第112話 第4章「パインツとクリスプス、そしてプール」の巻

「イエス! アナザー パインノブ ラガー プリーズ!」

キューを片手にカウンターに向かって勝ち誇り

そう叫ぶカノジョ

 

フラットから一番近いとこにある古びたパブ

その2階にはプールテーブル(いわゆるビリヤード)があって

常連の酔っぱらい達が黒板に順番の名前を書いて

勝ち抜けでプレーをする

 

もちろん、ワンパイントのビールを賭けて…

 

ニッポンにいる頃、

カノジョがピリヤードをするところを見たことはなかったけれど

いつの間にやらというか、

なかなかどうして、やるもんだ

 

鼻の赤いオッサンにまずは一勝

続いて、レオナルドディカプリオばりのイケメンに連勝

つまり、2杯のピールを手に入れた

 

一番奥のテーブル席でチビチビと生温いエールを飲むボクに近寄り

こういった

 

「どうだ!すごいだろ?オマエもやってみるか?」

 

「いいよ、あんまりうまくないし、それより、いつ覚えたんだよ?」

 

「ン?そりゃあんた、必然性ってやつだよ、ネセサリーていうか、せいかくにいうとネセシティーって感じ」

 

「ああ、よくわかんねいけどね…」

 

残りのパイントを一気飲みして、

またカノジョはプールテーブルに戻っていった

 

次の相手の若いくせに腹の出たアンチャンは、

「さて、子猫ちゃんをオレ様がいためつけてやろうかな?」

とでもいっているんだろう、なんとなくニュアンスでわかった

 

ちびりちびり

 

生温いエールが妙にウマイ

 

つまみはコッチでは

クリスプスと呼ばれるポテチ

ボクは、毒々しくて安っぽい

ビネガー味がすっかりお気に入りだ

2013.03.07