、懐中電灯で登場しトークするというアイデアも、その場で初めて聞いた。
徹底的にミーティングをした上でのチームワークが重要な中で、ある1人がひらめいた、暴走と言ってもいい唐突なアイデアを、文句も言わずに引き受ける。
打合せによる意思の疎通も必要だが、予定外の出来事を、以心伝心、言葉を必要とせず受け入れる。
それは、リリーの寅への願いでもあったのだから。
上映後はコミュニティテレビこもろからバスツアーについてインタビューを受けたり、以前ココトラが多大な迷惑をかけてしまった方が再び上映にお越し下さり、その方へお詫びのご挨拶とその日のお礼を兼ねた対応で、多忙を極めた。
自分の担当の片付けも、ある程度他のメンバーがやっておいて下さっていたのが嬉しい。
でも、片付けは1番最後までやっていたかな?
この日の夜の打ち上げは、呑み過ぎちゃったよ、寅さんのようにね。
さあ、来月4月11日(土)からは、バスツアーも始まる。
ツアーの詳細、お問合せ、予約などは、こちらをご覧下さいね。
ぜひ皆さん、全国各地から、お越し下さい。
2015.03.15<< 渥美清こもろ寅さん会館にて「男はつらいよ・寅次郎夢枕」35㎜フィルム上映 渥美清こもろ寅さん会館にて「男はつらいよ・私の寅さん」35㎜フィルム上映 >>
Column&Essay
