緊急連載「有志連合と協力して」⑤

文・大友麻子
構成・鎌田浩宮

高村氏「後藤さん蛮勇」 「自己責任取れないことある」

自民党の高村正彦副総裁は四日午前、過激派組織「イスラム国」に殺害されたとみられるフリージャーナリスト後藤健二さんについて「日本政府の警告にもかかわらずテロリストの支配地域に入ったことは、どんなに使命感があったとしても、勇気ではなく、蛮勇と言わざるを得ない」と党本部で記者団に語った。

高村氏は「亡くなった方をむち打つためではない」と断った上で「遺志を継いで後に続く人たちが細心の注意を払って、蛮勇にならない行動をしていただきたい」と説明。「後藤さんは『自己責任だ』と述べているが、個人で責任を取り得ないこともあり得ることは肝に銘じていただきたい」と指摘した。

岸田文雄外相は四日午前の衆院予算委員会で、日本政府が昨年九月と十月に計三回、後藤さんにシリアへの渡航を自粛するよう要請したと明らかにした。

(東京新聞2015年2月4日 夕刊より)

権力を持つ側の人間が、私見であってもこういった事を述べるのは、バッシング以上の圧力がある。
断罪してしまっていると同等なのだ。
高村よ、憲法で「海外渡航の自由」を保証してるの、知らねえんじゃねえのか?
こんな低レベルの知識の発言でも、国民にはじわりと浸透しちゃうんだぜ。

さて、今日はエプスタインズに度々寄稿してくれている、ライター・エディター・映画ラインプロデューサーの大友麻子さんが、なんとか振り絞って原稿を書いてくれました。
どうぞお読み下さい。

今回のイスラム国のことはね、
人質バッシングとか謝罪とかはもちろん論外として
さらに、憲法9条改正とか、日本人に指一本触れさせないとか
そういう話の飛躍ももちろん論外として
ただ、イスラム国という存在とどう向き合うかについて
本当に、言葉が出て来ないんだよ。
あんまりに途方に暮れちゃって。

ただ一つ。
国難だ、国がテロに立ち向かう大切な時に
内輪もめしちゃいけない、政権批判して政治の空白を作っちゃいけない
みたいな空気には大反対。

中東のあの紛争のそれこそど真ん中に位置する国々が
多様な価値観と共存するなかで踏ん張っているわけで
この島国の日本が、いきなり激しいテロの脅威にさらされたわけじゃない。
もちろん、そのリスクはこの混沌とした世界の中で
ゼロってわけにはいかないし、日本だけ完全にノーマークってわけにもいかない。

でも、そんなリスク、今までだって十分あったよ?
いきなり地下鉄にサリンがまかれるんだよ。
通りすがりの子に刺されることだってあるんだよ。
フィリピンでも誘拐されたりとか、そんなのいくらでもあるじゃない?
キルギスで日本人が殺されたり、イラクで香田さんが殺されたりだってあるじゃない。
いきなりホテルが爆破されたりすることもある。

あまりに理不尽な暴力は世界にいくらでもあったし
いきなり今の日本のリスクがぐわーっと急増したわけじゃない。
それなのに、危険に巻き込まれたって、大騒ぎしすぎだよ。
日本を守るためとかってわけわからない。

イスラム国という存在には、正直途方に暮れている。
その瀬戸際にいる人たち、その管轄の地域にいる人たちのことを考えると
ほんとに途方に暮れてしまう。

でも、だからこそ、湯川さんと後藤さんのこと、ヨルダンのパイロットの衝撃的な写真
私は、大騒ぎしたくない。怒りでも哀しみでも連帯したくない。
当事者の切り裂かれるような痛みや遺族の痛みが安らぐよう祈るだけです。

そうです。
大友さんの言う通りなんです。
当事者や遺族の痛みが、少しでも和らぐように。
僕らはそのことを、最優先に慮っていこうじゃありませんか。


2015.02.06