第十六夜:「40年目の修学旅行」

diary_syuugaku

大量の米沢牛頂きましたっ!
何人かの仲居にはその小包を見られてしまいましたが(チッ!)、
なんとかこれは息子の鉄郎と私だけで食らい尽くそうと画策している
意地汚い若女将けい子(仮称)です、どうも。
 
 
当館はさほど大きくはないのですが、修学旅行の学生さんも
勿論ご利用されます。 まあ最近の子達は随分大人しくなりましたが、
それでも半分大人、半分お子様な方々ですから、
当然問題も起こされます。 でも、ま、可愛いものです。
可愛くないのは教員の奴らだけで御座います。
オネショくらいウチでは問題ございません! どうぞお好きなだけ!
 
学生の方々の本当の修学旅行シーズンは少し過ぎましたが、
秋から冬にかけての季節には、昔を懐かしんで旧友と訪れる、
「大人の修学旅行」を楽しまれるお客様がよくお見えになります。
 
 
今回訪れたお客様は女性三名様でございました。
七十代くらいの、品のある女性達でした。 中学時代のご学友だそうで、
今は各地にバラバラで住んでいるが、五年に一度集まっては、
当時を思い出しながら修学旅行を楽しんでいるのだそうです。
当館の門をくぐる際や、玄関、庭、お部屋をご覧になる際にも
「わあ、綺麗ねえ」とお話される姿はとても微笑ましく、
少女時代の関係のままで笑顔を交わす仲に、羨ましささえ感じました。
 
ご予約のお部屋にお連れした際、その中のお一人が
“花札なんて、お借りできたりするかしら? 私忘れちゃったの”
と仰られましたので、私はすぐ事務所へ取りに行きました。
お部屋に戻ると、先程の女性・菊絵さんだけが座られていました。
他のお二人はお風呂に行かれたそうでしたが、菊絵さんはちょっと
風邪気味だからと遠慮されたそうで。
なので私は少しだけ菊絵さんの「花札」のお付き合いをしました。
 
人生の先輩との花ならべは、季節をめぐる旅のようでした。
菊絵さんは花札の絵柄に合わせて、身の上話をして下さいました。
旦那さんのお話、息子さん、お孫さんのお話、そしてご自身のお話。
月毎のお花に合わせて様々なお話を差し込まれる菊絵さん。
本当にお話がお上手でしたので、気になって聞いてみたら、
菊絵さん、お花の先生でした。 なるほど。
40年続けているというこの修学旅行も昔は五人だったそうで、
「ハルコちゃんが牡丹の頃、スガちゃんが柳の頃、だったわねぇ・・」
と、お話をされる菊絵さんは少し寂しそうなお顔をされていました。
ひとしきり花札を楽しませて頂いた頃、お風呂からお客様が
戻られましたので私は退散しました。
帰りしなに見えた、花札をなされる御三方のお姿は少女のままでした。
私はとても、ほっこりした気分になれました。
 
 
私の修学旅行は小学校の時は日光、中学の時は京都&奈良、高校の時は
岩手でスキーだったような気がします。なんでスキー??
あの頃のみんな、どっかで元気にしてるのかなあ?
元気にしてくれてるといいなあ。 そしてまたみんなで会いたいなあ。
まだみんなのアダ名おぼえてるよ。 嫌がってもそれで呼んでやるんだ。
そしてあの時と変わらず笑うんだ。
花札もやろう。 そうしよう。

 
 
永遠にめぐりくる春よ
三つの宝をあなたは忘れずに届けてくれる
年ごとに蘇えるライラックの花と
西空に沈むあの星と
そして愛する人の想い出を

Walter Whitman
 
 
 
 

2010.11.17